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ファストフードのフッ素化合物−リアルサイエンス、フェイクニュース
Fluorinated Chemicals In Fast Food - Real Science, Fake News
By Chuck Dinerstein — February 2, 2017
http://www.acsh.org/news/2017/02/02/fluorinated-chemicals-fast-food-real-science-fake-news-10808
CNNが「Silent Spring財団の研究が、検査したファストフードの包装の1/3からフッ素化合物を発見した。これまでの研究でポリフッ化アルキル化合物(PFAs)が食品包装からあなたの食べる食品に入ることがわかっている。どの種類の包装がリスクが大きい?」と報道した。
何のリスク?答えは二番目のパラグラフに暗示されている。「…これらパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は腎臓や精巣のがん、コレステロール濃度の増加、受精能の低下、甲状腺の障害とホルモン機能の変化、子どもの発達への有害影響と免疫応答の低下に関連することが報告されている」。しかしこのリスクは記事が指摘しているように「ほぼ使用が中止されている」ために即刻却下される。では何のリスク?つまり「あなたの食べる食品にPFASが移行する」ことだろう。
CNNはもとの研究にリンクしているので実際にその研究が何と言っているのかわかる。
・この研究はプロトン誘発性ガンマ線放出(PIGE)分光法を用いて食品包装の総フッ素含量を測定し、最も高濃度にPFASが含まれそうな検体を同定した
・ファストフード包装由来の暴露量とリスクを評価するのは困難である…なぜならほとんどのフッ素化合物の暴露量や毒性はよくわからないからである
・米国では2000年から2015年の間にほとんどのPFOSとPFOAの生産を中止した
・一般的にPFASの代用品のヒトでの半減期や健康影響についての情報はほとんどない。長鎖PFASの毒性についての文献は多く、暴露も広範である
・米国の食品と接触する紙やその他の包装にフッ素を含む化合物がよくみられる
・フッ化食品と接触する物質は環境中のPFASの由来でもある
この研究自体はフェアでバランスがとれている。しかしそれがメディアの手にかかると人目を引くように書き直される。これはニセのニュースではなく、誤解を招くものである。もしなんとなく読んだら、ファストフードの包装はあなたの健康に悪いと思うだろう。だからこそこのニュースが他の媒体にも取り上げられたのだろう。
Chicago Tribuneは「マクドナルドやバーガーキングなどは包装を「PFOAフリー」と宣伝してきた。しかしこれらのチェーン店から集めた検体からはフッ素が検出された、つまり企業がPFOA関連化合物を使っていることを示す」と報道する。
もとの論文にはマクドナルドともバーガーキングとも書いていないのでこの情報のソースは何だろう?
Washington Postは「研究者らがファストフードを避けるべきもう一つの理由を発見した、包装に含まれる化合物である」と始める。そして「パニックになる前に、包装に見つけたこととそれが健康に影響するかどうかを関連づけるのは難しい、とSchaiderは言う。PFASは複雑な化合物の分類で、この研究ではそれがどのくらい食品に移行するのかは調べていない。Schaiderは特定のブランド名を挙げることは拒否した、なぜならサンプルサイズが小さいから」と書く。
溶出については、この研究はデンマークEPAを参照する。その計算方法では、「溶出量は食品の種類、温度、水分、化合物の首里などによって異なる。ガイドラインでは溶出効率を100%としている、実際には10%以下であるため過剰推定だろう。また吸収率も100%と仮定していてこれもまた多くの場合過剰推定だろう」
つまりガイドライン値は10から100倍余裕がある。
この研究を報道する多くのメディアが警鐘を鳴らす見出しのわりに本文はそれほどでもない。CNNの記事は「これらの化合物の暴露を減らしたいなら、例えば包装から食品を早めに取り出すのがいいかもしれない」と結んでいる。
公正のために加えるともとの論文では食品の包装に化合物を見つけた、それが食品に移行する可能性があると言っているだけである。CNNはそれを歪めている。