食品安全情報blog過去記事

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異なる製法で燻製されたモッツァレラ・ディ・ブファーラ・カンパーナ(Mozzarella di Bufala Campana)チーズ中のベンゾ[ a]ピレン (BaP)レベルについて

Levels of Benzo[ a]pyrene (BaP) in "Mozzarella di Bufala Campana" Cheese Smoked According to Different Procedures
Anastasio A, et al.
J Agric Food Chem. 2004 Jul 14;52(14):4452-5.

EU加盟国間のチーズの原産地名称や品質を法的に保護する目的で定められた法律である原産地表示認定制度(PDO)で認定されているモッツァレラ・ディ・ブファーラ・カンパーナは水牛の乳から作られる由緒正しいモッツァレラチーズ
(フランスではチーズについてはAOCという規格のようです)
その燻製品に含まれる多環芳香族炭化水素ベンゾ[a]ピレン (BaP)の量を測定した、という文献です。BaPは古典的といっていい有名な発癌物質。多環芳香族炭化水素は加熱により生じるのでいろいろなものに含まれていますが、EUでの規制値は0.03 microg/kgです。
チーズの中心部〜外皮部に含まれるBaP量を測定したところ、燻製に使用した材料が麦わらの場合0.38〜2.12 microg/kg、厚紙の場合0.46〜2.40 microg/kg、経木の場合0.19〜0.80 microg/kg、燻液の場合0.18〜0.50 microg/kgだったということです。
いずれも規制値を大幅に超えていて、多いのは80倍にもなります。これではせっかくの規制値に意味がなくなってしまうので、伝統を守りながらも製法に改良が望まれる、ということです。

燻製品はホルムアルデヒドやBaPなど、多数の発癌物質を含むことが知られていますが、「伝統的製法」なだけに規制が難しいのです。食品添加物残留農薬に比べてはるかにリスクは高いのですが(それでもどうってことはないという)こういうものに対する注意喚起は難しいです。地域の産業振興も伝統を守ることも大事ですが、近代化も必要でしょう。