食品安全情報blog過去記事

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グリフォサートの健康リスク評価についてのFAQ

Frequently Asked Questions on the Health Risk Assessment of Glyphosate
BfR FAQs, 11 November 2011
http://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_on_the_health_risk_assessment_of_glyphosate-127871.html
グリフォサート(化合物名N-(ホスホノメチル)グリシン)は世界中で最も広く使用されている除草剤の1つである。ここ数ヶ月、グリフォサートの健康リスク評価について矛盾する議論が行われている。主にNGO"Earth Open Source"が「ラウンドアップと先天性欠損症:一般の人々は情報を隠されている?」を発表したためである。これは2011年6月にドイツ当局が関与してEUが行ったグリフォサートの評価を批判するもので、1998年と2002年にグリフォサートの発生毒性を知っていながら一般人々に対して秘密にしたと主張する。この件についてのQ & Aを作成した。
・グリフォサートとは何か?
・グリフォサートは植物でどのように作用するのか?

植物のアミノ酸合成に必須の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸(EPSP)シンターゼを抑制する
・グリフォサートの毒性試験でどのようなことがわかったか?
経口投与すると約30%が消化管から吸収され7日以内に完全に排出される。動物実験では急性毒性は低い。高用量反復投与で肝臓と唾液腺に影響する。通常の試験では変異原性はなく長期試験で発がん性はない。ラットやウサギでの試験で生殖毒性はない。妊娠ラットとウサギに高用量与えると一部奇形が見られたが再現性が無く、既にメスに毒性影響が出ていたためヒトには当てはまらない。
・これらのグリフォサートについての試験から得られた健康リスク規制値は?
EUではADI 0.3 mg/kg体重、AOEL 0.2 mg/kg体重/日,
WHOはADI 1.0 mg/kg体重、米国EPAは慢性参照用量(ADIに相当)1.75 mg/kg体重/日。全ての評価でARfDの設定は必要ない。
・何故NGOはグリフォサートが生殖に重大な悪影響があると主張するのか?
たとえばドイツの製造会社がインドで1993年に行ったウサギの試験で一部の投与群に「心臓拡張」という奇形が見られた。NGOはこれを「明白な証拠」と主張するが、EUでは全ての試験の文脈で評価する。この知見は新たに行われたいくつかの質の高い試験で再現できず、用量相関性もなかった。しかも心臓拡張が見られたのはメスの50%が死ぬという非常に高い用量で見られ、これだけでもこの試験の妥当性が問題になる。このようなことから心臓の拡張がヒトでの奇形を示唆するものとは受け取られなかった。
・カエルやニワトリでの研究は規制という視点からどう解釈されるのか?
ある化学物質がカエルやニワトリの胚で何らかの毒性があったとしても、それが必ずしもヒトに当てはまるものではない。ヒトの毒性評価に妥当であることが検証されている試験法でもなく、再現性や実効性などの情報としての価値も評価されていないためリスク評価への利用価値は限られる。また培養液に直接化学物質を混ぜるという方法は実際にヒトでの摂取状況を反映していない。
・何故当局はグリフォサートが生殖に重大な悪影響があるとは評価しないのか?
規制に従った試験法による生殖毒性試験で毒性が見られなかった
・規制決定に考慮された他の研究は?
大学の研究室は農薬の毒性についての試験を通常研究目的で行う。そのような試験も評価には考慮される。しかしながら農薬のリスク評価の一部である規制上の意思決定には、そのような試験は通常GLP国際ガイドラインに従っていないため限られた利用価値しかない。さらにそのような大学の研究は農薬の最終製品を使うことが多く有効成分のみを使う規制のための試験と比較するのが困難または不可能である。

Earth Open Sourceの問題の発表
Roundup and birth defects: Is the public being kept in the dark?
http://www.earthopensource.org/index.php/reports/17-roundup-and-birth-defects-is-the-public-being-kept-in-the-dark
(この団体のマニフェストを見る限り、農業はローカルで自給自足であるべきで、農業分野での発明の特許や種子を売って利益をあげることなどあってはならない、ようだ。)