食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

  • ハツカネズミとメディア:疑わしい甘味料の研究への騙されやすい反応

International Food Information Council国際食品情報協議会
Food Insight
Of Mice and Media: A Credulous Response to an Iffy Sweetener Study –
By Matt Raymond (USDAの広報官などを務めたコミュニケーションの専門家)

Sep 18 2014 Last updated Sep 22 2014 –

http://www.foodinsight.org/blogs/mice-and-media-credulous-response-iffy-sweetener-study
まとめ
・9月17日にNatureに人工甘味料と体重増加や糖尿病につながる可能性のある状態との関連の可能性を示す研究が発表されたがこの研究にはたくさんの欠陥がある
・いくつかのより質の高い研究で人工甘味料を使って食生活を管理することのポジティブな効果が示されている
・この話のメディア報道は、最も信頼できない研究に最も多く注意を払うといういつものパターンだった

またいつものことだ。疑わしい研究から飛躍のあることを発表した研究者がいて、多くのメディアが報道する。聞いて欲しい。これは長いが重要な記事である。
9月17日にNatureに発表されたノンカロリー人工甘味料NAS)と耐糖能異常の関連を示したと主張する研究について、基本は多くのこれよりはるかに信頼できる研究が逆のことを示していて、この研究は多分間違っているということだ。
イスラエルのWeizmann科学研究所のEran Elinav博士らの研究では、20匹のマウスを5群に分けていて−一つは水、一つは砂糖水、残り三つはサッカリンアスパルテームスクラロース入りの水を与えている。つまり1群4匹である。
(中略)
この研究についてある専門家は甘い以外に何の共通点もない化学的に異なる物質をひとまとめにするなど化学者が参加していないことを指摘し、他の専門家はこの研究は甘味料が有害だという「十分な根拠」にはならないと指摘する。著者らは「人工甘味料の監視されない大量消費は再評価が必要」」というが甘味料の使用が全く監視されていないというのは単純に虚偽である。低カロリー甘味料は事前に評価され監視されている。
この研究は「肥満の増加が低カロリー甘味料の使用量増加と同時におこっている」と結論しているが"Coincides一致している"という単語を選択したことは興味深い。
圧倒的科学的事実は何を言っているか?例えば(論文紹介)
体重増加に関連する食物はたくさんあるがダイエットソーダではない。
(さらにマウスの実験はどれだけヒトに当てはめられないかについての論文紹介)
動物実験に意味がないのではなく、限界があるということである。
たくさんのメディア報道のうちいくつかは研究の限界について言及していたがテレビなどではこのニュースでNASを避けることにしたと主張する「いわゆる専門家」を紹介していた番組もある−そのような行動の負の影響には全く触れずに。
こんなふうにメディアが特定の胡散臭い研究だけを大々的に報道するのは例外的だと思う?そうではない。PLoS Oneに発表された2004年の研究では「医学雑誌のメディア報道:最良の論文がニュースになるか?」ではこれに答えようとした。答えはノーである。簡単に言うとメディアには「システム上のバイアス」があり、信頼できない研究の方がより多く報道される。「ヒトがイヌを噛んだ」ことが売れるのだ。たくさん食べるヒトが太るという事実を確認した研究はニュースとしての価値がない。
報道関係者に蔓延している「単一研究シンドローム」と胡散臭い科学の方が好きだという傾向がメディアを蝕んでいる。もう少し疑った方が良い。
(コミュニケーションの専門家という視点から。日本にはこういう人が少ない。)

Soda Makers Coca-Cola, PepsiCo and Dr Pepper Join in Effort to Cut Americans’ Drink Calories
By STEPHANIE STROMSEPT. 23, 2014
http://www.nytimes.com/2014/09/24/business/big-soda-companies-agree-on-effort-to-cut-americans-drink-calories.html
火曜日の第10回クリントングローバルイニシアチブにおいて米国の肥満危機対策のために三大炭酸飲料企業が砂糖入り飲料のカロリーを減らす誓約をした。ビル・クリントン前大統領は電話インタビューに答えて「これは一部では年に数ポンドの減量につながる。特に低所得層では砂糖入り飲料由来のカロリーが子どもの一日の摂取量の半分以上になることもある。平均的消費者では一日のカロリーの約65である。」と述べた。これらの企業は2025年までに20%カロリーを減らすとした。ゼロあるいは低カロリー飲料を増やすと同時にサイズを小さくし、消費者に飲料から摂取するカロリーを減らす教育をする。
砂糖入り飲料の販売は既に低下傾向で健康推進者たちはこの請願を単なるマーケティング戦略とみなしている。誓約をしなくてもカロリーを減らさざるを得なくなるのは既定路線だから。
ビル・クリントン前大統領は2004年に心臓手術をする前はコーラを毎日飲んでいたが手術後は食生活を変え水やアイスティーを主に飲むようにしている。しかし30カロリーのスポーツドリンクも好き。

