食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

  • 女性は心臓発作を予防するためにビールを飲むべきか?

Sense about science usa
Should women drink beer to prevent heart attacks?
by Rebecca Goldin | Sep 28, 2015
http://www.senseaboutscienceusa.org/should-women-drink-beer-to-prevent-heart-attacks/
新しいスウェーデンの研究が女性の適度な飲酒には幾分かのメリットがあり大量飲酒には健康への悪影響があることを発見した。これまでの多くの研究が示唆してきたとおり。しかしDaily Mailはまるで全く違う研究を読んだかのような、ビールを飲むことを薦める見出しを掲げた。「何故女性はビールを飲むべきか:週に2パイントのビールは心臓発作のリスクを1/3減らす」。おまけに「悪いニュース」として「スピリッツを飲むことはがんリスクが50%高いことと関連することも発見した」という警告も一緒だった。
実際の研究ははるかに微妙なものである。この研究は1968年から69年に38-60才だった1462人の女性の32年間のデータによるもので、彼女らの飲酒習慣と主な健康指標を評価した。もし死亡した場合には死因も記録している。得られたデータは多くの比較ができる。Scandinavian Journal of Primary Health Careに発表された研究では、飲酒する女性と飲まない女性についてたくさんの指標を比較している:心臓発作、脳卒中、がん、そしてそれらによる死亡。それから飲んだアルコールの種類(ワイン、ビール、スピリッツ)とそれらを飲まない人との比較。
新聞の見出しからは女性がビールを飲めば心臓発作リスクを減らせると読める。確かにこの研究ではビールをほどほどに飲む女性の心臓発作リスクはハザード比で0.70と低下している。しかしこれは関連を示すもので因果関係を示すものではない。さらにメディアは特定の好みに合う相関のみを選択的に伝えて他を無視している。Daily Mailはビールに注目したがスピリッツを飲む人でも心臓発作は少なかったし脳卒中はワインを飲む人が少なかった。がんによる死亡はスピリッツで多かったが糖尿病による死亡はスピリッツで少ない。しかし全死亡だとスピリッツに有意差はない。一つのモデルではビールを飲む人の総死亡率はビールを飲まない人より少なかったが社会経済状態や教育などの交絡要因を調整すると有意差はなくなった。
つまりどういうことだろう?このたった一つの研究にたくさんの注意点がある。著者が結論で言っているように、「女性にビールを飲むように勧めるのは時期尚早である。」しかしDaily Mailは結論を読まずに、いつものように、そのように主張した。

  • カルシウムと骨の健康−専門家の反応

SMC NZ
Calcium and bone health – Expert reaction
October 1st, 2015.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2015/10/01/calcium-and-bone-health-expert-reaction/
カルシウムはあなたの骨を強くする、本当?新しいニュージーランドの研究によると違う。
オークランド大学の研究者らが食事やサプリメントでカルシウムの摂取量を増やすことは骨折や骨粗鬆症予防のためとしては薦めるべきではない、という。彼らは高齢者の骨の健康を増進するためのカルシウムの役割についての発表された根拠を検討した2つの研究を行ってBMJに発表した。
SMCは以下の専門家のコメントを集めた。
カンタベリー地方保健委員会専門家相談員Nigel Gilchrist博士
これらの知見は驚くべきことではない。エディトリアルではこの問題をよく説明している。
基本は、カルシウムは骨粗鬆症治療や骨折予防治療法ではないということである。骨粗鬆症による骨折リスクの高い患者に使用すべき非常によい医薬品がある。
オタゴ大学人栄養学部PhD候補者で登録栄養士Sue MacDonell
オーストラリアとニュージーランドのカルシウムの所要量はカルシウムバランスを維持する量に設定されている。高齢者ではカルシウムの吸収が減り損失が増えるという幾分かの根拠があるので高齢者のカルシウム所要量が多くなっている。この高い量は骨のカルシウム貯蔵の減少を最小化するためのものである。
最新の論文は、高齢者の骨折予防や骨ミネラル密度改善の目的でカルシウムサプリメントを処方すべきではないことを明確に示している。しかしながらカルシウムは人体にとって重要な役割があり、個人の必要に応じてのみ処方されるべきである。高齢者が、特に乳製品を定期的に摂らない場合には所要量を満たすのは難しい。足りないヒトにはカルシウムサプリメントを薦め続ける。
Massey大学食品栄養ヒト健康研究所上級講師Carol Wham博士
この知見は多様な人からなる高齢者のカルシウムの必要性が十分わかっていないことを強調する。高齢者にとって最良の結果を得るための食事についてはさらに情報が必要である。

