食品安全情報blog過去記事

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論文等

  • カナダのチェーンレストランのナトリウム量の変化(2010−2013):縦断研究

Changes in sodium levels in chain restaurant foods in Canada (2010−2013): a longitudinal study
Mary J. Scourboutakos, , Mary R. L’Abbé
cmajo December 16, 2014 vol. 2 no. 4 E343-E351
http://www.cmajopen.ca/content/2/4/E343.full
1回提供量あたりのナトリウム量は食品の30.1%で減少、16.3%で増加、53.6%で変化無し。
全体としては少しだけ減少(–25 [SD ± 268] mg, p < 0.001)したが1日の摂取量の適切レベル(1500mg)および上限(2300mg)を超える割合に変化はない

  • BMJクリスマス特集

ダーウィン賞:馬鹿げた行動の性差
The Darwin Awards: sex differences in idiotic behavior
Ben Alexander Daniel Lendrem et al.,
BMJ 2014;349:g7094
http://www.bmj.com/content/349/bmj.g7094
過去20年のダーウィン賞(劣化した遺伝子を自ら遺伝子プールから排除した」事を讃える賞)受賞者データをレビューし男性の方が女性より多く受賞していて大きな性差があることを報告
“男性はあほ理論male idiot theory” (MIT)
医療のコミュニケーションにgoogle翻訳を使う:正確さの評価
Use of Google Translate in medical communication: evaluation of accuracy
Sumant Patil, Patrick Davies.
BMJ 2014;349:g7392
http://www.bmj.com/content/349/bmj.g7392
よく使う表現10をgoogle翻訳で26ヶ国語に翻訳した。翻訳した文章をネイティブスピーカーに送り英語にして戻してもらってもとの英語と比較した。少々の文法的間違いは許容する。全部で260のフレーズのうち150は正しく110は間違いだった。間違いが多かったのはアフリカの言語で次がアジアの言語。西ヨーロッパの言語が最も正確だった。スワヒリ語が最も不正確で10%しか正しくなかった。

  • 低グリセミック食は心血管系疾患と糖尿病のリスク要因を改善しない

Low glycemic diet does not improve risk factors for cardiovascular disease and diabetes
16-Dec-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-12/bawh-lgd121614.php
JAMAに2014年12月17日に発表された。この知見はグリセミック指数を用いて食品を選択することがLDLコレステロールHDLコレステロール、トリグリセリド、血圧、インスリン抵抗性を改善しないことを示す。
163人の血圧の高い過体重の成人に4種類の完全食のうちの一つを5週間与えた。いずれも食事ガイドラインが薦める健康的な食生活のバリエーションの一つで、カロリーや栄養素は同等であるがグリセミック指数には大きな違いがある。
もと論文オープンアクセス
食事中炭水化物の高いvs低いグリセミック指数の心血管系疾患リスク要因とインスリン抵抗性への影響:OmniCarb無作為臨床試験
Effects of High vs Low Glycemic Index of Dietary Carbohydrate on Cardiovascular Disease Risk Factors and Insulin Sensitivity
The OmniCarb Randomized Clinical Trial
Frank M. Sacks et al.,
JAMA. 2014;312(23):2531-2541.
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2040224
4種類の食事の2つは高炭水化物(食事エネルギーの58%が炭水化物)でグリセミック指数が≥65 と≤45(グルコーススケール)。もう2つは低炭水化物(食事エネルギーの40%が炭水化物)でグリセミック指数が≥65 と≤45。
(ほぼ日本でしか使われていないPFCバランスという言葉で理想的とされているものが「高炭水化物食」に分類されることに注意。)