  • 美味しいあるいは依存性?中華レストランは芥子入り麺を提供

CNN
Tasty or addictive? Chinese restaurant serves noodles laced with opium poppy
September 24, 2014
http://edition.cnn.com/2014/09/24/world/asia/china-noodles/
陝西省の麺販売者が、客がまた来るように粉末にした芥子を入れていたことを認めた、と中国メディアが報道している
オーナーはこの物質を8月に600元で2kg購入したという。
発覚したのは食べて間もない26才の男性が車を運転していて警察に止められ、薬物検査を受けたため。
麺を食べて薬物依存になることはありそうになという。皿に中国では芥子を食品に加えることはそれほど珍しいことではない。

  • 食品への罪悪感が流行している、臨床心理学者が警告

ABCニュース
Food guilt an epidemic of our times, clinical psychologist warns
http://www.abc.net.au/news/2014-09-25/food-guilt-the-epidemic-of-our-times/5767356
オーストラリア臨床心理学会のLouise Adamsが、これがいいとかあれがいいとかいうダイエットの「津波」が、何を食べても何かしらの罪悪感を覚えるようにしている、という。誰と何を食べても誰かのルールに従ったりあるいはルールを破ったりあるいは罪悪感を感じたりせずにはいられない。食事の時には何を食べるかについてがいつも話題になり、どの教祖に従うかで罪が決まる。我々はあまりにも混乱していて何を信じて良いのかわからない。
人々は「いつも悪い食品を選んでしまう」ことを心配している
Ms Adamsはどのくらいお腹がすいているのか、自分の身体に聞け、という。100%正しい、完璧な食生活でなければならないなどということはない。食べ物を楽しみながら健康体重を維持できる

  • 先生が不健康なランチボックスに文句を言うようになる

Teachers to tell off parents for unhealthy lunchbox choices
September 25, 2014
http://www.9news.com.au/national/2014/09/25/09/50/teachers-to-tell-off-parents-for-unhealthy-lunchbox-choices
シドニーの学校では先生が宿題だけでなくランチボックスもチェックする。ノース・シドニー・デモンストレーション・スクールは生徒や保護者に教育することでジャンクフードとの戦いの先頭を走っている。健康対策として子どもが家から砂糖の多い食品を持ってきたら保護者と対抗することになる。校長はランチボックスにチョコレートバーやポテトチップスの袋が入っていたら親に対してこれらは薦められないと個人面談をすることになる、という。保護者は歓迎している。
コメントたくさんついてる
(手作りパウンドケーキとかダメという話?日本にも飴一つ許さない学校はあるらしいけれど。)

  • パーソナライズドゲノム医療と出産前遺伝子検査

JAMAエディトリアル
Personalized Genomic Medicine and Prenatal Genetic Testing
Siobhan M. Dolan
JAMA. 2014;312(12):1203-1205
出産前遺伝子検査技術が急速に進歩している割に女性の態度への理解はそれほど進んでいない。JAMAの今号で妊娠女性に遺伝子検査に関する情報を与えられた上での意思決定を促進するための介入を行った結果が発表された。通常のケアを受けた女性353人に比べて、遺伝子検査の関連情報を提供された群(357人)は侵襲的検査をしない(5.9% vs 12.3%)あるいは遺伝子検査そのものをしない (25.6% vs 20.4%)率が高かった。情報をより理解した女性が侵襲的出産前遺伝子検査をしない可能性が高くなるということは重要で、これは情報が多ければ多いほどよいという想定に矛盾する。理想の出産前遺伝子検査は流産のリスクがなく多くの良くある病気についての診断に役立つ情報を提供するものであるが現在そのような検査は存在しない
Kuppermann M, Pena S, Bishop JT, et al. Effect of enhanced information, values clarification, and removal of financial barriers on use of prenatal genetic testing: a randomized clinical trial. JAMA. doi:10.1001/jama.2014.11479.
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1906614
オープンアクセス
(遺伝子検査って知れば知るほどやりたくなくなるよね。金儲けしたい人たちに騙されるだけというか)