食品安全情報blog過去記事

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SMC

  • 全国肥満フォーラムに発表された食事についての新しい報告に対する専門家の反応

expert reaction to new report on diet as published by the national obesity forum
May 22, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-new-report-on-diet-as-published-by-the-national-obesity-forum/
Reading大学栄養科学者Gunter Kuhnle博士
どんな公衆衛生政策でも、どんな助言でもしっかりした科学的根拠に基づき広範な影響を考慮する必要がある。この件についてはそうではないようだ。
カロリーの主な摂取源を脂肪にすることの長期影響については極めて限られた根拠しかない。長期試験は非常に少なく、それらは炭水化物を脂肪に代えても主張するほどのメリットは示唆されていない。超低炭水化物食を一般人に勧めることの影響を調べた研究はない。公衆衛生上危険な可能性すらある。
科学コミュニティの中でコンセンサスが得られていないものを事実として提示された。そうすることで消費者は混乱し議論がより困難になる。長期的には公衆衛生上有害影響がある可能性があり「助言疲れ」を導く。肥満と2型糖尿病は大きな課題でその予防や治療方法を見つけるのは重要である。より根拠に基づいた栄養助言を求める。
Oxford大学食事と集団の健康教授Susan Jebb教授
研究方法について
飽和脂肪と心疾患について
糖尿病について
減量について
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
この報告は集団に向けた食事ガイドラインと肥満や糖尿病の臨床管理をごっちゃにしている。この報告書は肥満の原因が食事ガイドラインのせいだと間違って主張している。報告書だけでなくプレスリリースも一般人を誤解させる有害な可能性がある。例えば脂肪を食べても太らない、など。(長い指摘略)
英国心臓財団医務副部長Mike Knapton博士
この報告書は意見やアイディアがいっぱいだが根拠とはならない。この国の肥満は食事ガイドラインのせいではない。心疾患の要因は複数有り食事やライフスタイルについての助言は全体への影響を考えるべきだ。単一の食品や栄養素、あるいはリスク要因だけに集中するのは思慮が浅い。
Robert Gordon大学肥満研究と疫学センター長Iain Broom教授
私はこのNOF とPublic Health Collaborationが合同で作った文書に、「ゼロシュガー」以外は合意する。果物には砂糖が含まれるので「添加された砂糖ゼロ」のほうがより適切だろう。米国で70年代後半に英国では1983年に食品政策が変更された時代に、飽和脂肪を減らすことが冠動脈心疾患を減らすという根拠はなかったがCHDと砂糖の関連を示す根拠はあった。英国の栄養学者John Yudkinが当時そのような砂糖や精製炭水化物にシフトする政策を変えようとしたが当時の権威であるAncel Keyesに笑いものにされた。栄養学の学生達が何十年もこの根拠のない脂肪がCHDと肥満の原因だという説を教えられた。だから我々は将来のためにこれらを否定する。スウェーデンやブラジルが「健康的な食事」助言の炭水化物量を下げている。スウェーデンは2013年にエネルギーの50%以上を炭水化物からとるようにとしていた助言を26-40%に引き下げた。
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
この報告書には良いところと悪いところとひどいところがある。
スウェーデンGothenburg大学神経内分泌教授Suzanne Dickson教授
これらのガイドラインの召せエージにはたくさんの誤解をまねくところがあり、健康を増進しない。炭水化物や砂糖を減らすのは良いかもしれないが脂肪の摂取量を減らすのが良いという根拠も同様にある。普通の肥満が特定のホルモンの過剰や不足のせいだという根拠はない。おやつが肥満の原因だというしっかりした根拠はない。しかしおやつがカロリーの摂取量に寄与するという根拠はある。摂取するカロリーが肥満に関係ないと示唆するのは誤解を招く。
(ニュース報道たくさん。日本も糖質制限ブームのようだしコメの消費量まだ減るだろう。FDAの表示の件も併せて、日本の農水主導の栄養指導は科学的根拠がないので。インチキ食育をやってるところは今後どうするのかな)

  • 低塩食についての世界的研究への専門家の反応

expert reaction to global study on low salt diets
May 20, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-global-study-on-low-salt-diets/
The Lancetに発表された研究で、高塩食は高血圧の人では心血管系イベントリスクの増加に関連するが正常血圧の集団では関連がないと報告された。
英国心臓財団上級栄養士Victoria Taylor
これは興味深い観察研究であるが減塩政策を変える助言をするにはさらなる研究で確認が必要。この研究での塩の摂取量測定はしっかりしているが他の食事情報は集めていない。他の要因を考慮するには塩だけでなく、血圧に影響する食事全体の情報が必要である
Warwick大学心血管医学疫学Cephalon教授でWHO栄養協力センター長Francesco Cappuccio教授
このような悪い科学がlancetに発表されるのを見るのは信じがたい。この論文は既に発表されているPURE, ONTARGET およびTRASCEND試験のデータを用いEpiDREAM研究のデータで「補った」データの再発表である。彼らに対してこれまで何度も注意された欠陥がそのままで批判が無視されている。彼らは早朝スポット尿のナトリウム濃度を用いて不適切なKawasaki方程式を用いて24時間排出量を推定するという間違った評価を含んでいて、最大の問題は既に死亡率の高い複数の医薬品を使用している病気の人の臨床試験からの因果関係の逆転がある。これらの何度も繰り返される間違いに、連続変数である血圧を正常血圧と高血圧に生物学的に意味のない分類をして解析を分けるというさらなる統計学的犯罪を重ねた。数年前にコクランレビューが同様の解析を行い、反証されて取り下げられた。サンプル数が大きくても欠点が同じなら間違いが大きくなるだけだ。
彼らのこれまでの研究に疑問を提示する論文は引用文献リストに引用されていないことは驚くべきことではないが、レビューワーやLancetの編集者がそれに気がつかないのは驚くべきことである。心血管系疾患を予防するために適切な減塩のための世界的対応を支持する根拠は強力で、こんな研究で減塩公衆衛生対応を転覆させるべきではない

Lancetの問題の論文
Associations of urinary sodium excretion with cardiovascular events in individuals with and without hypertension: a pooled analysis of data from four studies
Andrew Mente, et al.
doi:10.1016/S0140-6736(16)30467-6

コメント
塩−摂り過ぎか摂らなさすぎか
Salt—too much or too little?
Eoin O'Brien
doi:10.1016/S0140-6736(16)30510-4
(減塩への疑問が議論されているけれど、日本人の場合1日3g以下が良いか悪いかなんて議論はほぼ意味がない。「摂りすぎ」群ですら7gとか5gという話で、日本人の摂取量でいいなんて言ってる人は誰もいない。24時間尿中排泄量で推定した摂取量って1日10g以上だもの)