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低用量のヒ素は雄マウスにがんを誘発する

プレスリリース
Low Doses of Arsenic Cause Cancer in Male Mice
July 8, 2014
http://www.niehs.nih.gov/news/newsroom/releases/2014/july8/index.cfm
ヒトが飲むのと同程度の飲料水中の低濃度ヒ素に暴露されたマウスは肺がんになった。
公共水道のヒ素は10 ppbを超えてはならないという基準がEPAにより設定されている。しかし個人の使う井戸水には基準はない。この研究ではマウスに50 、500、5000ppbのヒ素を含む水を与えた。マウスはヒトと代謝率が異なるので同じ健康影響を与える生物学的に同等な濃度はヒトより高いので50 ppbを最低濃度とした。ヒトの暴露状況に近くするために、交配の3週間前から、妊娠中も授乳中もずっとヒ素を与えた。離乳後は子どもに直接与え、成長してからも与え続けて腫瘍を調べた。
この論文の主著者でNTPラボのディレクターであるMichael Waalkes博士は「この研究はヒトの暴露されている濃度に近い低濃度のヒ素に暴露された動物で腫瘍ができることを示した最初の研究である」と述べた。「この結果は予期しなかったもので確実な懸念材料となる。」
ヒ素は天然にあるいはヒトの活動からの汚染で環境中に存在する。ヒ素は土壌や水から吸収されて多くの食品に存在する。この研究ではヒト発がん物質であることが既にわかっていて、世界中の数百万人の人々の飲料水にしばしば多く含まれる無機ヒ素に焦点を絞った。
この研究では50と500ppbで半分以上の雄マウスが良性および悪性肺腫瘍を発症した。雌マウスでも良性肺腫瘍は観察された。興味深いことにどちらの性でも5000 ppbでは肺腫瘍は増加しなかった。
この研究はひとつの実験に過ぎないが、極微量のヒ素の健康への有害影響を示す根拠の増加にさらに付け加えるもので、ヒ素には安全な量は存在しないという可能性を上げるものである。
Archives of Toxicologyに発表。
Lung tumors in mice induced by “whole-life” inorganic arsenic exposure at human-relevant doses
Michael P. Waalkes et al.,
http://link.springer.com/article/10.1007/s00204-014-1305-8
CD1マウス、104週、各群40匹、実験は正統、投与による明確な体重抑制はない
対照群(自然発生)は歴史的コントロール水準
Adenomaとcarcinomaの両方が増加、多発とhyperplasiaも同傾向で矛盾無し
雌は有意差はないが傾向はある
(論文に瑕疵はなさそう。50ppbは日本の場合ミネラルウォーター基準。水道水はWHOやEPAと一緒で10ppb。
もともとヒトの皮膚がんと関連する濃度では動物実験でがんが確認できていなかった−毛生えてるし(手足は観察している)。肺がんはヒトでもあるので根拠としてはかなり意味がある。
多分間違いなくヒ素の基準関連は厳しくなる。)