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本の紹介

「化学」で何がわかるか―あなたの化学、西暦何年レベル?

「化学」で何がわかるか―あなたの化学、西暦何年レベル?

安井先生の新しい本です。
現代の生活にとってあまりにも身近にある「化学」が、100年くらい前には全く常識ではなかったということを改めて認識させてくれる、ちょっと風変わりな教科書、といった感じの読み物です。我が家の高校生(理系クラス)に丁度くらいでした。学校の理科の先生には是非お勧めします。
化学の知識は理系にとっては基本中の基本ですが、無機化学を専門にしている人と専ら合成をやっている有機化学者、理論がメインの人、生化学分野の人など、分野によって同じ化学式を見ても違うものを思い浮かべているというのは実感としてあります。安井先生の特に強調したかったであろうものにアボガドロ数のとんでもなさというのがありますが、本当に、「大きさ」の感覚は「慣れ」が必要です。いわゆる学術論文でも、桁が違う濃度やスケールでの出来事を平気で何かの原因であるとディスカッションするのは良く見られることです。自分の身近だったら、例えば何かが当たった時に痛いかどうかは、卵程度の50gならやや痛い、砲丸のような5kgなら死んでしまうかもしれない、0.5gならひょっとすると気がつかないかも、なんていうことは実感としてわかるでしょう。ここでの桁の違いはわずか4です。アボガドロ数は23桁もあるのですから。自分の専門分野の量についての概念を、それに全く慣れていない人に実感として理解してもらうのはそう簡単ではないです。それだけ習熟しているからこそ専門なわけですが。長い間かけて身につけてきたものを簡単に他人に伝達出来たらどんなに楽でしょう!それでもこれまでの歩みを振り返ってみれば、人類はものすごい速さで知識を蓄積・更新しているのです。これからだって何がおこるか予想できません。次の世代にできるだけ多くの希望と智慧を伝えたいです。
数少ない参考文献に拙著「ほんとうの「食の安全」を考える」を挙げて頂いています。ありがとうございます。