食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 母親の食生活の良さが出生時の赤ちゃんの心臓の異常リスクの低さと関連する

Better maternal diet linked to lower risk of heart abnormalities in babies at birth
24-Aug-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-08/b-bmd082015.php
Archives of Disease in Childhood (Fetal & Neonatal Edition)に発表された研究によると妊娠前の比較的健康な食生活が赤ちゃんのある種の心臓の異常率の低さと関連する。
全国先天異常予防研究の参加者約19000人についてのデータを用いた研究。

  • 「母乳を与えられている子どもは有害化合物の濃度が高い」への反応

Sense about science
Response to "Breastfed children have higher level of toxic chemicals"
24 August 2015
http://www.senseaboutscience.org/resources.php/210/response-to-quotbreastfed-children-have-higher-level-of-toxic-chemicalsquot
Daily Mail、The TimesHuffington Postの8月21日の記事が母乳を与えている時期に過フッ素化化合物(PFCs)が母親から子どもに移行することを発見した研究について報道した。しかしながら我々はこの研究からは西洋風の食事をしている国々の乳児にリスクがあるかどうかを語ることはできない。なぜならばこの研究は特にPFC濃度の高い食生活の集団を調べていて実際の母乳中PFC濃度が記載されていないからである。
エジンバラ大学男性生殖健康グループ長Richard Sharpe教授
この論文の報道のしかたで残念なことは、対象集団が多分「最悪事例」であることに言及していないことだ。この研究の対象はゴンドウイルカを食べるファロー諸島で、この研究の著者自身が先にゴンドウイルカにPFCが多いことを報告している。従って他の集団には直接あてはまらないだろう。しかしながらこの研究の基本である、母乳に含まれる化合物が授乳により乳児に移行するということは良くわかっている。研究そのものについての残念なことは実際の母乳中PFC濃度が記載されておらずそのため他の一般的集団と比較できないことである。

  • あなたの母乳はどれだけ有毒か?

