食品安全情報blog過去記事

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その他ニュース

  • NIHは大規模米国子ども研究をキャンセル

ScienceInsider
NIH cancels massive U.S. children’s study
By Jocelyn Kaiser 12 December 2014
http://news.sciencemag.org/funding/2014/12/nih-cancels-massive-u-s-children-s-study

Natureニュース
NIHは子ども縦断研究をやめる
NIH ends longitudinal children’s study
Sara Reardon 12 December 2014
http://www.nature.com/news/nih-ends-longitudinal-children-s-study-1.16556
予算とマネジメント問題で10万人の子どもたちを生まれたときから成人するまで追跡するという計画は沈む
12月12日にNIHのFrancis Collinsが計画中止を発表した。

  • 誇大広告の源はプレスリリースと研究が指摘

Nature Research highlights
Study points to press releases as sources of hype
Chris Woolston 12 December 2014
http://www.nature.com/news/study-points-to-press-releases-as-sources-of-hype-1.16551
研究者は科学に関する報道が間違っていたり誤解を招くものだったりするとメディアが悪いと批判するのが大好きだ。しかし12月のBMJの研究は誇大広告の多くが大学のプレスリリースが原因であること、そのプレスリリースの多くは研究者自身が認めたものであることを示唆した。研究者は自分の研究のプレスリリースの誇大広告に責任を持つべきである、とCatherine Collinsがtweetしたが、Steve Usdinはレポーターがなぜ仕事をしない?と批判している。
(Natureだって誇大宣伝してきた。全ての関係者に責任がある。問題として認識されたこと自体は評価できるだろう。)

  • NY警察:液体ニコチンを飲み込んで子どもが死亡

NY Police: A Child Dies After Swallowing Liquid Nicotine
Dec 14, 2014
http://www.capitalberg.com/ny-police-child-dies-swallowing-liquid-nicotine/21782/
ニューヨークFort Plainの1才の子どもが液状ニコチンを飲み込んで死亡した、と警察が言う。犯罪とはされないだろうが捜査は続ける。ニューヨークでは電子タバコ用の液状ニコチンは合法であるが極めて毒性が高い。現時点では液状ニコチン容器は子どもが開けられないよう義務が課されていはいない。液状ニコチンの規制強化法案は間もなく成立する見込み。

'Easy ways' to cut Alzheimer's risk
https://uk.news.yahoo.com/easy-ways-cut-alzheimers-risk-001333493.html
Age UKによるレビューで、認知機能低下の76%がライフスタイルや教育レベルによることが示された。運動が最も効果的で、週に3-5回、30分から1時間程度の運動でメリットがある。また健康的な食事、タバコは吸わない、飲酒はほどほど、も効果がある

  • 家で料理をすることが心疾患リスクと関連

Telegraph
Home cooking link to heart disease risk
14 Dec 2014
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/11292379/Home-cooking-link-to-heart-disease-risk.html
食事の準備をする時間が長いほど心疾患に関連する健康問題リスクが大きくなるという研究。2700人以上の女性を調べた。専門家は一部は自分で料理した場合食べる量が多くなることによるという。シカゴのRush University Medical CentreのBrad Appelhans博士らによる研究。

  • EUの化学物質試験における動物使用について欧州行政監察官がPETAの申し立てを認める

PETA
European Ombudsman Ruling on PETA Complaint a Victory for Animals Used in EU Chemical Tests
http://blog.peta.org.uk/2014/12/official-ruling-must-done-minimise-cruel-chemical-tests-animals-europe/
欧州行政監察官が、欧州化学品庁European Chemicals Agency (ECHA)が法により求められている動物実験を最小限にする努力を完全に実施していないと判断した。

Proposal of the European Ombudsman for a friendly solution in the inquiry into complaint 1568/2012/(RT)AN against the European Chemicals Agency (ECHA)
http://www.ombudsman.europa.eu/cases/correspondence.faces/en/58545/html.bookmark
(REACHで大量の動物実験を要求しながら動物実験の削減をしろという。)

