食品安全情報blog過去記事

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食品中の水銀−EFSAは公衆衛生上の助言を更新

Mercury in food – EFSA updates advice on risks for public health
20 December 2012
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/121220.htm
EFSAは食品中に主に検出される形態の水銀:メチル水銀と無機水銀による有害健康影響から消費者を守るために、耐容週間摂取量TWI、あるいは「安全量」を設定した。メチル水銀は魚やその他のシーフードに主に存在し、脳を含む発達中の神経系に毒性が高い。食品中のメチル水銀暴露量の精勤はTWIを超過しないものの、魚をたくさん高頻度で食べるとその量に到達する可能性が高くなる。この中に妊娠女性が含まれると脳の発育にとって重要な時期である胎児が暴露されることになる。無機水銀の毒性はメチル水銀より低く、魚やその他のシーフード、調理済み食品等に含まれる。食品からの無機水銀の暴露量は、他の暴露源がなければほとんどのヒトはTWIを超えることはない。
欧州委員会からの要請により、EFSAのCONTAMパネルは水銀の新しい科学的知見を検討して2003年と2010年にJECFAが設定した暫定TWIを評価した。今回CONTAMパネルは無機水銀についてはJECFAと同じTWI 4 microg/kg体重を設定した。メチル水銀については、新しい研究が魚に含まれる長鎖オメガ3脂肪酸に関連する良い影響が魚のメチル水銀の有害影響の過小評価につながった可能性があることを示しているため、JECFAの1.6 microg/kg体重より低い1.3 microg/kg体重に設定した。
食品の摂取量と食品中水銀濃度に関するより正確なデータが入手できたため、CONTAMパネルは食事からのメチル水銀の暴露量をより正確に評価することができた。魚、特にまぐろ、カジキ、タラ、ホワイティング(タラ科の魚)、カワカマスが全ての年齢のヨーロッパ人のメチル水銀暴露に最も重要である。子どもを産む年齢の女性への暴露について特に検討したが他の一般成人と同じであった。魚をたくさん食べるヒトの暴露量は一般的に全体の2倍ほど高い。
この意見は無機水銀とメチル水銀の食事暴露によるリスクについてのみ扱ったもので、魚やシーフードなどの特定食品に関連する栄養学的メリットについては評価していない。しかしながらCONTAMパネルはリスク管理者がメチル水銀暴露を減らすための対策を検討する場合には、魚を食べることによるメリットについても考慮すべきであると付け加える。

  • 食品中の水銀とメチル水銀による公衆衛生上のリスクについての科学的意見

Scientific Opinion on the risk for public health related to the presence of mercury and methylmercury in food
EFSA Journal 2012;10(12):2985 [241 pp.].
20 December 2012
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2985.htm
セイシェル子ども発達研究栄養コホートによる新しい疫学的知見が、魚に含まれる長鎖オメガ3脂肪酸メチル水銀による有害影響と拮抗する可能性を示した。ファロー諸島の子どもコホート研究でみられた有害影響が魚の有益な栄養素による交絡の可能性があるという情報とあわせて、メチル水銀のTWIを水銀として1.3 microg/kg体重に設定した。
一部の乳幼児を除く全ての年齢層で食事からの平均暴露量はTWIを超えないが、95パーセンタイルはほぼTWIに近いあるいは超えている。妊娠女性を含む可能性のある魚を多く食べる集団ではTWIの最大6倍になる。血液や毛髪のバイオモニタリングデータからは、ヨーロッパに置いては一般的にTWI以下であるが、高濃度の事例も観察される。TWIを超えるメチル水銀暴露は懸念される。メチル水銀暴露を減らす対策が検討される場合には魚を食べることによるメリットも考慮すべきである。無機水銀の食事暴露についてはヨーロッパはTWIを超過しないが、歯科用アマルガムからの水銀元素の吸入暴露は無機水銀暴露を増やすかもしれない。
メチル水銀の心血管系疾患への影響(心拍変動性など)については結論が出せず、神経発達への影響が最良の根拠であると結論している。
数値の根拠はセイシェル栄養コホートの見かけ上のNOELである母親の毛髪中水銀濃度11 mg/kg とファローコホートのBMDL05である母親の毛髪中水銀濃度12 mg/kgの平均11.5 mg/kgを出発点に、母親の血中濃度への換算(46 μg/L)、食事からの摂取量への換算(1.2 µg/kg b.w.)、不確実係数6.4(毛髪血液比の不確実係数2とトキシコキネティクスの個人差についての標準安全係数3.2)を用いて1.3 microg/kg体重/週とした。

(ちなみに食品安全委員会は2 microg/kg体重/週
何が違うかというとトキシコキネティクスの個人差の安全係数の3.2が2だってことくらい。ただし暴露評価の方はかなり違っていてどういうわけか食品安全委員会の評価書では日本人の毛髪中水銀濃度とNOEL/BMDL05を比べている。それならTWIを計算する必要ないのでは?という・・・。食事データが使えない上、安全係数入れると厳しいのだけれど。)