How Toxic Is Your Breastmilk?
Tara Haelle ,Aug 21, 2015
http://www.forbes.com/sites/tarahaelle/2015/08/21/how-toxic-is-your-breastmilk/
一部の人たちが信じていることとは違って、母乳はピュアな、それを飲めば永遠の命と富と健康を得られる大地の女神の魔法の血清などではない。それは一角獣の乳で、存在しない。そして新しい研究は母乳があなたの身体にあるたくさんの有害化学物質を赤ちゃんに渡すと主張したいようだ。あなたは母乳を早く止めるべきなのか?逆方向に行くべきなのか?両方の誇張と、その研究が実際発見したことを吟味してみよう。
母乳のメリットは、私も子ども達に母乳を与えたが−誇張されることが希ではない。もちろん母乳には赤ちゃんに必要な栄養があるし集団レベルでは乳児の耳の感染を減らしたり母親の乳がん発症率を下げるなど否定できないメリットがある。しかし個人レベルでは、未熟児などの特定集団を除き、母乳を与えたからといってあなたの子どもが市販のミルクを与えられた赤ちゃんより賢くなったり健康になったり痩せたり太ったりすることを保証するものではない。個人レベルで定量できるメリットは抗体を赤ちゃんに与えることで、多分それが感染症削減理由であろう。しかし皮肉なことにそれが母乳に含まれる化合物による脅威となる。過フッ素化アルキル化化合物(PFASs)についての新しい研究が母乳を与えるなと主張する。しかしそれが話の全てではない。
製造業者は撥水加工の衣服や食品包装容器、塗料、潤滑剤などに半世紀以上PFASを使用してきた。これらの化合物は撥水や妨汚効果を与える。しかしなんらかの形で生活を良くするための多くの化合物がそうであるように、これらは環境や人体に長く留まり無数の健康影響との関連が疑われている。この研究の主著者であるハーバード公衆衛生大学院のPhillippe Grandjean環境健康教授は、「最も重要なことは最近血中PFOAやPFOS濃度の高い子どもはワクチンへの反応が良くないことがわかったことである」と書く。「ワクチンによる病気予防効果がなくなるリスクがある」と。ちょっと待って、じゃあ母乳を与えると子どもの免疫機能に悪影響があるの?Grandjeanが主張するのはそういうことだしかしこの論文が引用しているのはたった一つの研究で、それは彼自身の研究でその雑誌に批判の文書が投稿されている。WHOやCDCや小児科学会などは全て赤ちゃんには6ヶ月間母乳のみを与え最大1-2年まで与えることを薦めている。しかしGrandjeanは母乳のメリットは最初の3ヶ月までしかないと主張する。そして3ヶ月以降はミルクを与えることを薦め、WHOやCDCに母乳に関する助言を変えるよう希望している。有害物質を母乳に含ませて次世代の健康を危険に晒すのは愚かなことである、という。
何だって?ではその背景を見てみよう。最初にGrandjeanらは何を実際に発見したのか?血中PFASが母乳を与えることで月20%から30%増えることである。ミルクを与えられている子どものPFAS濃度は少なく、そして母乳を与えられている子どもが離乳すると濃度が下がる。そしてこの研究は小規模で地理的に限定されたものである。ファロー諸島に住む81人の子どもで11ヶ月、18ヶ月、5才の時点で血中PFAS濃度を調べている。
アーカンソー子ども病院の臨床薬理学者Henry Farrar博士は「これは特定の食生活をしていて母乳PFAS濃度の高い特定の女性達での研究である」という。他の地域に住む女性達にあてはまるとは限らない。「しかし母乳のメリットを上回るかどうかについてはさらなる研究が必要である」。
さらにPFASの健康影響についてのデータは希薄で一貫していない。リスクはあったとしても小さいようだ。Grandjeanは無数の懸念事項を挙げているがヒトでの疫学研究では工場労働者のような最も高濃度暴露群でも小さな一貫しない影響しか観察されていない。そして米国人の95%以上の血液からPFASは検出される。この小規模研究を根拠に世界中の女性が3ヶ月で母乳を止めるべきだと主張するのは大げさなように思える。
実際の教訓は、赤ちゃんの栄養には完璧な「正しい」方法はない、ということだろう。母乳だろうがミルクだろうが利点も欠点もある。研究は必要だろうが世界中の赤ちゃんは母乳でもミルクでも幸福で生産的な生活を送っている。だからそのまま赤ちゃんに栄養を与え続けよう。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20150821#p6の件。ダイオキシン騒動の時にも3ヶ月で授乳中止を主張している人がいたけど。)

  • 食品の包装表面の表示:役にたつか誇大宣伝か?

Front-of-Pack Food Labels: Help or Hype?
by Berkeley Wellness | August 24, 2015
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/nutrition/article/nutrition-label-or-marketing-hype
いわゆる包装表面の表示(FOP)がますますたくさんの食品に表示されている。食料品製造業者協会のFacts Up Front、全粒穀物評議会の全粒穀物スタンプWhole Grain Stamp、米国心臓協会のハートチェックマークなど多くの団体や企業が食品のカロリーや特定の栄養素などを表示し各種シンボルやロゴやスコアなどを表示している。しかしそのようなマークのある食品があなたにとってより良いものだとみなさないように。1万以上の食品を調べたAppetiteに発表された研究によると、むしろそれらは単なるマーケティングのための小道具である。
評価した食品の約18%にFOPがあったがそれらが一様に表示のないものよりカロリーや飽和死亡、ナトリウム、糖が少ないということはなかった。一部のものは制限すべき栄養素が多かった。従って「似たような製品を比較したときに、FOPマークのある製品を選ぶことが疾患リスク削減のための食生活を保証しない」、と研究者らは書いている。例えばカロリーや糖が少ないFOP表示のあるものは飽和脂肪やナトリウムが多いかもしれない。
問題は多数のFOP表示があるが標準ガイドラインがないことである。FDAは虚偽または誤解を招くFOP表示をしている17食品企業に警告文書を出しているがFDAの独自システム開発の努力も行き詰まっているようだ。FDAのウェブサイトには食品企業のFOPのためのガイドラインを「間もなく」提案すると書いている。
基本:FDAがさらなる対応をとるまで、FOP表示には「ハロー効果」があることに注意しよう。包装表面の表示だけではなく、裏面の栄養成分表示と成分リストの完全な情報を読もう。

