食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文等

  • マイコトキシン許容量を超えるリンゴジュースやシリアル

Detection of apple juices and cereals which exceed permitted levels of mycotoxins
7-Jun-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-06/f-sf-doa060713.php
スペインのグラナダ大学の研究者らが市販のリンゴジュースからパツリンを検出し、50%以上が法による基準値を超えていた。他にも基準値を超えるマイコトキシンをコメ、ビール、シリアルから検出している。論文3報。

  • 植物油は良い、ミズーリ大学の研究者は言う

Vegetable oil IS good for you, MU researcher says
7-Jun-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-06/uom-voi060713.php
植物に含まれる必須脂肪酸はヒトで炎症を促進しない
典型的なアメリカ人は毎日テーブルスプーン約3杯の植物油を食べる。大豆やトウモロコシやキャノーラなどの植物油はカロリー源となり、必須脂肪酸であるリノール酸を多く含む。1970年代から、研究者はリノール酸が血中コレステロール濃度を下げるのに役立つことを知っていたが、一部の専門家はアメリカ人が摂りすぎていると主張していた。今回「健康なヒトでの炎症マーカーへの食事中リノール酸の影響:無作為対照試験の系統的レビュー」という研究で、植物油の摂取と炎症マーカーには関連が見られなかった。初期の動物実験ではリノール酸の多い食事は炎症を促進することが示されていたが、ヒトは異なる。
栄養と健康の分野では、ヒトは動物ではない。Journal of the Academy of Nutrition and Dieteticsに発表。
(日本では脂質栄養学会と動脈硬化学会のコレステロールに関する意見の対立でも活躍した奥山先生が、「本当は危ない植物油」という本を出すに至ってもうあちらの世界に行ってしまわれたことを残念に思う。動物実験EBMの「エビデンス」とは呼べない。)

Natureニュース
Skeletons show rickets struck the Medici family
Traci Watson
07 June 2013
http://www.nature.com/news/skeletons-show-rickets-struck-the-medici-family-1.13156
屋内での生活と栄養不良がフィレンツェの支配者の病気につながった
16世紀に生まれたメディチ家の子ども達9人の骸骨を調べた研究でから、彼らがビタミンD不足によるくる病であったことが示された。International Journal of Osteoarchaeologyに発表された。原因として、ルネッサンス期の習慣であった2才になるまで離乳しないこと、赤ちゃんを布でぐるぐる巻きにして動けないようにすることで日光に当たらないことなどを挙げている。

  • 醤油の過剰摂取で男性が昏睡

Fox news
Soy sauce overdose sends man into coma
June 07, 2013
http://www.foxnews.com/health/2013/06/07/soy-sauce-overdose-sends-man-into-coma/
ヴァージニア州の19才の男性が友人にそそのかされて1クォート(1Lくらい、塩で0.16kg)の醤油を飲んで高ナトリウム血症で昏睡状態になり死ぬところだった、という症例報告
Journal of Emergency Medicine
Survival of Acute Hypernatremia Due to Massive Soy Sauce Ingestion
David J. Carlberg, et al.,
http://www.jem-journal.com/article/S0736-4679(13)00202-3/abstract

  • The Lancet volume 381, Issue 9882は中国特集

食品については2044-2053
Food supply and food safety issues in China
Hon-Ming Lam et al.,
・肉の需要が増加し供給問題に拍車をかけているが、地方ではまだ栄養不足が報告されている
・中国においては供給の問題から安全の問題に焦点が移りつつあり、人々の関心も高まっている
・安全上最も大きな問題なのは微生物、有毒動植物、汚染物質であるが、添加物などの違法使用問題も増加している
・中国政府は監視や対策、法の強化を協力に推進しているが、履行には弱点がある
メディアで話題になった違法化学物質使用事件は、ラクトパミン、地溝油、メラミン、Sudan IVなど

  • Lancetの書評:石炭を燃やすことの健康ハザードをあぶり出す

Smoked out: the health hazards of burning coal
Alan Lockwoodの「密かな流行:石炭と隠された健康への脅威The Silent Epidemic: Coal and Hidden Threat to Health 」のKirk R Smithによる書評。
バイオマスを燃やすことが大気汚染や気候変動に大きな影響を与え、燃料の中でも石炭は最悪であることは明らかである。ただしこの本では最も良くない石炭の使用法−つまり家の中で調理や暖房のために石炭を燃やすことの問題について取り上げていないのが残念である。

  • 妊娠に関する助言:役立つように努めよう

SMCblog
pregnancy advice: trying to be helpful
June 6, 2013
http://www.sciencemediacentre.org/trying-to-be-helpful/
SMCの上級広報担当者Tom Sheldonによる投稿
社会として我々は専門家に情報やガイダンスを求める。法的助言が必要?法律家に聞く。壁が老朽化している?建築業者に聞く。同様に安全かどうかは科学者や健康の専門家に聞く。妊娠したら子どもの分まで心配になるので助言は大事である。
食生活や葉酸についての助言は明確で、妊婦にそう伝えられている。しかし確実とは言えないこともある。食品包装容器のビスフェノールAや保湿剤のビタミンAは健康に悪いのか?問題は科学者はしばしば答えを持っていない、ということである。携帯電話はがんの原因か?バランスをとると多分違うが、確実だとは言えない。有害であるという強い根拠がない場合に良い助言というのはどうすればいいのかは科学者にとって板挟みである。SMCでは間違って提示されたり大げさだったりする科学を取り扱っており、しばしばジャーナリストが事実と虚構を識別するのに役立つ科学者を紹介する。しかしこの話は少し奇妙で、優秀で責任ある科学者であるRCOGが、弱い根拠の報告書を発表した。あまりにも根拠としては弱いので意味のある助言にはならないという批判がある。
中略
人生の全てのことに予防原則を適用すれば生活は止まってしまう。情報を与えられた上での選択をするには科学的根拠が必要である。科学者にはリスクが大きい、小さい、あるいは存在しない、ということを評価して欲しい
この件に関するメディア報道は全体としては大変良かった。
(実行するのは不可能だと思った人が多かったのか意外と大騒ぎにはならなかった模様。)