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NTPとCERHRによる10月10-12日のDEHP再評価会合の要約

MEETING SUMMARY
NATIONAL TOXICOLOGY PROGRAM CENTER FOR THE EVALUATION OF RISKS TO HUMAN REPRODUCTION EXPERT PANEL RE-EVALUATION OF DEHP OCTOBER 10 12, 2005
October 14, 2005
http://cerhr.niehs.nih.gov/news/dehp/DEHPMtgSumm101405.pdf
米国毒性学計画NTPとヒト生殖リスク評価センターCERHRはフタル酸ジエチルヘキシルdi(2-ethylhexyl)phthalate (DEHP)の生殖及び発生毒性を再評価するための専門家委員会を招集した。1999-2000年にCERHRの専門家委員会はDEHPを評価したが、その後DEHPのヒト暴露や生殖毒性に関する約150の論文が発表された。そこでCERHRはDEHPが(1)広くヒト暴露がみられること(2)政府や一般の関心が高いこと(3)以前の評価の後で発表された論文が多いこと、から再評価を行うことを決定した。専門家会合は10月10-12日に開催された。
DEHP( CAS RN:117-81-7)はポリ塩化ビニルの可塑剤として使用される高生産量化学物質で、建材・車用品・衣料・食品包装容器・子ども用品(口に入れるおもちゃは除く)・医療器具など多数の製品に使用されている。
専門家委員会は独立した11人の科学者からなり、主に三つの分野(ヒト暴露・生殖毒性・発生毒性)の科学的根拠について評価した。


専門家委員会によるDEHP再評価の結論


○一般成人集団に対して
専門家委員会は一般の暴露が成人の生殖に有害影響を与える懸念は少ないminimal concern*と結論した。このレベルは医療によりDEHPやMEHP(DEHP代謝物、フタル酸モノエチルヘキシル)に暴露された場合でも変わらない。これは一般人のDEHP暴露量1-30 microg/kg体重/日との推定に基づく。この結論は最初の結論と同じである。


○健康な乳幼児に対して
暴露量が推定一般暴露量の最高用量レベルにある場合は、1才以上の男の子の生殖発生に有害影響のある何らかの懸念some concernがある。1才未満の乳児については懸念があるconcern。この結論は最初の評価での全乳幼児についての結論をより詳細にしたものである。


○重大な疾患のある乳児に対して
重大な疾患のある乳児での腸管経由の医療行為によるDEHP暴露は一般人の暴露量を数桁超える。最大DEHP/MEHP暴露量は6000 microg/kg/dayと推測される。こうした暴露は男性の生殖器官発生に悪影響を与える重大な懸念serious concernがある。委員会は医療行為による利益は大きいが、暴露量を減らすことが必要だと考える。この結論は最初の結論と同じである。


○妊娠及び授乳中のヒトに対して
一般成人暴露量推定1-30 microg/kg体重/日に基づいて、妊娠中に暴露された男の子への影響については何らかの懸念some concernがある。この結論は最初の結論に比べて暴露量推定と実験動物での影響がある量について信頼性が高くなったため、リスクレベルが低下している。さらに追加でDEHP暴露が起こりうる何らかの治療を受けている女性の男の胎児については懸念concernがある。

*懸念レベルについては以下の5段階
negligible concern 無視できる懸念
minimal concern 極わずかな懸念
some concern 何らかの懸念
concern 懸念
serious concern 重大な懸念

今後の予定
最終報告書はCERHRのサイトに掲載される。また印刷物は2005年11月に発行される。
CERHRはこの報告書に対するパブリックコメントの募集を官報で行う。このコメント募集が終了した後、CERHRはNTP-CERHRのDEHPモノグラフを作成する。モノグラフはウェブサイトから入手できるだろう。
(多分このへんにアップされるだろう
http://cerhr.niehs.nih.gov/reports/index.html



この報告書を伝えるScienceの記事
Volume 310, Issue 5747
委員会はフタル酸類が乳児の生殖系に有害だという証拠をみつけることはできなかった
TOXICOLOGY: Panel Finds No Proof That Phthalates Harm Infant Reproductive Systems (p. 422)
消費材中に存在するホルモン様化学物質が男の赤ちゃんの生殖系に影響するという広く一般化した研究に冷や水を浴びせた。ヒトで有害影響があるという確実な根拠はなかった。
注 Environmental Health Perspectives 8月号に発表された Shanna Swanらによる男児の肛門生殖器間距離(AGD)についての研究が、ウォールストリートジャーナルの表紙を飾るなど米国マスコミで大騒ぎになっていた。今回専門家委員会はAGDがヒトにおいてどういう意味を持つのか不明であることや最も強い相関を示した代謝物が動物ではそのような影響がみられないものだったことなどを指摘してこの発表がヒトでの有害事象の根拠とはならないと結論している。ただしAGDが新しい指標となりうる可能性も指摘して、Swanらに再現性やより多くの人数での確認をすすめている。


EHP論文は以下(誰でも無料で全文読める)
Volume 113, Number 8, August 2005
Decrease in Anogenital Distance among Male Infants with Prenatal Phthalate Exposure
http://ehp.niehs.nih.gov/docs/2005/8100/abstract.html
Phthalates and Baby Boys Potential Disruption of Human Genital Development
http://ehp.niehs.nih.gov/docs/2005/113-8/ss.html




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