  • 腸内細菌が子どもの喘息を予想できる

Scienceニュース
Gut bacteria could predict asthma in kids
By Sarah C. P. Williams 30 September 2015
http://news.sciencemag.org/biology/2015/09/gut-bacteria-could-predict-asthma-kids
カナダ健康乳児縦断発達(CHILD)研究の一環として300人以上の赤ちゃんの3ヶ月と1才時点での尿と便検体と1、3、5才での健康状態についての情報を集めた。
3ヶ月の時の便に4種の細菌Lachnospira, Veillonella, Faecalibacterium, および Rothiaが少ないと1才の時の喘息の初期兆候(喘鳴と皮膚のアレルギー)を示すことがわかった。

  • 搾取的出版社が昨年7500万ドルを稼いだ、研究が発見

ScienceInsider
Predatory publishers earned $75 million last year, study finds
By John Bohannon 30 September 2015
http://news.sciencemag.org/education/2015/09/predatory-publishers-earned-75-million-last-year-study-finds
あなたの研究結果を発表する必要があって、ピアレビューの指摘や編集者からの品質管理の要求に苦しめられたくないなら、良い方法がある。何千という雑誌がお金を払えばそれを出版してくれる。
新しい研究はそのニセジャーナルビジネスが盛んであることを発見した。BMJ Medicineに本日オンライン発表された報告によるといわゆる搾取的出版社は昨年だけで約50万の論文を発表し7500万ドルを稼いだ。この研究を行ったヘルシンキのHanken School of EconomicsのCenyu Chenによると「データを集めるのに半年以上かかった。」学部学生にも手伝ってもらってチームは数百という信用のできない雑誌のウェブサイトを探ってデータを集めた。ここ何年もこの問題を指摘してリストを作っているコロラド大学の司書Jeffrey Beallのリストをもとに、単純な数で、2014年9月の時点で1030の出版社がありそのうち416社は一種類の雑誌しか出していないが、雑誌のタイトルは11873だった。そしてこれらが2014年には約42万の論文を発表し平均価格は178ドルであった。多くの出版社はアジアの途上国にありインドが27%をしめる。そして著者の35%はインドで75%がアジアまたはアフリカである。

  • 健康的に減量するための18の鍵

18 Keys to Healthy Weight Loss
by Berkeley Wellness | September 29, 2015
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/diet-weight-loss/article/18-keys-healthy-weight-loss
流行のダイエット法に振り回されるのではなく根拠のある方法を実践しよう
1.健康的食生活で始める
2.一回分の量に注意
3.ながら食べをしない
4.ゆっくり良く噛んで食べる
5.意志の力をあてにしない、環境を整える(家やオフィスにスナックを常備しない)
6.食べ過ぎのきっかけを同定する(怒りやストレスなどの情動)
7.単位重量当たりのカロリーの少ないものでボリュームを増やす
8.適切なタンパク質を摂る
9.定期的に食べる、おやつは低カロリーのものを選ぶ
10.一度にたくさんの種類を食べない
11.飲料からカロリーを摂らない
12.料理する
13.外食の時はメニューのカロリー表示を見る
14.あまり厳密にしない、たまには摂取カロリーの範囲内でのお菓子も大丈夫
15.食事記録をつける
16.十分睡眠
17.定期的に体重を計る
18.現実的な目標を設定する
これに別枠として、あなたにとって正しい食事法とは(全てのヒトに単一の正しい食事法があるわけではない)、あなたの一日のカロリーを計算(年齢や運動量や目標体重別)、運動、減量用ダイエタリーサプリメントは使わないこと、が加わる。

