食品安全情報blog過去記事

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食品包装への懸念−専門家の反応

SMC
Food packaging concerns raised – experts respond
February 20th, 2014.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2014/02/20/food-packaging-concerns-raised-experts-respond/
2人の環境科学者が食品の包装や保管、加工に使用されている合成化合物が長期的にヒトの健康に有害であると警告している。理由はこれらが不活性ではなく食品に移行するからだという。
これについて英国SMCが専門家のコメントを集めた
ロンドン大学Tony Dayan毒性学名誉教授
この解説はほんの少しの事実と大量の推測を混ぜたものでいくつかの情報は不正確である。
食品の包装に使われる物質は著者らの主張するよりずっと広範囲に規制されていて、WHOやFAOやその他機関から公開されている。さらに食品の包装材が何故必要なのかを完全に無視している。包装されていない食品がダメになった場合の危険性はよく知られている。
MRC毒性ユニットAndy Smith教授
食品包装材由来の食品汚染は新しい問題ではなく既に研究されている。検出される化合物は微量で消費者への意味のあるリスクとはならない。食品の腐敗を防ぎ流通させるための包装によるメリットは明確である。
QMUL病理名誉教授Colin Berry卿
これはいつものハザード同定の問題である。ある化合物への極僅かな暴露による影響があるかもしれないが何一つ観察されていない。著者らが提示した物質は高用量で直接暴露されれば影響があるかもしれないあるいは既に禁止されているものでリスクは管理されている。包装材から溶出される量で健康に有害影響がある可能性は限りなく低い。この意見では包装のメリットは全く考慮されていない。
Southampton大学MRCライフコース疫学ユニット職業環境医学David Coggon教授
食品と接触する物質から溶出する化合物が健康にリスクとなる可能性については既に十分認識されていてEFSAには専門家委員会もあり評価を行っている。Munckeらの主張には誤解を招くものがある。ホルムアルデヒドはヒト発がん物質と分類されているが発がんリスクは非常に小さく人体に天然に存在する。高濃度暴露の場合に心配すべきものである。内分泌撹乱によるリスクを考慮するのは重要であるが食事由来の最大の内分泌撹乱物質は大豆である。複数化合物への複合暴露の懸念はここ15年研究されているがヒト健康への脅威となるということがまだみつかっていない。私は疫学者としてこの分野に疫学が貢献できるかどうか疑っている。暴露量が評価できない場合の個人のリスクへのごく僅かな影響を信頼性高く識別するのは困難である。
環境呼吸医学Jon Ayres教授
この意見は包装に使われているどんな影響があるかわからないものについて警告している。しかし鉛のように既に健康に悪影響があることがわかっている物質のコントロールに努力した方が役にたつのではないか?
オーストラリアSMCから
Adelaide大学薬学部Ian Musgrave博士
この論説の「発がん物質であるホルムアルデヒドがPETボトルに微量存在し、広く使われていることから人々への暴露量は相当なものになる可能性がある」という主張を深刻に受け止めるのは難しい。ホルムアルデヒドは天然に多くの食品に存在し、例えばリンゴ100gを食べるのと同じくらいのホルムアルデヒドを摂るには最低でもPETボトル入りミネラルウォーター20Lを飲まなければならない。明らかに包装容器由来のホルムアルデヒドについて過剰に強調されている。彼らの主張通りなら生鮮果物や野菜に「発がん性」と表示しなければならない。食品に溶出する物質は分析されていて検出不可能か極微量であり意味のあるリスクとはならない。
分析化学講師Oliver Jones博士
取り扱う話題は面白いがタイトルは不必要に警鐘を鳴らすものである。特に主張の根拠となるデータがない。彼らの無視している要因が多数有り、FSANZのものを含むこれまでの根拠は圧倒的に現在人々が暴露されているこれらの化合物による安全上の問題はないというものである。科学的研究はいつでも歓迎されるべきだが私は食品に含まれる大量の砂糖や塩や脂肪の方が容器から溶出する化合物より問題だと思っている
フタル酸の影響を研究するためのNewcastle大学生殖生物化学優先課題研究センターCatherine Itman博士
私たちが基本的に食べたいときに食べたいものを食べられるようになったのは食品の生産・加工・保存・包装に使われる化合物によるところが大きい。食品中の化合物と健康影響を関連づける研究は多いが実際病気にどう影響しているのかについてはよくわかっていない。一部は安全性試験が妥当でないからかもしれないが他にもある。動物実験は一般的にヒトでの暴露を反映していない。疫学研究は役にたつかもしれないが欠点はある。まらリスクがメリットを上まわるかどうかも検討しなければならない。

(元記事はJ Epidemiol Community Health コメンタリー
Food packaging and migration of food contact materials: will epidemiologists rise to the neotoxic challenge?
http://jech.bmj.com/content/early/2014/01/28/jech-2013-202593
Jane Muncke, John Peterson Myers Martin Scheringer, Miquel Porta
(いつものメンバー)

メディア報道はこんな感じ
True health impacts of food-packaging chemicals unknown, scientists warn
February 19, 2014
http://www.ctvnews.ca/health/true-health-impacts-of-food-packaging-chemicals-unknown-scientists-warn-1.1694783
まあオレオをたくさん食べるなら包装より中身の方が問題だろう)