  • オーガニック食品のリコールが2013年以降700%増加

Organic Food Recalls Up 700 Percent Since 2013
By Hank Campbell | August 22nd 2015
http://www.science20.com/science_20/organic_food_recalls_up_700_percent_since_2013-156919
もしも巨大農業ビジネスのロビイストがUSDAの内部に特別部署を作って、そこで彼らがどの添加物を認めるかどうかや誰が表示をチェックできるかを決めてそれらの製品に特別な「健康ハロー」を宣伝するとしたらほとんどの人は反対するだろう。しかし巨大オーガニック産業は反対しない。それが全国オーガニック基準委員会が実際に行っていることである。だからこそオーガニック食品には品質保証はないしオーガニック農法が実際にそのとおり行われているかどうかを確認することもない。オーガニック食品ロビイストの活動によりUSDAはオーガニック表示の監視をせず、特別な書類を出すだけで大きな利幅が得られる。
私は利益マージンだけならどうしてより多くの農家がオーガニックにしないのか訝しく思っていた。ただ書類を書いて農薬を他のものに代えて、高いマージンで失った収量を埋め合わせるだけのことだ。しかしオーガニック農業でリコールが増えたことについては当然だと思う。なぜならば巨大オーガニック産業は普通の農作物並みの検査をしたくないから。
USDAとFDAのデータから今年これまでにリコールされた全ての食品のうちオーガニック製品が7%であることが示されている。2013年は1%だった。サルモネラ、リステリア、A型肝炎は別にオーガニック農産物に限ったことではなくよく見られる。肥料として堆肥を使い、騙されやすい消費者が農薬を使っていないのだから洗わなくていいと考えるとき、彼らは糞を食べることになる。科学に反対するキャンペーンを行っているオーガニック消費者団体ではなく、オーガニック生産者団体は、USDAの監視を阻止するために動いている。
(化学物質だと天然の植物やカビの毒汚染はもともとオーガニックのほうが多い。増えてるかどうかはわからない。)

  • 薬物関連死の流行の背景にある鎮痛薬の処方過剰について「弱い」医師が非難される

‘Weak’ doctors blamed for flood of prescription painkillers behind epidemic of drug-related deaths
Sharon Kirkey | August 24, 2015
http://news.nationalpost.com/news/weak-willed-doctors-blamed-for-flood-of-prescription-painkillers-behind-epidemic-of-drug-related-deaths
カナダ医師会総会で医師会長Douglas Grant博士が、オキシコドンのような麻薬性鎮痛剤を患者に要求されるがままに処方している「弱い」医師が薬物関連死の流行の背景にあるとして批判した。悪意のある悪い医者がわかった上でやっているとは思わない、そういう医者はいたとしても少数だろう、ともいう。善意で、しかし意志が弱く情報の足りない、患者と医師の関係をコントロールできない医師がしばしば過剰処方している、という。カナダは世界で最も多くオピオイドを処方している国の一つである。我々は今や自動車より多くオピオイドで人々を殺している。
(医者は患者の希望に従わないと批判され従っても批判されるのはどこでも同じ)

  • 医療用大麻売店は合法であるが規制される

Medical Marijuana Shops To Be Regulated Despite Legality
Charissa EchavezAug 24, 2015
http://www.sciencetimes.com/articles/7162/20150824/medical-marijuana-shops-regulated-despite-legality.htm
カナダの各都市が医療用大麻の規制と認可についてもめている。たくさんの店舗が大麻を販売しているが警察にはたくさんの通報が寄せられている。通報内容は未成年者への販売や犯罪との関連などである。
現在ヘルスカナダが認めた公的大麻生産業者は25で、医師が処方した合法的患者に売ることができる。しかし実際には80%がレクリエーション目的で購入しているとされる。そしてますます多くの店が違法販売をするようになってきた。