食品安全情報blog過去記事

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その他

  • Lancet Volume 384, Issue 9937はグローバルヘルス、特にアメリカの特集

世界規模の情報:国立医学図書館(NLM)
Information on a global scale: the National Library of Medicine
Elizabeth Fee(NLMの主任歴史学者
Volume 384, Issue 9937, 5–11 July 2014, Pages 21–22
世界最大の医学図書館であるNLMは1818年にワシントンのJoseph Lovellの本棚である米国軍医学図書館から始まった。Joseph Lovellは後に公衆衛生局長官および陸軍衛生部長官となった。Joseph Lovellの後を継いだThomas Lawsonが本や雑誌を「図書館」のために買い始め、そのうちのひとつがThe Lancetのニューヨーク版である。南北戦争までには約2000巻となり、事務所に入り切らなくなったので銀行ビルに移った。
1865年にはJohn Shaw Billingsが責任者となり蔵書を拡大した。蔵書が増えたのでFord's Theatreの2階に移った。Billingsはパンフレットや学位論文やレポートなども含めてコレクションを拡大し、カタログ化してインデックスをつけることを決心し、巨大なIndex-Catalogueとなるものを作り始めた。医師向けには定期的雑誌のタイトルリストが必要だと考えIndex Medicusを作った。Billingsが図書館を去る1895年までにはこの国最大のそして最もよく使用される医学ライブラリーを作りあげた。
1942年に米国が参戦したときには司書のHarold Wellington Jonesがワシントンが爆撃されることから保護しようと古い稀少な本をクリーブランドに移した。戦後ワシントンに戻された。1956年に軍医学図書館は国立医学図書館と公式に命名された。
1950年代にFrank Bradway Rogersが現在MeSHとして知られる標準見出しリストを作った。以降ずっと図書館は場所が足りなくて何度か移転した。
現在NLMはMEDLARSを開発して運営している。MEDLARSはパソコンとインターネットのフリーアクセスにより達成された最初の技術革新であろう。1972年まではMEDLARS OnLINEの検索は14万回だったが現在のMEDLINE/PubMedの年間検索数は20億以上である。
最もよく使われているのはPubMedであるがNLMとNCBIは多数のデータベースを提供している。
問題はいつでもおこった。最初、NLMは図書館に情報を提供していたが1980年代に医師に直接提供するようになったら司書は職を失うことを恐れて慌てた。さらに一部の企業は情報を売ってお金儲けをしていたので無料のサービスは民間部門を怒らせた。典型的な事例がWilliams and Wilkins出版社が1968年にNLMを訴えたことである。長い法廷闘争で図書館が勝った。最近ではPubMed Centralが議論になっている。
PubMedだけでもアメリカは偉大だ、とてもかなわないと思うけど)

Case Report Chronic subdural haematoma secondary to headbanging
Ariyan Pirayesh Islamian et al.,
THE Lancet Volume 384, Issue 9937, 5–11 July 2014, Pages 102
脳の外傷や薬物使用歴はないが4週間前にMotörhead(イギリスのヘビメタバンド)のコンサートに行ってヘッドバンギングをした50才男性の慢性硬膜下血腫症例。
これまでヘッドバンギングに関連した健康障害としては頸動脈解離、縦隔気腫、むちうち、歯が折れるなどが報告されている。
(年をとったらほどほどに)

  • 英国とアイルランドの子どものテレビ番組で伝えられる食品と飲料

Food and beverage cues in UK and Irish children—television programming
Paul Scully et al.,
Arch Dis Child doi:10.1136/archdischild-2013-305430
http://adc.bmj.com/content/early/2014/07/01/archdischild-2013-305430.short?g=w_adc_ahead_tab
子ども向けテレビ番組合計82.5時間の内容を解析した。合計1155の食品や飲料が登場し、食品では最も多いのが甘いスナック(13.3%)、次いでお菓子/キャンディ(11.4%)。飲み物ではお茶/コーヒー(13.5%)が最も多く次いで砂糖入り飲料(13.0%)。ポジティブ32.6%、ネガティブ19.8%、中立47.5%。英国とアイルランドどちらも健康的でない食品の率が高い。
(質問:アンパンマンは食品ですか?それは「不健康」ですか?)

  • 環境保護主義者が私の友人を殺すところだった

Science 2.0
Environmentalists Almost Killed My Friend
By Josh Bloom | July 2nd 2014
http://www.science20.com/pfired_but_still_kicking/environmentalists_almost_killed_my_friend-139727#comment-177280
友人が避暑地のビーチで蚊に刺されて西ナイル脳炎になって死ぬところだった。Suffolk郡のベクターコントロール計画では蚊の駆除を行うことになっていたがそのコミュニティでは「殺虫剤は毒だから」という理由で計画を実施していなかった。地域の会合で説明して蚊の駆除をおこなうことに合意してもらった、という話。

  • 肥満でなお健康であることができるか?

Science
Can you be obese and still be healthy?
By Priyanka Pulla 3 July 2014
http://news.sciencemag.org/biology/2014/07/can-you-be-obese-and-still-be-healthy
肥満の人が全て不健康というわけではない、と一部の科学者は言う。肥満が有害か無害かを決めるように見える単一タンパク質が見つかった。ヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1)と呼ばれるタンパク質が、肥満でありながら健康な人で少なく、HO-1ノックアウトマウスに高脂肪食を与えると体重は増えるがインスリンへの感受性は変わらなかった。逆にHO-1をたくさん作るように遺伝子操作したマウスは通常の餌でもインスリン抵抗性になった。Cellに発表。

  • 鯨の回復は海の生態系にとって良い

Rebounding whale populations are good for ocean ecosystems
By Eli Kintisch 3 July 2014
http://news.sciencemag.org/environment/2014/07/rebounding-whale-populations-are-good-ocean-ecosystems
大型の鯨の数が増えると資源が枯渇するどころか環境を健康的に保つのに重要である、と結論した新しい研究がFrontiers in Ecology and the Environmentに発表された。
商業捕鯨を支持する人たちからの鯨が増えると魚が減るという主張を否定。
主な理由として鯨類が海をかき回すことによる有機物の循環
水産庁、こういうのにちゃんと反論できるんだろうか。)

  • Nature特集

STAPの毀誉褒貶
The rise and fall of STAP
http://www.nature.com/news/stap-1.15332
研究者コミュニティが信頼したのはNiwa, Sasai and Wakayama。そしてRIKENの対応は悪い。
記事の最後は「科学においては信頼が全て。一度失ったらそれを取り戻すのは極めて困難」

SMC UKがコメントを集めている
NatureによるSTAP細胞論文取り下げ発表への専門家の反応
expert reaction to the announcement that Nature has retracted STAP cell papers
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-the-announcement-that-nature-has-retracted-stap-cell-papers/
King’s College London幹細胞科学上級講師Dusko Ilic博士
30才の科学者がどうやって共著者やNatureのレビューワーを完全なねつ造で騙せたのか興味がある
University College London再生医療長Chris Mason教授
ピアレビューにとって最も重要なのは独立した科学者が再現できるかどうかだ

AP
Scientists Withdraw Report on Simpler Stem Cells
http://www.boston.com/health/2014/07/02/scientists-withdraw-report-simpler-stem-cells/cgU5Syn0GCQ3tECa5cB8KJ/story.html
Scienceを発行しているAAASの科学的責任部門長のMark Frankelはこの件を人々の科学への見方にひどい打撃black eyeとなったと言っている