食品安全情報blog過去記事

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BPA、脳、行動−専門家の反応

BPA, brain and behaviour – experts respond
May 28th, 2013.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2013/05/28/bpa-brain-and-behaviour-experts-respond/
今週PNASに発表された研究で、生まれる前にBPAに暴露されたマウスの脳の遺伝子の発現に変化があり不安関連行動が増えた。
この研究はヒトが暴露されている量に相当する量のBPAをマウスに与えたと主張している。BPAは多くのプラスチックに使用されていてこれらの容器から食品に入る。
カナダ、オーストラリア、英国SMCが以下のコメントを集めた。
McMaster大学産婦人科Warren Foster
この論文自体は最先端の方法を用いて格の高いPNASという雑誌に発表されたもので、BPAについては議論が多いことからこの論文が注目されるのは当然だろう。
この論文には多数の限界があり、その一つが「低用量」という単語である。多くの研究者がこの用語をあまり考えずに自由に使っている。この論文では、FDAの安全基準値が50 microg/kg/dayだから20-200 microg/kg/dayを調べたことを「低用量」と言っている。ヒトが食品から摂取する場合には1日何度かにわたって摂るが彼らは一度に全てを与えている。さらに統計手法にコメントがある。同腹効果を検討していない。古典的には同じ出産から1匹ずつとって異なる親の子どもを比較する。さらにヒトで大量に缶詰を食べた場合の研究で血中に遊離のBPAが検出されていない。従ってマウスの試験でヒトに相当するという主張には問題がある。最後に、彼らはBPA以外にもフタル酸など多くの化合物の影響を調べていて別々の論文として、行動異常と関連があると発表している。従って現時点では統計学的関連以上のものかどうか判断できない。
アデレード大学健康科学部上級講師Ian Musgrave博士
マウスの行動に変動が大きく、ヒトの暴露量より高いBPAで行動に意味のある影響はないことを示す
Leicester大学毒性ユニットAndrew Smith教授
遺伝子のメチル化と行動の関連などこの分野の基礎研究の必要性を強調する
Edinburgh大学Richard Sharpe教授
この研究の最小用量でもヒトの暴露量の10-20倍で、測定された指標は動物による変動が極めて大きく動物の数も少ないことから偽陽性である可能性が高い
Exeter大学環境毒性学Tamara Galloway教授
一相性ではない用量反応曲線からリスク評価には複数の低用量暴露を考慮すべきであるという見解を支持する。