食品安全情報blog過去記事

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ニュースより

食中毒の発生について〜栽培したジャガイモで食中毒〜
東京都福祉保健局健康安全室食品監視課
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/news/2006/pressshokuhin060720.html
ソラニン類210μg/g −1200μg/g検出
関連

IPCSのサイトより
ソラニンとチャコニン
SOLANINE AND CHACONINE
http://www.inchem.org/documents/jecfa/jecmono/v30je19.htm
ジャガイモには有毒なステロイドグリコアルカロイドが含まれる。古い文献ではソラニン又は総糖アルカロイドTGAとのみ記述されている。
ジャガイモは畑や貯蔵中に光に当たると葉緑素が蓄積して緑色になる。この色は皮だけで中には影響しない。光に当たることはTGA、特にアルファソラニンとアルファチャコニンの急激な濃度上昇を誘発するストレス因子の一つに過ぎない。他に収穫前後の物理的損傷やイモの状態又は一部加工した状態での不適切な保存条件、発芽などでTGAが増加する。
この天然の毒物は殺虫作用と殺真菌作用があり、全てのイモに微量存在する。
TGAの分布は一様ではなく皮に多い。品種により量も違う。生育条件も含量に影響する。煮たり焼いたり電子レンジで調理したりしても壊れない。
表 TGA mg/100g 新鮮重量 (mg/kg(=microg/g)換算)
イモ全体 7.5 (4.3-9.7)  (75 (43-97))
中身 1.2-5 (12-50)
イモの表面2-3%  30-60 (300-600)
イモの皮10-15% 15-30 (150-300)
苦いイモ 25-80 (250-800)
苦いイモの皮 150-220 (1500-2200)


毒性
ウサギの実験では普通のイモ(TGA 7.5 mg/100g)と緑色のイモ(TGA 20.4 mg/100g)を20日間食べさせたところ、緑イモ群(49-53 mg TGA/kg bw/day)では4-6日後に活動が鈍くなり10日以降は下痢と脱毛と体重減少があり4匹のうち1匹が10-20日の間に死亡した。普通のイモ群(20 − 23 mg TGA/kg bw/day)では影響は見られなかった。
発がん性試験データはない
人での中毒例
ヒトの中毒例は多数有り死亡例もある。
消化管及び神経毒性
軽い中毒では急性の嘔吐や下痢、腹痛。より重症では嗜眠や無気力・混乱・衰弱・視覚障害・意識不明などの神経症状が出る。発症は食べてから数分後から2日後までにわたり、重症例の方が潜伏期間が長い。
スコットランドの61人が食中毒になり子ども1人が死亡した事例から致死量は4.5mg/kg 体重と推定された。
これまでのデータからはヒトでは3-6 mg TGA/kg bwが致死量、>1 −3 mg TGA/kg bwが毒性量と推定される。子どもは成人より感受性が高い。有毒ジャガイモと普通のジャガイモの違いは小さい。
長期間に渡る食経験にもかかわらず、TGAの安全レベルを設定することはできない。


食衛誌
2004 Oct;45(5):277-82
市販のジャガイモのアルファソラニンとアルファチャコニンの量

メイクイーン260-320 microg/g
男爵 190-240 microg/g
早稲白 43-63 microg/g
じゃがキッズ レッド '90  140-200 microg/g
じゃがキッズ パープル '90  84-130 microg/g
身については
メイクイーンと男爵が2.7-12 microg/g、その他5.8-31 microg/g

Food Additives and Contaminants, June 2005; 22(6): 514 534
Quality of organically and conventionally grown potatoes: Four-year study of micronutrients, metals, secondary metabolites, enzymic browning and organoleptic properties
によればオーガニックでも通常栽培でも違いはなく、一般的に含量の多い品種や少ない品種はあるが同じ品種でも栽培年度によって2-3倍違う値(数十-250 mg/kg)が報告されている。

J Agric Food Chem. 2003 May 7;51(10):2964-73.
Glycoalkaloid and calystegine contents of eight potato cultivars.


今回の東京都の事例では、ソラニン類含量1.2 mg/gのジャガイモを、 体重40kgの子どもが食べるとして致死量4 mg/kg 体重を採用すると160 mgなのでジャガイモの量としては160/1.2=133.3g  つまり一人で130g食べていたら死んでいた可能性もある、ということ。
ジャガイモをなめるな、といったところ。