食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

The Promise and Perils of Oxytocin
Greg Miller
Science 18 January 2013: Vol. 339 no. 6117 pp. 267-269
オキシトシン向精神薬の次世代革命か、あるいは一部の患者を悪化させる過剰宣伝されたホルモンか?
オキシトシンほど騒動を巻き起こす人体由来物質はない。メディア報道はおおげさではあるがそれは多くの科学者の興奮の反映である。たくさんの臨床研究が行われるようになったが、発達中の動物での長期影響研究がないまま子どもたちで臨床研究していることに懸念を表明する科学者もいる。一部の研究者はオキシトシンは親しい人とのつながりを強化するが知らない人には友好的でなくする諸刃の剣であるとしている。

  • レビュー:発がん促進慢性炎症を中和する:特効薬か?

Neutralizing Tumor-Promoting Chronic Inflammation: A Magic Bullet?
Lisa M. Coussens et al.,
Science 18 January 2013: Vol. 339 no. 6117 pp. 286-291
腫瘍に伴う炎症反応抑制によるがんのコントロールの可能性についてのレビュー
(何でもかんでも免疫を活性化すればいい、というわけではない・・のだが免疫力アップなどという言葉を使って商売している人たちはこういうものは読まないのだろう)

  • よく使われている農薬がミツバチを脅かす、とEUの監視機関が警告

ScienceInsider
Common Pesticides Threaten Bees, E.U. Watchdog Warns
by Tania Rabesandratana on 17 January 2013
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2013/01/common-pesticides-threaten-bees-.html?ref=hp
EFSAがヨーロッパの農家が通常使っている3つの農薬がミツバチに「急性のリスク」となるとした。ネオニコチノイドは1990年代初期からヨーロッパの農家が使ってきてスイスのSyngentaとドイツのBayer CropScienceが販売してきた。EFSAはこれらはトウモロコシや菜種やひまわりなどのミツバチにとって魅力的な作物に使用すべきではないと言う。農薬とコロニー崩壊を関連づけてはいないが、この助言はEUでのネオニコチノイドの禁止につながる可能性がある。
Syngentaは既にEFSAの研究を拙速であると批判している。Bayerはより柔らかな声明でミツバチの健康やコロニー崩壊には複数の要因が関与すると指摘している。
EU政府官吏は1月31日にネオニコチノイドについて議論するとしている。

Natureニュース
Faecal transplants succeed in clinical trial
16 January 2013
http://www.nature.com/news/faecal-transplants-succeed-in-clinical-trial-1.12227
再発する腸感染症の治療に非正統的技術が抗生物質よりはるかに効果的
Clostridium difficileの繰り返し感染による激しい下痢の治療法として、健康な他人の便を患者に注入する便移植が通常の抗生物質治療よりはるかに有効だった。New England Journal of Medicineに発表された。この魅力的ではない方法で治療した数百人の患者の90%以上が回復した。15人の健康なドナーのプール便を鼻から入れたチューブで小腸に入れる、という治療法。
(抵抗あるよね。すごいなぁ。プロバイオティクスもここまでやれば効くんだろう)
NEJMのエディトリアル
Fecal Microbiota Transplantation — An Old Therapy Comes of Age
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1214816
1958年にデンバーの医師が命に関わる腸炎の患者に浣腸で便を投与したという文献が紹介されている。50年経って再び。

  • オンラインセミナー:リスクを理解する:ジャーナリストのための入門講座

National Press Foundation
(ジャーナリストの能力向上のための財団)
Understanding Risk: A Primer for Journalists
January 17, 24, and 31
http://nationalpress.org/programs-and-resources/program/understanding-risk-for-journalists/
シリーズで3回
恐ろしい統計:リスクを理解する
リスクの概念化
リスクコミュニケーション

  • 高果糖コーンシロップ:神話と事実を分離する

ACSH
High-Fructose Corn Syrup: Separating Myths from Facts
January 8, 2013
http://www.acsh.org/publications/high-fructose-corn-syrup-separating-myths-from-facts/
1970年代以降米国では高果糖コーンシロップ(HFCS)の供給が劇的に増加した。主にソフトドリンクやその他の食品のショ糖(砂糖)の代用品として。同時に肥満が増加したため、HFCSは肥満の原因と批判されてきた。ショ糖とHFCSは基本的には同じ成分からなり、体重などへの影響が異なるという可能性は低い。科学的根拠はHFCSがアメリカ人の肥満の唯一の原因だという説を支持しない。

  • Edmontonの新生児が汚染された母乳を与えられたと裁判で訴える

CBCニュース
Edmonton newborn given tainted breast milk, lawsuit claims
Jan 17, 2013
http://www.cbc.ca/news/canada/edmonton/story/2013/01/17/edmonton-lawsuit-tainted-breast-milk.html
Edmontonのカップルが、生まれたばかりの息子に他人の母乳を与えられた、その母乳の主がC型肝炎陽性だった、息子がC型肝炎陰性であることを確認するまで信じられない不安でトラウマになった、として病院に大して320万ドルの支払いを求めて裁判をおこした、という話。
保存した母乳を間違えて他の子に与えてしまう事例は他にもあった。
(かつて助産師さんが母乳を舐めて美味しいとか不味いとかよく言っていたような・・。しかも母親の食べ物が悪いと不味くなるとか言って、乳製品や甘いものを禁止するのだ。)

  • がんによる死亡率は1991年のピークから20%下がった

Cancer mortality down 20 percent from 1991 peak
17-Jan-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-01/acs-cmd011413.php
米国がん学会年次報告書
1991年の米国における癌死亡率は10万人当たり215.1だったが2009年には173.1になった。減少の主な原因は喫煙率の低下による肺がんの減少と大腸・前立腺乳がんの早期発見と治療成績の向上である。
Cancer statistics, 2013
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.3322/caac.21166/abstract