食品安全情報blog過去記事

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記録として ビシン:これは食品産業の聖杯か?

Sense about science
For the record
Bisin: Is this the food industry's Holy Grail?
16 August 2011
http://www.senseaboutscience.org/for_the_record.php/71/bisin-is-this-the-food-industrys-holy-grail
Telegraphが、ビシンと呼ばれる新しい保存料が食品をより長期間新鮮に保つことができるかもしれないという記事を掲載した。記事ではこれにより大腸菌サルモネラによる食中毒を予防し、毎年家庭で廃棄されている50億ポンド相当の食品廃棄を減らすことができると説明している。記者は「賞賛すべきか−あるいは心配すべきか?」と書いている。記者は食品に「化学物質の混合物」を加えることは悪いことで、「食品に保存料を入れることに全く害がないという証明はない」と考えている。さらに記者は食品の照射を「あなたのラムカツレツに対する戦争」と記述している。
我々はこの記事について専門家に尋ねた
FSAの主任科学者Andrew Wadge博士
「カクテル」という用語は個別の物質が安全であっても組み合わせると相互作用して今まで見たこともない効果が現れる可能性があるということを意味する。しかし自然界はもともと「化学物質のカクテル」であり、我々の身体はそれに対応してきた。現在の研究からはある種の添加物は同じような影響を持っていることがわかっているため、リスク評価の際には考慮されている。今まで見たこともない影響が現れる可能性が最も高いのは安全でないもの同士の組み合わせであろうと考えられるが、そういうものは認可されない。
Loughborough大学放射化学上級講師Nick Evans博士
地球上の全てのものはいつだって天然のイオン化放射線に照射されてきた:つまりラムカツレツのもとになったヒツジは生まれたときからイオン化放射線とともにあった。実際全ての生き物はカリウムを含むためにイオン化放射線を出している。食品の照射がヒト健康に危険だという根拠はない。記者は食品に加えられる化学物質が良くわからない名称だから心配だと言う。成分リストにオルトフェニルフェノールなどという単語を見ると食べるより捨てたくなる。パラヒドロキシ安息香酸エチルナトリウム、ガンマトコフェロール、没食子酸ドデシルを含む食品はどうか?
化学者Derek Lohmannは、あなたの家に誰かが来て、あなたにブタノールとイソアミルアルコールとヘキサノールとフェニルエタノールとタンニンとベンジルアルコールとカフェインとゲラニオールとケルセチンと3-ガロイルエピカテキンと3-ガロイルエピガロカテキンと無機塩のカクテルを提供したら、それを飲みますか?恐ろしいことのように聞こえるかもしれないが、もしお茶を一杯だったらあなたは飲むだろう。お茶は栽培条件により濃度が異なる上記化学物質の複雑なカクテルである。
Telegraphの記事
http://www.telegraph.co.uk/foodanddrink/8702325/Bisin-Is-this-the-food-industrys-Holy-Grail.html
(目玉焼きに注射しているという写真が何を主張したいかを雄弁に物語っている。コメント欄には「いつまでも新鮮に保つ」化学物質を記者が自分の顔に注射する日を賭けようという意見など)