食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

  • 悪い科学を打ち破る

Scienceの書評
Breaking bad science
Joel Best
Science 6 February 2015: Vol. 347 no. 6222 p. 619 DOI: 10.1126/science.aaa4272
アメリカ人にとってロンドンの新聞売り場は、その販売されている新聞の種類の多さと警鐘を鳴らす見出しにびっくりさせられる。ほとんどの米国の都市には毎日発行される新聞は一つしかないし物理的大きさも数も少なく内容も落ち着いている。英国には全国紙が約10あり、部数はアメリカ同様に減っているが競争が激しいため読者を獲得しようとカラフルである。
この英国の新聞社のセンセーショナリズムが医師でサイエンスライターのBen Goldacreにとっては無限の「Bad Science」ネタの供給源となる。Bad Scienceは2003年から2011年に彼が毎週The Guardianに書いていたコラムのタイトルである。彼の新しい本「I Think You'll Find It's a Bit More Complicated Than That」はコラムに登場した100以上の短い文章からなり、科学が一般の人に伝えられ議論されるやりかたのシステム上の問題を明らかにしている。Goldacreにとって「Bad Science」はいろいろな問題を含む−正確さよりおもしろさを好む記者、研究を理解できない記者、記事の中身を毀損する見出しをつける編集者、など。そして宣伝のためのプレスリリースをする専門誌、予備的知見で注目を集める学会、ピアレビューを受ける前にメディアで自分の宣伝をする研究者、医薬品にとって都合のいい論文を書く製薬企業が雇ったゴーストライター。さらに、もちろん、魔法の治療法や努力せずに痩せられる方法などを売るあからさまな業者。これらの多くが英国の新聞やテレビに出る方法を探り、当然インターネットでも販売している。
Goldacreの目的は、悪い科学のどこが悪いのかを示すことで一般の人に科学はどのように営まれているのかを説明することである。そして彼はそれをおもしろがっている。彼は論証のレベルを下げることはないが皮肉が好きでインチキを売る輩や政治家や活動家やレポーターを批判するのを楽しんでいる。
「I Think You'll Find It's a Bit More Complicated Than That」には多くの話題が含まれる:飲料水のフッ素添加、コーヒーによる幻覚、いつまでも残るワクチンにより自閉症になるという主張、など。それぞれ数分で読める文章が、疑わしい主張についての批判を提供している。
基本となるメッセージは、科学がメディアで報道されているときにはあなたは批判的に考える必要があるということだ。科学文献はおそろしく広大だ。現在24000以上の科学雑誌が発行されていて毎年130万報の論文が発表されている。メディアに報道されるのはほんの一部である。データを公開したりピアレビューされるのを拒否するような人は公的な注目を集めるべきではない。そしてメディアはあまりにも疑わしい主張を報道したがる。
(400ページもある。けど訳してくれないかな。2冊目も翻訳は出てないのか。英国風の諧謔が難しいんだけれど)

ScienceInsider
FDA commissioner to step down
By Kelly Servick 5 February 2015
http://news.sciencemag.org/people-events/2015/02/fda-commissioner-step-down
約6年FDAのトップを務めたMargaret Hamburgが退任する予定であると発表した。
彼女の在職期間にいくつかの不穏なエピソードはあるものの、同僚や保健当局の職員からは大きな賞賛を集めた。大統領が新しいコミッショナーを任命するまでFDAの主任科学者Stephen Ostroffが代理を務める。Duke 大学の心臓専門医Robert Califfが後継者と噂されている。

  • 何が少女の思春期開始を早くしているのか?

What Causes Girls to Enter Puberty Early?
By LOUISE GREENSPAN and JULIANNA DEARDORFF
February 5, 2015
http://mobile.nytimes.com/2015/02/05/opinion/what-causes-girls-to-enter-puberty-early.html?emc=edit_th_20150205&nl=todaysheadlines&nlid=12253159&_r=2&referrer=
思春期が早くなっていることについて、主な原因であるとは考えられない食事中の大豆やホルモン様化学物質を原因だとするニュースが多く、肥満と家庭ストレスを含む真の原因が見過ごされている。化学物質暴露も少女の思春期開始に影響する可能性はあるが、それほどよくわかってはいない。我々は2005年以降1200人以上の少女を追跡研究しているが体重が重い少女が思春期早発しやすいのは明確である。脂肪はエストロゲンを分泌する。近頃の子どもたちの体重の重さには砂糖入り飲料が寄与している。また少女の家庭の情動的ストレスが思春期を早くさせる強い根拠が明らかになった。喧嘩が多く安定しない家庭で育つと思春期が早くなる。性的虐待でも早くなる。家庭内に生物学的父親がいない少女は父親がいる少女に比べて12才前に初潮を迎える可能性が2倍になる。
内分泌撹乱化学物質がホルモン様作用があるため懸念となる可能性はあるがこれまで単一の化合物が原因だとは同定されていない。日々の生活で暴露される無数の化合物の影響についてはわからないが、「オールナチュラル」が答えではないだろう−天然物にもエストロゲン作用のあるものは多い。
だから親や社会がすべきことは何だろう?無数の標的に圧倒されてしまうより、直接悪影響が確認されている肥満とストレス対策を集中的にすべきだろう。

  • 肉食キノコがヒトの免疫の謎を明らかにする

Carnivorous mushroom reveals human immune trick
5-Feb-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-02/mu-cmr020415.php
PLOS Biologyに発表された研究。肉食のヒラタケoyster mushroomは害虫の回虫から身を守ると同時に食べることができる。キノコに含まれるPleurotolysinというタンパク質が標的細胞に穴を開けて食べる前に殺す。
(食虫植物のようなものか。)

  • オンラインのコメントが予防接種に影響する

Online comments influence opinions on vaccinations
4-Feb-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-02/wsu-oci020415.php
インターネットのおしゃべりが公的機関の発表より影響が大きい
米国で一度は根絶されたと考えられるはしかなどの病気が再興しているため、医療機関のウェブサイトなどが消費者に重要なリスクについての教育を行っている。ワシントン州立大学の研究者らが人々は信用できる公的発表よりネットでのコメントにより影響されるという。Journal of Advertisingに発表された研究。最初の調査では129人に公的機関による発表に似せたワクチンに賛成と反対のウェブサイトを見せ、その後そのサイトについての賛成・反対のフィクションコメントを見せる。すると実験参加者は公的機関によるものと誰だかわからない人のコメントを同程度に信用した。二つ目の実験ではコメントしている人が英文学専攻の学生、医療の啓発者、感染症専門医であると伝えられる。すると参加者は公的機関の発表より医師のコメントに大きく影響された。