食品安全情報blog過去記事

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オーストラリアのGM小麦についての懸念−専門家の反応

SMC
Concern over Australian GM wheat – experts respond
September 12th, 2012.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2012/09/12/concern-over-australian-gm-wheat-experts-respond/
オーストラリアの安全な食品財団(Safe Food Foundation in Australia)と協力している2人の科学者が、CSIROの開発した遺伝子組換え小麦はヒトに意図しない影響を与える可能性があると主張している。しかしながら他の専門家は彼らの評価に同意しない。
ニュージーランドカンタベリー大学Jack Heinemann教授とフリンダーズ大学Judy Carman准教授がメルボルンで昨日行われた記者会見でCSIROのGM小麦の安全性について彼らの意見を発表した。
記者会見のビデオと彼らの意見の全文は以下からみることができる。
(Safe Food Foundationのサイト)
http://safefoodfoundation.org/wordpress/?page_id=915
彼らの懸念の焦点は消化しやすいでんぷんを作る酵素の産生を抑制するためにGM小麦が作る低分子抑制性RNA(siRNA)である。この酵素の産生を抑制すると小麦のでんぷんの消化しやすさが低下し、耐性でんぷんの多い食事は腸の健康と大腸がんのリスク抑制に関連することがわかっているので望ましい性質である。
しかしながらSafe Food Foundationの委託した評価を行った科学者はこの植物が作るsiRNAはエネルギーの貯蔵に影響して肝障害をもたらすとしている。
オーストラリアSMCが以下の専門家の意見を集めた。
メルボルン大学土地環境学部長Rick Roush教授
CSIROの修飾でんぷん小麦による健康リスクについてのこの主張はぶっ飛んだ空想であるだけではなく、独立した科学評価を意図的に回避した3人の反GM活動家によるものである。これは反GMがよく使う記者会見による自称「科学」で、インターネットで出回るもう一つの科学っぽい恐ろしい話の一つになるだろう。彼らの主張とは違って、RNA干渉技術は既に国際的にリスク評価されている。
彼らの主張を詳細にみれば、CSIROの小麦をヒトボランティアとして食べてみることに何の恐れもない。
アデレード大学植物機能ゲノミクスセンターPeter Langridge教授
この問題の本質は、思想的にGM作物に反対していて作為的に多くの科学文献やデータを無視している2人の科学者がいる、ということである。今回彼らは科学的に間違った論文を書いて、通常のピアレビュープロセスで評価されるのを避けて、GMについての知識のない人物にこれを支持する意見を書かせてまるで適切な科学のように装って信用できるような見せかけを作ろうとした。GM作物や食品の安全性についての本当の情報を得たいと思うなら400以上の研究室による15年間の研究をまとめたEUの詳細報告書を読むべきだろう。
A decade of EU-funded GMO research (2001-2010)
http://bookshop.europa.eu/en/a-decade-of-eu-funded-gmo-research-2001-2010--pbKINA24473/
マードック大学Edstar Genetics Pty Ltd最高責任者で小麦の遺伝学を46年行ってきたIan Edwards博士
Jack Heinemann教授による最近の主張はその時期とやり方に疑問がある。遺伝子技術規制局(OGTR)がCSIROの野外試験開始前に「リスク評価とリスク管理計画」を公表している。もし彼が意味のある懸念を持っているのならいつでもOGTRに言うことができたし、それに意味があるならOGTRは対応したであろう。よく知られた反GM活動家を集めてメディア発表することを選んだことで科学的客観性には疑問がある。彼はCSIROが行った遺伝子配列決定を知らなかったが推測したことを認めた。
食用作物や食品の成分が変更される場合にはFSANZの管轄になり、CSIROは動物やヒトでの試験を求められている。報告書で表明されているような稚拙な警鐘主義は科学のためでもコミュニティのためでもなく、ヒト健康を心配しているように見せていても単に思想的にGMに反対している人たちのためである。
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CSIROはこの主張に対して以下の声明を発表している
CSIROは国内でも国際的にも小麦の品質と生産性改善のための研究の最前線にいる。我々はこの目的のために最も効果的な方法として伝統的交配とGMの両方を使う。GMについてのCSIROの仕事はすべてOGTRの管轄する法に基づいて厳密に管理されている。
CSIROは何年もAristaと共同で高アミロース小麦の開発を行ってきた。高アミロース小麦は糖尿病の人々や腸の健康に良い影響があるだろう。この研究プロジェクトではGMGMでない高アミロース小麦を平行して開発している。
CSIROのGM小麦研究が健康に有害である可能性があるというメディア報道がなされた。これらの主張はピアレビューのある雑誌に発表されたものではない。それでもその主張はCSIROやその他の規制機関によりこの分野のすべての他の妥当な研究との文脈で検討されるだろう。
CSIROはGMアミロース小麦のキャンベラのGinninderra実験場での栽培をOTGRから認可されているが今年は栽培されていない。動物やヒトでの実験はそれぞれの倫理委員会の承認を得てから行われる。

(もともと素人を騙すのが目的だと思われる。少しでもまともな知識があれば彼らの主張がおかしいことに気がつくというレベルのお粗末さなので。メディアはそういうのに喜んでひっかかるので)