食品安全情報blog過去記事

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その他ニュース

  • お腹に優しい細菌は謎の動きをする

Natureニュース
Friendly bacteria move in mysterious ways
Published online 26 October 2011
http://www.nature.com/news/2011/111026/full/news.2011.614.html
プロバイオティクスヨーグルトは腸内細菌にほんの少ししか影響しない
多くのヨーグルトには生きた細菌が入っていて、これら微生物は健康に良いと主張するラベルが貼ってある。しかし本日発表された研究では、そのようなヨーグルトは既に腸内にいる細菌にほんの僅かしか影響せずそれらと置換することはない。
ワシントン大学セントルイス校の微生物学者Nathan McNultyは一卵性双生児7組に対してその一人にだけ1日に2食分、市販の5系統の細菌を含むヨーグルトを飲んでもらった。双子の糞の細菌DNAの配列から、ヨーグルトに含まれる微生物はもともといた腸内細菌に取って代わることはなく腸内細菌コミュニティーに影響もしないことを示した。
McNultyはさらにヒトにいる15の微生物のみを腸に持つよう育てた「ノトバイオート」マウスにもヨーグルトを与えた。双子実験同様、ヨーグルトに含まれる細菌は齧歯類の腸内細菌組成にも影響を与えなかった。しかしもともと住んでいた細菌の炭水化物を分解する遺伝子の活性は高くなった。Science Translational Medicineに発表された。
健康に良いという宣伝をして食品を売っている企業はその宣伝の根拠を立証することを求められている。近年その圧力はEFSAのレビューにより強まった。健康強調表示の試験は難しいが、ノトバイオートマウスモデルは役に立つかもしれない。

  • 信じられないほど大きくなる蛇の心臓

ScienceNOW
The Incredibly Expanding Snake Heart
27 October 2011
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2011/10/the-incredibly-expanding-snake-h.html?ref=hp
ビルマニシキヘビは体長5メートル以上にもなる大型の蛇で、何ヶ月も食べずにいたりシカ一匹を丸飲みするような大食いもする。このような突然の栄養供給変化に対応してその代謝は40倍にも加速し、消化管などの臓器も2倍になる。さらに心臓も40%大きくなる。
この劇的変化の原因を探っていたLeslie Leinwandらは、蛇の餌に含まれるミリスチン酸を含む3種の分子を特定の割合で混合したものが心臓を大きくすることを発見した。Scienceにオンライン発表された。
Fatty Acids Identified in the Burmese Python Promote Beneficial Cardiac Growth
Cecilia A. Riquelme et al.,
Science 28 October 2011: Vol. 334 no. 6055 pp. 528-531
3種の脂肪酸とはC14:0(ミリスチン酸)、 C16:0(パルミチン酸)および C16:1(パルミトレイン酸)で、マウスに普通に含まれる

  • がん抑制遺伝子Runx3についての論争沸騰

Dispute Over Tumor Suppressor Gene Runx3 Boils Over
Science 28 October 2011: Vol. 334 no. 6055 pp. 442-443
シンガポール国立大学(NUS)の有名な日本人がん研究者(Yoshiaki Ito)の10年前の知見がイスラエルの研究者(Yoram Groner)らによって再現性がないと批判されている。もしRunx3ががん抑制遺伝子であるという最初の仕事がひっくり返されると、数百の論文に影響する可能性がある。この議論は10年ほど前から始まっているがこの秋にイスラエルのグループが公式に異議申し立てを行いNUSが最近調査を開始したことから先鋭化した。
(がんと特定の遺伝子変異の関係に関する研究は山のようにあるけれど、真贋を見極めるのはとても難しい。原因なのか結果なのかがわからないことも多いし、寄与率も様々。)