  • 「リップスティックが赤ちゃんのIQに有害」

senseaboutscience
For The Record
"Lipstick could harm baby's IQ"
11 December 2014
http://www.senseaboutscience.org/resources.php/172/quotlipstick-could-harm-babys-iqquot
12月11日のMetro、Independent、 Guardian、Mail Onlineが「リップスティックが赤ちゃんのIQに有害」と主張した。実際には、その報道のもとになった研究は妊娠中に口紅を使ったことの影響を調べたわけではないし妊娠中のフタル酸暴露が子どものIQを低下させたことを示したものではない。
Imperial College Londonの毒性学者Alan Boobis教授
この研究は妊娠中のある時点での尿中のある種のフタル酸濃度と7才の時のIQの関連を示したものである。著者自身が指摘しているように、フタル酸は人体中から比較的早く無くなるので、尿の濃度から暴露を推定することには多くの問題がある。因果関係があるか、関連があることが事実であるかどうかを結論するのは早すぎる。偶然である可能性がある。

  • 化粧品中の化合物があなたの子どものIQを下げるか?ノー。この研究はただのがらくた

ACSH
Can cosmetic chemicals lower your kids IQ? No. This study is just more junk.
December 12, 2014
http://acsh.org/2014/12/can-cosmetic-chemicals-lower-kids-iq-study-just-junk/
この手の報道は何度も見たことがある。たくさんの活動家集団や「科学者」が一般からの注目やNIH/NIHSの研究費を求めて、我々が嫌いな化合物を狙い撃つ。
Columbia/Mailman School of Public Healthのグループは幸運にも妊娠女性とその子どもたちのコホートを追跡するNIH/NIEHSの巨額研究費を得て、似たような報告を何度か出している。(リンクされているのはPediatrics Vol. 124 No. 2 August 1, 2009 pp. e195 -e202の周産期の空気中多環芳香族炭化水素暴露と5才の子どものIQ低下に関連という論文。同じコホート。)今回はフタル酸と7才の時点でのIQ低下に関連があるという報告だった。注目すべきは著者らの論文のタイトルは大学のプレスリリースより相当抑制されているということである。
(PLoS ONE 9(12): e114003. doi:10.1371/journal.pone.0114003の論文のタイトルは「母親の周産期フタル酸暴露と子どもの7才時点でのIQとの持続する関連」で、プレスリリースは「妊娠中に良くある家庭用化学物質に暴露されることは子どものIQの相当な低下と関連する」で、妊婦がネイルを塗っている写真付き)
これは観察研究なので因果関係は言えない。
著者は家庭環境やその他の要因をコントロールした、というが、特に社会経済状態の低い家庭の各種要因をコントロールするのは不可能である。さらに母親のIQをコントロールしたというが父親は?多くの新聞報道は「化粧品の化合物」を警告しているが化粧品に相当量使われている唯一のフタル酸であるフタル酸ジエチルとIQには関連がない。フタル酸類は半減期約4時間で排出されるので妊娠中の一回だけ測定したものが「暴露量」を反映しているとは思えない。この研究グループは「統計学的に有意」という言葉でいい加減な統計を発表し続けているが、一度にたくさんの変数を調べたらいくつかに疑似関連がみつかるのは当然である。
PubMedで検索すると彼らが子どもに悪いと言っているのはフタル酸と多環芳香族炭化水素の他に有機リン殺虫剤、クロルピリホス、ピペロニルブトキシド、ペルメトリン、ビスフェノール、ポリ臭化ジフェニルエーテル、タバコの煙、鉛、妊娠日数など。
このコホートは10万人を調べるはずだった全国子ども研究の準備として行われ、Scienceなどが報じたように実験計画等に問題が多くて中止になった。問題の一つには対象に選んだ母子が国民を代表しているかどうかということがある。このコホートはニューヨークのスラム街のアフリカ系アメリカ人とドミニカ人女性からなるのでかなり特殊。大学のプレスリリースの写真は裕福そうな白人女性が優雅にネイルを塗っているのでそれも虚偽である。まさに大学のプレスリリースが誇大広告、の例。)