  • 栄養:炭酸飲料の支配

Nature書評
Nutrition: Dominions of fizz
David Katz
Nature 526, 34–35 (01 October 2015)
http://www.nature.com/nature/journal/v526/n7571/full/526034a.html
Marion NestleによるSoda Politics: Taking on Big Soda (and Winning)の書評
ニューヨーク大学の食品と公衆衛生の教授であるMarion Nestleは米国の食品政策に大きな影響を与えている第一人者である。彼女が炭酸飲料業界が如何にしてタバコ企業のように政策に影響を与えてアメリカ人の健康を損なってきたのかを書いたのがこの本。
(David Katz(評者)は賞賛しているけれどコーラに含まれるカラメル色素の副生成物である4-メチルイミダゾールが発がん性があることを企業の圧力で認めないなんていう主張は陰謀論にすぎる。Marion Nestleアメリカ人が太るのは食品企業のせいだと言うのだが日本や韓国にはあてはまらないことは無視されている。飲料自動販売機の数なら多分日本のほうがはるかに多いのに、何故アメリカ人はそんなにたくさん砂糖入りの炭酸飲料を飲むのだろう?)

  • 科学は影響に備えなければならない

Natureコラム
Science must prepare for impact
30 September 2015
http://www.nature.com/news/science-must-prepare-for-impact-1.18459
一般からの支持を維持するには、研究者らは急速に変化する社会や政治の需要に適応できなければならない、とGuy Poppy(FSAの主任科学アドバイザーを努めた)が警告する
ほとんどの大学では科学的成功は引用が多い論文をたくさん書き研究費を多く獲得することで評価されていてポスドクから終身雇用の地位を得る直線的キャリアパスを薦めている。このプロセスの問題点はPhDが多すぎてアカデミアに職を見つけられないことだとされて注目されている。しかしアカデミックの仕事を続けている人たちに影響する二つ目の問題にも注目すべきである。この直線的キャリアは政策決定者や企業の必要性、社会からの要請に影響するような成果をあげたくないあるいはできない科学者を次々に産みだしている。

  • 遺伝子編集「マイクロブタ」がペットとして中国の機関で売られる

Natureニュース
Gene-edited 'micropigs' to be sold as pets at Chinese institute
David Cyranoski 29 September 2015
http://www.nature.com/news/gene-edited-micropigs-to-be-sold-as-pets-at-chinese-institute-1.18448?WT.mc_id=SFB_NNEWS_1508_RHBox
最新の遺伝子編集技術は思いがけない副産物を産んだ−中国シンセンのゲノム配列決定で有名な機関BGIが小さなブタを作ってペットとしてまもなく売りだす。
9月23日にシンセン国際バイオテックリーダーズサミットでBGIが発表した。大人になっても15kgの大きさのブタで、値段は1万元。
一部の研究者は次はイヌやネコであろうと予想する。遺伝子編集は交配とそれほど変わらず、単に効率を良くしただけであるがそれを実施するのが良い考えだとは思わない科学者もいる。

  • カリフォルニアの農業は干ばつを乗り越える−お金をかけて

California agriculture weathers drought — at a cost
Erika Check Hayden 30 September 2015
http://www.nature.com/news/california-agriculture-weathers-drought-at-a-cost-1.18457
エルニーニョで少し和らぐかもしれないが、より長く深刻な干ばつが予想されている
2015水年度のカリフォルニアの降水量は極めて少なかったが、農業収入は2013年より1.45少ないだけに止まった。しかしこれには相当なコストがかかっている。農家は大量の地下水をくみ上げた。これは続けることはできない。NASAの報告によると地下水のくみ上げにより1年以内で33センチ土地が沈んだ。一部の井戸水に頼っている家庭では水がなかった。干ばつは何十年も続く可能性があり、水のリサイクルや水を使わない農業、さらに海水の脱塩などの技術開発が行われている
(持続不可能なカリフォルニアの「オーガニック」農業。変わる世界の中で変わらないことを良しとする価値観が何を意味するのかくらい考えればいいのに)

  • ヒトゲノムプロジェクト:ビッグバイオロジーの25年

Human Genome Project: Twenty-five years of big biology
Eric D. Green, James D. Watson & Francis S. Collins
30 September 2015
http://www.nature.com/news/human-genome-project-twenty-five-years-of-big-biology-1.18436
ヒトゲノムプロジェクトは四半世紀前の今週始められた。その教訓。
エディトリアル
Variety of life
http://www.nature.com/news/variety-of-life-1.18454
配列決定とデータの蓄積は拡大し進むが、最終目的はこのデータの洪水をどう個人の健康に役立つものにするのか、である。