食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

  • 長寿家系の25-ヒドロキシビタミンD濃度:Leiden長寿研究

Levels of 25-hydroxyvitamin D in familial longevity: the Leiden Longevity Study
Raymond Noordam et al.,
CMAJ November 5, 2012 cmaj.120233
http://www.cmaj.ca/content/early/2012/11/05/cmaj.120233
超高齢のきょうだいのいる超高齢者の子孫は、加齢による疾患が少なく長生きする可能性が高いが、ビタミンDレベルが対照群より有意に低かった。
(他の研究とは逆の結果)

  • 代替療法は一部の心疾患患者で興味深い結果を出したが多くの疑問が残る

AHA
Alternative therapy produces intriguing results in some heart patients but many questions remain
November 04, 2012
http://newsroom.heart.org/pr/aha/alternative-therapy-produces-intriguing-240492.aspx
心臓発作経験のある患者にEDTA二ナトリウムとビタミンCを含むキレート療法を毎週行ったところプラセボより合併症が少なかった。研究者らは臨床応用の前にこの結果が再現されるかどうかの確認と理解が必要であると注意を呼びかけている。
(データが脱落者が多かったり奇妙なところが多い上で微妙な有意差がついたため、民間のインチキキレート療法の宣伝に使われることを警戒している)

  • 中国の調査は沿岸部の広範な汚染を明らかにする

Natureニュース
Chinese survey reveals widespread coastal pollution
06 November 2012
http://www.nature.com/news/chinese-survey-reveals-widespread-coastal-pollution-1.11743
中国の8年間の国による海洋調査は沿岸部の環境が汚染されていることを示す。この調査は2004年にChinese State Oceanic Administration (SOA)が始めたものでこれまでで最も包括的な海洋調査になる。結果は発表されていないが新華社によれば沿岸部の都市の約90%が間欠的水不足に苦しみ、1950年代に比べてマングローブの沼地は73%、珊瑚礁は80%減少した。過去10年で汚染物質の河口排出は増加し3/4が規制値を超過している。48の河口は重金属、DDT、石油炭化水素で汚染されている。これらに農業肥料や動物の糞尿などが加わり富栄養化し有害な藻類の大量発生につながる。過去20年以上にわたり中国の沿岸では、主に東シナ海で年に83の赤潮が発生している。緑色が多い「緑潮」は黄海で主におこり、経済に打撃を与えている。2009年には「褐潮」に襲われ貝類が死んだ。

  • Scienceより

・有罪判決はイタリアの市民保護を大混乱に陥れた
Convictions Leave Italy's Civil Protection in Chaos
Science 2 November 2012: Vol. 338 no. 6107 pp. 589-590
イタリア政府は先週の6人の科学者と1人の公務員の有罪判決により自然災害ハザードについての助言をする専門家がいなくなった。有罪判決によりNational Commission for the Forecast and Prevention of Major Risks (CGR)の委員長や何人かのメンバーが辞職し残った人たちも辞めると脅かされている。今週Scienceが取材に行ったとき、委員会は活動しておらず将来は不明である。

インドネシアは最も若い生徒の科学を科目から除外する
Indonesia to Drop Science for Youngest Students
Science 2 November 2012: Vol. 338 no. 6107 p. 592
インドネシアの子どもたちは世界のなかでも科学の成績が悪いがそれを教育を強化するための材料とするのではなくインドネシア政府は科目から外したい。低学年のカリキュラムから科学と英語を外す案が9月に発表された。この背景にイスラム原理主義者の動きがあると見る人たちもいる。

・がん遺伝子のデータは良くある研究法に疑問を投げかける
Cancer Gene Data Casts Doubt on Popular Research Method
Science 2 November 2012: Vol. 338 no. 6107 p. 593
PubMedにはMycについての論文が25000以上あるがそのほとんどは見直しが必要であろう、とNCIの病理学者David Levensらはいう。Mycだけでなく、増殖細胞を使った遺伝子発現研究には再調査が必要だとRichard Youngが先週Cellに発表した論文で主張している。Mycはこれまで考えられてきたような特定の遺伝子の発現を活性化するのではなく、細胞で発現しているすべての遺伝子のRNA量を増やすユニバーサルスイッチであるという。彼らの主張に同意しない科学者もいる。遺伝子発現研究の80%は間違っていると批判し続けているSimon MelovはLevensらの批判は当然だという

  • ビスフェノールA (BPA)は有害ではないことがさらにわかった、しかし何故多くのレポーターやNGOはまたしても報道しないのか?

Forbes
Bisphenol A (BPA) Found Not Harmful, Yet Again -- So Why Did So Many Reporters and NGOs Botch Coverage, Yet Again?
10/31/2012
Jon Entine
http://www.forbes.com/sites/jonentine/2012/10/31/bisphenol-a-bpa-found-not-harmful-yet-again-so-why-did-so-many-reporters-and-ngos-botch-coverage-yet-again/
科学報道における最も宜しくない傾向の一つが、The New York TimesのAndrew Revkinが言うところの「単一研究症候群」である。レポーターやNGOは彼らの予見を支持する研究のみを大げさに報道する、それがどんなに希薄で疑わしいものであったとしても。
この傾向がはっきり現れた事例がカリフォルニア大学のMichael BakerがPLOS ONEにビスフェノールAについての研究を発表したあとのことである。BPAは特定の研究者とNGO活動家とジャーナリストの標的になっていてこれは特に妊婦や胎児や子どもにたくさんの病気を誘発すると信じられている。BPAについての新しい研究が発表されると、それについての反応がみられる。カリフォルニア大学のプレスリリースは「BPAの真の脅威は代謝された後であるかもしれない」というタイトルで、これに反応してたくさんの根拠のない恐怖を煽る話がウェブに溢れた。彼らはビスフェノールAが有害であるという根拠を待ち望んでいた。しかし皮肉なことにこの研究はよく見るとその様な見解を支持せず、むしろさらにBPAやその他のいわゆる「内分泌撹乱物質」が重大な健康上の脅威とはなりそうもないことを確認するものだった。
http://health.ucsd.edu/news/releases/Pages/2012-10-04-metabolized-BPA.aspxを読むとBPAは分子構造の三次元解析からエストロゲン受容体を活性化する能力が低いという話であることがわかる)
同じ週にヘルスカナダと化学物質安全性局はBPAが重大な健康上の脅威にはならないという先の見解を維持すると発表した。(http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20121002#p7
私Jon EntineがBakerに連絡をとって聞いたところ、彼はBPAの研究の専門家ではなくこれまでの重要な研究についても知らなかった。しかし大学のライターが世間に人気のあるBPAは危険だという話に沿ってプレスリリースを書いた、と話した。Bakerの報告した代謝物が実際にできているかどうかは不明で今のところ単なる推定である。
Richard SharpeはToxicological Sciences にビスフェノールAエストロゲン作用についての心配を止めるときではないかと書いている。これまで何度も繰り返し研究が行われて既に1億ドルものお金を使い、何も得られていない。
BPAの主導者Frederick vom SaalはGreen Chemistryで、米国はレギュラトリーサイエンスに基づくこれまでの古典的リスク分析を破棄して、予防原則により実証的エビデンスではなくハザードと恐怖に基づく規制を行うべきだと主張している。