食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

中西先生の名誉毀損裁判について

(一回目の審議の様子についてはid:rnaさんが報告しているのでそちらを参照
http://d.hatena.ne.jp/rna/20050527

私がこの件に注目しているのは、情報を発信する立場の人間として看過できないと思うからです。

特に提訴理由

環境ホルモン問題は終わった」と考えておられるようであるが、これは大変な間違いである

私は食品の安全性関連の情報をできるだけわかりやすく、多くの方に使いやすい形で発信したいと思っています。現在のここの情報は一般の人向けには少しハードルが高いので、もっとわかりやすい形で「解説」できたらいいと思います。でも「解説」というのは「解釈」することです。

例えばかつて甘味料のサッカリンに発がん性があるのではないかということが問題になり、その後の研究でラットのオスに高用量投与した時の問題で、人ではおこらないということで「決着」しています。
この「決着」はしかるべき専門家の評価をうけたものではありますが、「世界中の科学者が一人残らず合意した」という意味ではありません。異論を唱える人は必ずいます。科学者といっても専門分野が違えば一般人と大して違わないことが多いし、資格試験や免許認定があるわけではないので、食品添加物の毒性問題に電気が専門の工学博士が異論を唱えることだってあります。まして一般の中には「食品添加物は発がん性がある」と信じて疑わない人もいますしそういう信条の民間団体もあります。そういう現状で「新規指定の添加物に発がん性の疑いのあるものはない」と書いたとします。それが気に入らない団体がどんどん訴訟をおこしたら?

今回の件では中西先生の勝敗が心配なのではありません。
「訴訟をおこされたら面倒だから、何も言わず、問題があっても関わりにならない方が賢い」と考える科学者や関係者が増えることが最も恐れることです。
「どこからも難癖のつけようのない完璧な情報しか提供してはいけない」などと言われたら、少なくとも私の所属する安全情報部としては致命的でしょう。
科学は日進月歩ですから、その時にベストと思われることしか言えません。
科学的な問題の「解釈」に異論があるならオープンに議論をすればいいと思いますし、それが周囲の理解を助けることもあるでしょう。普通の人は気に入らないから即訴えるなどということはあまりしないと思いますが、弁護士が事務局長をやっている市民団体なら、提訴手続きは簡単でしょう。
(今回の訴訟も原告は出てきておらず、弁護士一人で対応しているようですから。)
まして「考えておられるようであるが」という推定で訴訟をおこされるなんて、そんなことまで想定して情報提供が控えられなければならないというのでは誰の利益にもならないと思います。



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