食品安全情報blog過去記事

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がんの過剰診断と過剰治療 改善のチャンス

JAMA
Overdiagnosis and Overtreatment in Cancer
An Opportunity for Improvement
July 29, 2013
Laura J. Esserman et al.,
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1722196
過去30年以上にわたって、啓発とスクリーニングによりがんの早期発見が強調されてきた。これらの努力の目的は進行してからみつかるがんの率を減らし、がんによる死亡を減らすことであるが、長年の研究でわかってきたことはその目標が達成されていないことである。全国データからはがんの早期診断は増えているが進行がんは減っていない。わかってきたのはがんと呼ばれる病理学的状態の複雑さである。「がん」という言葉は容赦のない死に至る病というイメージを呼び起こすが、がんは多様でありいろいろな経過をたどり、全てが致死的ではなく、生きている間は悪さをしないものもある。この複雑さが検診を複雑にするが、死亡に関連するがんを検出することを目的にがん検診を見直す機会である。
検診導入によるがんの頻度と死亡率の変化から、3つのパターンがわかる。乳がん前立腺がん検診は臨床的意味のないがんをたくさん検出している。ハイリスクスクリーニングが採用されたら肺がんも同様のパターンになるであろう。バレット食道と乳管がんは、前がん病変の検出と除去が浸潤性のがん頻度を減らさない例である。一方大腸や子宮頸がんはスクリーニングと前がん病変の除去が進行がんを減らす例である。甲状腺がん悪性黒色腫のスクリーニングは、無害な病気の検出が増える例である。
がん検診の最適頻度はがんの増殖速度に依存する。増殖の早いがんの場合検診は効果がない。増殖は遅いが進行性で潜伏期が長く前がん病変がある場合には少ない頻度でのスクリーニングが望ましい(例えば大腸内視鏡検査は10年間隔)。無痛性腫瘍の場合は検出することはむしろ有害である可能性がある。
2012年3月にNCIは「過剰診断」の問題を評価するための会合をもった。過剰診断は一般的に過剰治療を導く。このことからがん検診と予防についての現在のアプローチを改善するための戦略を開発するワーキンググループを設立した。理想的な検診は、早期に発見すれば治療できる、害を及ぼす疾患をみつけることに集中すべきである。
NCIは以下のように助言している
「医師や患者や一般の人々は、がん検診では過剰診断と過剰治療がよくあることを認識しなければならない。乳がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がんでは過剰診断がよく見られる。
がんの用語を変えるべきである。がんという単語は治療しなければ致死的である病変についてのみ用いられるべきである。
以下略
(「発がん物質」についてもついでに見直して欲しいな。何でも過剰に警告すればいいってものではない。)