食品安全情報blog過去記事

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消費者安全性に関する科学委員会−内分泌撹乱物質についての覚え書き

SCCS - Memorandum on Endocrine Disruptors
16 December 2014
http://ec.europa.eu/health/scientific_committees/consumer_safety/docs/sccs_s_009.pdf
2014年12月16日の第8回総会で採択
化粧品に関する規制 (EC) No 1223/2009では第15条4項で「ECや国際的に合意された内分泌撹乱性同定基準が入手可能になった場合には、あるいは遅くとも2015年1月11日には、欧州委員会ECは内分泌撹乱性のある物質についてのこの規制を見直す」と述べている。
ECはこの問題について各種科学的政治的側面について二つの専門家委員会を設定した。「扶助委員会、EU機関及び加盟国の臨時委員会」は政治的問題に対応する。「内分泌撹乱物質専門助言委員会」は特定の規制の枠組みにかかわらず内分泌撹乱化合物の同定のための科学的基準を含む科学的問題を取り扱う。どちらも業界団体、NGO、EC職員、EU機関、加盟国の代表が含まれる。「内分泌撹乱物質専門助言委員会」の会合の結果は二つの報告書にまとめられている。
EUでの定義を準備するため、ECはEFSAに内分泌撹乱物質(EDs)のハザード評価についての科学的意見を依頼し、2013年にEFSAが発表している。
欧州化学機関(ECHA)はREACH規制下でのこの問題に対応するためにEDについての専門家ワーキンググループを設立した。内分泌撹乱物質は、CMR(発がん性、変異原性、または生殖毒性を有する物質)またはPBT(難分解性高蓄積性および毒性有)/vPvB(高難分解性高生体蓄積性)同等レベルの懸念となる、ヒト健康や環境への重大な影響がある可能性が高い(probable)という科学的根拠がある場合には、ケースバイケースで極めて懸念の高い物質(SVHCs)として同定される。
2014年6月に欧州委員会は植物保護製品規制とバイオサイド製品規制履行の文脈での内分泌撹乱物質同定のための定義基準ロードマップを開始した。しかしながら他の規制分野でも言及されているように、化粧品部門も含む異なる規制で予想されている各種アプローチがロードマップに組み入れられている。植物保護製品規制とバイオサイド製品規制履行の文脈でのパブリックコメント募集が始まった(2014年9月26日から2015年1月16日まで)。この覚え書きはその意見募集へのSCCSの寄与という意味でもある。
2008年8月5日の欧州委員会の決定で、消費者の安全性、公衆衛生、環境の分野の科学委員会と専門家の構造が決められて3つの科学委員会が作られた。SCCSは食品以外の消費者製品(例えば化粧品やその成分など)やサービスの全ての種類の健康と安全リスクに関する問題について意見を提供する。
SCCSのメンバーによって「SCCSの化粧品成分の試験と安全性評価に関するガイダンスメモ」がまとめられている。この文書は当局や化粧品企業が実際の化粧品に関するEU規制に協調的に従うことを改善するためのガイドを提供する。それは欧州における化粧品の試験や安全性評価における異なる問題についての関連情報を含む。このガイダンスノートは科学的知見の進歩を取り入れるために定期的に改訂・更新されている。
SCCSは、EFSAやJRCと同様、WHO/IPCSの定義を支持する:
内分泌撹乱物質(ED)は、内分泌系の機能を変化させることにより、無傷の生物やその子孫や(亜)集団に有害健康影響を引き起こす外来物質または混合物である」
EDは3つの基準一式で定義されることを強調する:i)無傷の生物や(亜)集団に有害影響がある;ii)内分泌活性がある;iii)その二つの間に妥当な因果関係がある。さらにSCCSはEFSAの結論を支持する:「EDのハザードキャラクタリゼーションには、主要影響、重大性、(不)可逆性、強度が考慮される。リスク管理のためにリスクや懸念レベルについての情報を提供するためには、リスク評価は(ハザードと暴露データ/予測を考慮した)入手できる情報を最大限に利用する。従ってEDはほとんどの他のヒト健康や環境への懸念のある物質と同様に取り扱うことができる、つまりハザード評価だけではなくリスク評価の対象である」
この立場はSCCSおよびその前身機関(SCCPとSCCNFP)の、内分泌撹乱作用のある物質の安全性評価に関する過去と現在の手法と一致している。例えばin vitroとマウスのin vivoでの弱いエストロゲン活性のある有機UVフィルターである。SCCNFPは2001年にこれについて意見を発表していて、入手可能な全ての情報を解析して市販の日焼け止め製品のエストロゲン作用はヒト健康に有害影響はないと結論している。より最近では4-メチルベンジリデンカンファーと3-ベンジリデンカンファーの安全性評価には、ヒト暴露データと内分泌に関連した有害影響の可能性についての注意深い評価の後に、動物実験で導出されたNOAELを用いてMoS(安全性マージン)を計算した。化粧品に保存料またはその他の目的で使用される成分についてSCCPやSCCSが評価している、すなわちパラベン、トリクロサン、ホモサレート、シクロメチコンである。これらの意見は内分泌活性が安全性評価にとって重要なエンドポイントではないと結論している。とはいえこれらの意見では異なる内分泌活性を検出するのに適したin vitro試験の種類やそれに関連する発達や生殖毒性を検出するためのin vivo試験について記述している。その結果これらの意見は内分泌撹乱性をもつ物質の科学的評価に必要なデータの種類にっついての幾分かのガイダンスとなっている。
2013年以降化粧品成分についての動物実験禁止が発効しているので、もしその物質が化粧品にのみ使用登録されているのであれば、将来「EDの可能性のある物質」と「ED」を区別するのは極めて困難になるであろう。しかしREACH規制下や他の使用法が登録されている場合には、当分の間動物実験の情報が必須である。
各種レベルでのさらなる努力にも関わらず、複雑な毒性学的エンドポイントについての動物実験の代替法による代用は、科学的には困難なままである。内分泌活性のある物質(内分泌撹乱物質候補)については、動物実験データ無しでヒト健康への影響を評価することは課題として残る。
(重要な文書なのでほぼ全訳してみた。要するに内分泌撹乱も普通の毒性と同じように全ての科学的情報をもとに評価するのであって、特別なものではないと言っている。内分泌撹乱作用はスペシャルで毒性学の常識が覆される、みたいな主張は結局のところ根拠が提示されないまま。EU予防原則だからホルモン作用があったら全部禁止みたいなこと言っている人たちがいるけど違うから。環境ホルモン騒動もそろそろ総括が必要なんじゃないですかね、もちろんまだ活動家は元気だし政治的圧力はあるけれど。)