食品安全情報blog過去記事

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その他ニュース等

  • 日本の田畑に放射性降下物の遺産はない

Natureニュース
No fallout legacy for Japan's farms
Published online 12 July 2011
http://www.nature.com/news/2011/110712/full/475154a.html
ただし最も汚染濃度の高い土壌は速やかなクリーンアップが必要
3月の福島の核惨事で日本北部に放射性物質が噴出され、一部には何年も農業ができないのではないかと恐れる人達がいた。しかし植物や土壌の放射性物質の蓄積に関する初期調査の結果、ほとんどの地域で農業が可能であることが示唆された。
福島第一原子力発電所メルトダウン直後、政府は30キロメートル圏内の住人を避難させ農産物を制限した。これらの規制はまだ行われていて、政府は汚染地域に対する戦略を明確にしていない。東京大学の植物放射線生理学専門家Tomoko Nakanishiは「データがないために人々がパニックに陥っている」と言う。Nakanishi氏は今後10年、土壌、植物、動物、水産物、森林への影響を調べるための7つのチームを統率している。その最初の結果が日本の雑誌Radioisotopesの8月号に発表され、驚くほど楽観的展望が描かれている。
科学者らは東京の試験場で福島からの放射性同位体が雨により降り注いだ2-3週間後に植えたキャベツやジャガイモなどを調べた。5月16日に収穫された作物の放射能レベルは低く、約9ベクレル/kgでヒトの摂取安全規制値500 Bq/kgより遙かに低かった。さらにほとんどの放射能は葉に蓄積し洗い落とすことが可能で、これは植物が土壌から危険な量の放射性同位体を吸収していないことを示唆する。
より汚染濃度の高い福島近傍の畑でも同様の結果で、植物の放射能はほとんどが表面にあった。最も降下量の多かった時期に野外にあった小麦の葉が汚染濃度が高く、セシウム134と137の合計が数千から百万Bq/kgになったが、その後に出た葉にはほとんど汚染はなかった。これらの小麦の穂は300-500Bq/kgで、規制値程度だった。「今は収穫時期で、農家はどうすればよいか悩んでいる。今回の収穫は廃棄するかもしれない。でも次に植えるのはOKである。」とNakanishi氏は言う。
このような良い知らせにもかかわらず、チームのデータからは放射性同位元素が土壌、主に5センチ以内に固く残っているようであることも示している。これは放射性同位元素が地下水にはいることを防いでいるかもしれないが完全な除洗が簡単ではないことも示唆する。
Tomoya Yamauchiらによる神戸大学の別のグループは30km圏外から最大47000bq/kgを測定している。農林水産省は汚染された土の除去を含むクリーンアップ技術開発に4億9000万円の支出を5月に発表しているが、数ヶ月は結果が出ないだろう。しばらくの間、情報のギャップが危険だとNakanishi氏は言う。実際の汚染深度のデータがないまま、地元の学校などでは大型機械で土壌を−多分必要以上に−50センチ削るなどしてそれを校庭の片隅に放射性物質の山として放置している。さらに農水が植物による汚染土壌のクリーンアップを試し、いくつかのNGOがひまわりを植えるキャンペーンなどを行っている。Nakanishi氏は植物による吸収は極めて少ないためこれらは無意味だと言う東北大学の土壌や地下水のレメディエーションの専門家であるChihiro Inoueは、植物によるレメディエーションは試す価値はあるが放射性植物をどう廃棄するかという問題が残る、と指摘する。土を埋めるのはお金がかかる。校庭のクリーンアップには5000万円までかかるだろうし学校は100以上ある。セシウム半減期から考えて埋めた場所のモニタリングも必要だろう。

  • データのギャップが化学物質安全性法を脅かす

Data gaps threaten chemical safety law
Published online 12 July 2011
http://www.nature.com/news/2011/110712/full/475150a.html
ヨーロッパの企業は規制機関にしっかりした情報や動物実験代替法を提供していない
REACH発効から4年、このやっかいで費用の嵩む法律は奇妙に権限がないように見えはじめた。企業はデータギャップを埋められず、規制機関はそれに圧力をかけていない。
REACHは企業に安全性に関する情報の提出を求めているが、提出された情報の多くが既にあるデータで新しい実験をすることや代替法の提案はわずかである。

  • 遺伝子組換え食品とヒト健康:すぐに飽きる

barfblog
Genetically engineered foods and human health: I get bored easily
July 12th, 2011
http://bites.ksu.edu/news/149386/11/07/12/genetically-engineered-foods-and-human-health-i-get-bored-easily
「仮想のリスクについて話すのは飽き飽きした」
MacleanとMedical Postによる遺伝子組換え食品の短い記事について私が語ったこと。私は「これまでヘルスカナダはカナダで販売が認められているGM食品による健康リスクを見いだしていない」と言っている誰だったかに合意する。Natureが報告したように、「GM作物の研究をしていると平穏な生活は送れない。GM作物を開発すると、野外試験を破壊し嫌がらせメールを送りつける反バイテク活動家からの怒りに直面する。・・」
カンザス州立大学のDouglas Powell教授は2000年代初期にカナダバイオテクノロジー助言委員会に所属していたが、あらゆるものをレビューしGMOが健康リスクになることを示すものは何も見つけられなかった。その後Powell博士はまもなくこの問題については研究をやめた。なぜならば「私は仮想のリスクを語るのに飽き飽きしたのだ。少なくとも毎年4800万人の米国人が食中毒に苦しんでいて、やるべきことはたくさんある。」

  • 水浸し?

Waterlogged?
BMJ 2011; 343:d4280
Margaret McCartney,
http://www.bmj.com/content/343/bmj.d4280
先週フランスのエビアンで健康のために水を飲むことを薦めるHydration for Healthが年次会合を開催した。この団体はBMJを含む医学誌に広告を出したりウェブサイトで栄養ガイドラインに水の摂取量を入れることを薦めたりしている。健康的な水の量として1日に1.5-2Lを薦めている。この団体はボルビックやエビアンといったボトル入り水を販売しているダノンが後援している。「我々は水不足」と主張し、軽い水不足でも各種疾患に関与する、としている。「我々は水不足」という考えは際限なく拡がっているようだ。NHSまでもが1日に6-8杯の水を飲むことを薦めている。これはナンセンスであるだけではない。2002年にHeinz ValtinがAmerican Journal of Physiologyでその根拠について批判している。「水をたくさん飲む必要性についての科学的根拠がないだけではなく飲み過ぎには危険性もある」と結論している。2008年にはJournal of the American Society of Nephrologyのエディトリアルでも同じ結論を出している。
以下詳細な検証が続く。