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葉酸塩と葉酸に関するFAQ

Frequently asked questions about folate and folic acid
2. April 2015
http://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_about_folate_and_folic_acid-70348.html
葉酸塩」という用語はヒトの健康に必須の水溶性ビタミンを指す。このビタミンはヒトの体の多くの代謝過程で役割を果たすので、私達は食品から適量補充しなければならない。葉酸化合物は、緑キャベツ、ノジシャ、卵などの植物や動物由来の食品に天然に存在する。合成生産される葉酸は「葉酸塩」と呼ばれる。葉酸塩は食品サプリメントや食品の栄養強化に使用される。妊娠を望む、あるいは妊娠するかもしれない女性や妊娠中の初期3か月の女性は、子供の神経管欠損(二分脊椎)のリスクを減らすことができるので、葉酸の多い食事に加えて食品サプリメントの形の葉酸塩を取るよう助言される。
BfR葉酸塩と葉酸に関する以下の重要なFAQをまとめた。

葉酸塩folateとは?
葉酸塩はヒトの健康に必須の水溶性のビタミンの総称である。この名前は、ビタミンが最初に緑葉野菜に発見されたためラテン語の「folium」(葉)に由来する。食品は様々な異なる葉酸化合物(folates)を含む。

何故体は葉酸塩を必要とするのか?
食品と一緒に摂取した葉酸は体内で活性形のテトラヒドロ葉酸に変わる。この活性形では、葉酸は1つの炭素原子(C1 グループ)の分子構造の伝達者として多くの代謝過程に関与する。中でも葉酸はプリンやチミジル酸合成に必要とされ、従ってDNA合成に必要である。この機能のため、このビタミンは細胞分裂と成長過程には特に重要である。

葉酸folic acidとは?
人工的に作られたビタミン葉酸塩は「葉酸folic acid」と呼ばれる。葉酸は食品サプリメント、強化食品、あるいは医薬品に利用されている。

葉酸相当量とは?
食品由来葉酸と合成葉酸は異なる率で体内で活性物質「テトラヒドロ葉酸」の形に変換される。光、熱、酸素への感受性における違いもある。これはヒトの体は合成葉酸を利用できるのと同じようには食品中葉酸を利用できないことを意味する。生物学的利用能のこれらの違いを考慮して、合成葉酸葉酸の濃度は葉酸相当量として明記されている。
1マイクログラム葉酸当量は食事葉酸の1マイクログラムあるいは合成葉酸の0.5マイクログラム(空の胃に入れた時)または葉酸0.6マイクログラム(他の食品と一緒に摂取した時)に相当する。

葉酸は天然にどの食品に存在している?
葉酸は動物と植物由来食品に天然に存在する。ホウレンソウなどの葉菜類、ある種のキャベツや各種フルーツ、豆類と全粒穀物シリアル製品、卵黄、肝臓は葉酸の良い摂取源である。小麦胚芽、ダイズは特に葉酸が豊富である。
葉酸は水溶性で光と熱に敏感なことに注意するべきである。そのため食品の調理や保管中に損失が生じることがある。葉酸の損失を最小限にするために食品は丁寧に準備するべきである。

人が摂取するべき合成葉酸葉酸当量はどのくらい?
ドイツ栄養協会(DGE)は葉酸当量の年齢別基準値を定義し、成人や青年と13歳以上の子供の一日の摂取量に300マイクログラムを推奨する。妊婦と授乳中の女性はより多くの量を必要とし、推奨摂取量は一日当たりそれぞれ550と450マイクログラムである。
葉酸当量の食事からの推奨摂取量に加え、妊娠を希望する、あるいは妊娠する可能性のある女性は一日当たり400マイクログラムの合成葉酸を補給するサプリメントをとるべきである。それにより先天性欠損症(神経管欠損)のリスクを減らすことができる。摂取は少なくとも妊娠の4週間前から開始し、妊娠初期3か月の終わりまで続けるべきである。
DGEは年齢別摂取推奨量の詳しい概要を発表した。
http://www.dge.de/wissenschaft/referenzwerte/folat/

なぜ女性は妊娠前や妊娠の初期3か月間に葉酸を補うよう助言されるのか?
妊婦の葉酸の摂取は先天性奇形(神経管欠損)のリスクを減らせると研究は示している。女性は少なくとも妊娠する4週間前から葉酸サプリメントを取り始め、初期3か月が終わるまで取り続けるべきである。
ドイツでは最大50%の妊婦が計画妊娠ではないので、葉酸を取り始める正しい時期を選ぶのは特に難しい。出産可能な年齢の女性はそれゆえ葉酸の豊富な食事を選び、正しく葉酸の補給を確保するためにいつも気を配るべきである。
神経管欠損の子供をすでに生んでいたり、この種の欠損により中絶した女性の場合、将来神経管欠損のリスクは特に高い。このような女性が別の子供をほしいと望む場合は医者に相談するべきである。

女性はなぜ妊婦になる前に葉酸を取り始めるべきなのか?