エディトリアル
全体として心臓に健康的な食生活の文脈でのグリセミック指数の役割
Role of Glycemic Index in the Context of an Overall Heart-Healthy Diet
Robert H. Eckel,
JAMA. 2014;312(23):2508-2509.
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2040170
心血管系(CVD)イベントやがん発症率、全原因による死亡などのようなハードアウトカムへの食事介入の影響を調べた無作為試験はほとんど存在しない。これらは難しく費用がかかる。例外はオリーブオイルやナッツを加えた地中海食の主要CVDイベントへの影響を4.8年調べたPREDIMED研究である。
PREDIMEDと違って、ほとんどの食事介入研究は代用指標を使う。今号のJAMAに発表されたSacksらの研究はこの種のものとしては最良のデザインである。163人の軽い高血圧のある過体重成人163人についてCVDの重要なバイオマーカーに与える食事の影響を無作為クロスオーバーで調べた。4種類の異なる食事を5週間、最低2週間の洗浄期間をおいて食べてもらって比較した。一次アウトカムはインスリン抵抗性、LDLコレステロールHDLコレステロール、トリグリセリド、血圧、の5つである。
多くの結果は予想を裏切った。高炭水化物食のグリセミック指数が低いと、インスリン抵抗性は増えないどころか下がった。同じ食事でLDLとアポリポタンパク質Bが増えHDLやトリグリセリドや血圧に変化はなかった。(略)
ベースラインのLDLに比べると、全ての食事でLDLは下がったが、他の食事に比べると高炭水化物低グリセミック指数ではLDLが有意に高いのは気になる。ただこの知見を説明できるメカニズムはない。HDLコレステロールに変化はないがトリグリセリドは食事の炭水化物の総量あるいはグリセミック指数、あるいは両方が減ると下がる。
グリセミック指数やグリセミックロードは1981年にJenkinsらによって初めて定義された。グリセミック指数は特定の食品を食べたときの血糖値への影響を示す。この概念はある種の炭水化物含有食品は単独で食べた場合に同じ量の炭水化物とカロリーを含む他の食品より血糖値を上げるという観察に基づく。グリセミックロードは一回の食事の炭水化物含量とその食品のグリセミック指数を掛けて100で割ったものである。これらの定義は個別の食品が単独で食べられることを想定しているが、他の食品と一緒に食べた場合についての疑問が提示されていた。グリセミック指数の応用が重要なのは糖尿病患者であろう。
Sacksらの研究の予期せぬ知見はグリセミック指数という概念は、特に全体として健康的な食生活の中では、これまで考えられていたより重要ではないことを示唆する。従ってこの知見は全体として健康的な食生活の重要性に回帰すべきということだろう。心臓に健康的な食生活は野菜や果物、全粒穀物低脂肪乳製品、鶏肉、魚、豆、熱帯ではない植物油、ナッツを多く食べナトリウムと砂糖入り飲料と赤身肉を減らすというものである。このパターンは必要なエネルギー、個人や文化による好み、栄養療法持病により適応できる。またがんや糖尿病などの慢性疾患予防のためのコンセンサスも提供する。
患者に心臓の健康に良い食生活をするように援助するのは複雑なことである−単にこれを食べろあるいは、これを避けろと指示することではない。また病院だけでできることでもない。
(略)
糖尿病患者ではないなら、全体として健康的な食生活を強調することのほうがグリセミック指数やグリセミックロードを考えるより妥当であることをSacksらの研究は示唆する

  • 米国十代のアルコール、タバコ、多数の違法薬物の使用は減っている

Use of alcohol, cigarettes, number of illicit drugs declines among US teens
16-Dec-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-12/uom-uoa121514.php
米国の中高生の全国調査で薬物使用状況に改善がみられた。1975年に研究が始まって以来、飲酒と喫煙が最低だった。違法薬物の使用も近年減少している。

  • 米国の子どもたちはより安全に、より良い教育を受け、より太った

US children are safer, better-educated, and fatter
16-Dec-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-12/du-uca121614.php
過去20年で米国の子どもの多くの指標は改善している
2014年全国子ども若者福祉指数報告書によると、米国の子どもたちは一般的に20年前より安全になり教育レベルも向上した。問題は子どもの貧困と肥満の流行と違法薬物の使用(大麻が増えたため)。

  • 「原始人ダイエット」はどんなものだったのか?一種類とはほど遠い、と研究が示唆

What was the 'Paleo diet'? There was far more than one, study suggests
16-Dec-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-12/gsu-wwt121514.php
減量のための流行の食事法として「原子人ダイエット」や「穴居人ダイエット」などが主張されるが時期や場所により先祖の食べてきたものはかなり異なるので何でも有りである。
The Quarterly Review of Biologyに発表された知見によると初期のヒトが特定の食生活をしていたり特定の食品が重要だったりするという根拠はほとんど無い。
「原始人ダイエット」の定義は極めて困難で我々の祖先は広範な環境に住んでいて入手できる食品はそれにより変わった。たとえ同じ「食品」であっても今日のそれとは違う。初期のヒトは短命で食事が健康的だったかどうかはわからない。我々の祖先にとって大事だったのは生き残ることでありバランスの取れた食生活ではない。

  • 作物を野生状態に戻すことが世界を食べさせられるか?

Can returning crops to their wild states help feed the world?
16-Dec-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-12/cp-crc120914.php
Trends in Plant Scienceに12月16日に発表されたレビュー。何千年にもわたる交配のプロセスで非意図的に生じた作物の欠陥遺伝子を、もとの野生の遺伝子で修復することで効率的に改良できるのではないかという提案。遺伝子組換え技術を使うが入れた遺伝子はもともと持っていたもので、「エイリアン」ではない。

  • 何故日本の地震の後、がれきの山は自然発火するのか?

Science
Why did rubble piles spontaneously combust in aftermath of Japanese quake?
By Kerry Klein 16 December 2014
http://news.sciencemag.org/asiapacific/2014/12/why-did-rubble-piles-spontaneously-combust-aftermath-japanese-quake
消防研究センターによるFire and Materialsに発表された研究によると最も大きな火事のリスクは腐った畳。次いで新しい畳と木片。かぎになるのは微生物の働きで、水を加えると燃えるチャンスが増える。

  • 今年の注目記事

Natureニュース
Features of the year
16 December 2014
http://www.nature.com/news/features-of-the-year-1.16563
Nature編集部が選ぶ今年の注目記事
これまで最も多く引用された論文トップ100、Homo floresiensisの発見、統計学的エラー(p値はそれほど信頼できない)、Woo Suk Hwangカムバック、神経科学(ノーベル賞受賞者の二人)、エボラ、実験室を離れた科学者の人生、プラズマ物理学、加齢のバイオマーカー、グローバルヘルス:恐ろしい食事(調理用のバイオマス燃料使用が大きな健康負荷)