中枢神経系(脳と脊髄)が発達するもとになる神経管は妊娠初期4週間の間に形成される、言い換えれば多くの女性が妊娠したことをまだ知らない段階である。神経管の完全な閉鎖は通常妊娠4週目の終わりに向けて起こる。この閉鎖が行われなかったり部分的だけだと、これが「神経管欠損」と呼ばれる。最もよく知られているこの種の欠損は二分脊椎である。
ドイツでは神経管欠損は妊娠1000件ごとに1〜2件生じると推測されている。これには多くの原因がある。だが研究が示すように、神経管の閉鎖の重要な局面の前や途中で葉酸を摂取するとそのリスクを減らすことができる。神経管が閉じるときまでに効果的な葉酸濃度を確保するために、女性は妊娠する前4週間当たりから葉酸サプリメントを摂り始めるべきである。

食事からドイツ栄養協会が推奨する葉酸量を摂取することは可能か?
通常ドイツ栄養協会が推奨する葉酸量は、たくさんの野菜、豆類、全粒粉製品を含むバランスのとれた様々な食品により補給できている。妊娠・授乳中に推奨される増加量(一日当たり550または450マイクログラム)は適切な食事でもカバーできるが、その時には葉酸の特に豊富な食品を注意深く選ぶことが必要である。

次の概要では選んだ食品の通常の消費量から摂取できる葉酸量を表にした。(出典:Souci-Fachmann-Kraut, 2013):
緑のキャベツ(調理済み、150g) 147 µg
コムギふすま(調理済み、40 g) 78 µg
マーシュ(50 g) 73 µg
レンズマメのシチュー(720 g) 72 µg
煎ったピーナッツ(50 g) 63 µg
ブロッコリー(蒸したもの、100 g) 39 µg
鶏卵(卵1個、60 g) 35 µg
オレンジ(150 g) 33 µg
固いチーズ(30 g) 32 µg
コムギパンとライムギパンの混合(50 g) 17 µg

ドイツ人は適切に葉酸を摂取しているか?
全国栄養調査II (NVS II)のデータによると、ドイツ人の成人の50%以上が300マイクログラム葉酸当量の推奨一日摂取量に達していない。
だが、食品摂取に関するデータは、人々の葉酸の現状に関して信頼できるものではないことに注意するべきである。問題の一つは、栄養強化された食品の摂取と食品サプリメントの使用が調査では確実に記述されておらず、実際の摂取量が過小評価された結果となっていることである。
リンパ液や赤血球葉酸のようなバイオマーカーは葉酸の状態を評価するための良い指標である。1998年のドイツ健康聞き取り調査では、特に妊娠可能年齢の女性のこれらの指標が測定された。女性は推奨摂取量に達していなくても、バイオマーカーの分析では「不十分」だと分類されるのは5%未満であることをこの研究は示した。ドイツの成人と子供の葉酸状態に関する入手可能なデータは現在のところない。

葉酸状態を改善するために葉酸サプリメントの使用や葉酸強化食品を食べることは賢明か?
一般人に対しては不足の根拠がある場合にのみ、葉酸サプリメントの摂取が推奨される。適切な摂取量を超えた葉酸サプリメントの恩恵には科学的証拠はない。しかし、妊娠したい、あるいは妊娠するかもしれない女性は少なくとも前4週間から妊娠初期3か月の終わりまでの期間中葉酸サプリメント(一日当たり400マイクログラム)を使用するよう助言する。
朝食用シリアル、乳製品、塩、ソフトドリンクなど、葉酸を強化した多くの食品がドイツで市販されている。ある場合には、これらの食品は適切な葉酸状態の保証に向けて十分である。たとえば2g(ティースプーン半分)の葉酸強化食塩は200マイクログラムの葉酸を提供する。これは葉酸当量の340マイクログラムに相当する―ドイツ栄養協会が成人に推奨する300マイクログラムの一日摂取量を上回る量である。だが、食習慣とある種の食品を選ぶ理由は広く異なる。栄養強化された食品はそのため人々の葉酸と合成葉酸相当の摂取の制御されない増加につながる。これらの製品は従って葉酸供給を改善する効果的な手段としてふさわしくない。

葉酸欠乏の健康に関する影響は?
慢性の葉酸不足は巨赤目球性貧血につながる可能性がある。さらに、DNA合成におけるこのビタミンの重要性は細胞分裂に悪影響する可能性があることを意味し、これは特に骨髄と消化管の急速に分裂する細胞に悪影響の可能性がある。
妊娠中に葉酸の供給が不十分だと、まだ生まれない子供の健康と発達に関してマイナス効果を持つ可能性がある。

合成葉酸葉酸の大量摂取は健康にどのような影響があるか?
通常の食事からの合成葉酸の摂取による望まない影響は今日まで観察されていない。また、妊娠前や妊娠中に一日当たり400マイクログラムの葉酸推奨量は女性に安全だと現在の情報は示している。もしも葉酸の摂取量が1000マイクログラムを超過したら、ビタミンB12不足が原因で起こる神経系の変化を隠す。その結果として、欧州食品安全機関(EFSA)は成人に1000マイクログラムの安全な摂取量上限(UL)を、子どもには適切に低い摂取量を定めた。ビタミンB12不足は、とりわけ食品からビタミンB12を効果的に吸収できない老人と菜食主義者に見られる。絶えずULを超える葉酸摂取は健康上の望まない影響のリスクを増す。

BfRの助言は?
BfRは全ての消費者に天然の葉酸が豊富な食事をとることを推奨する。葉酸の豊富な食事は特に妊娠中と授乳中の女性に重要である。
BfRは子供を作りたいと願う女性と妊娠初期3か月の女性は葉酸サプリメントを使用するべきだと推奨する(一日当たり400マイクログラム)。医者、助産婦、薬剤師は、葉酸の影響に関する的を絞った情報と助言を提供するべきである。