食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

フランスのカキ禁止を巡る謎

Mystery surrounds French oyster ban
21 September 2006
http://www.nature.com/news/2006/060918/full/060918-8.html
8月のフランスの有名なアルカションのカキの販売禁止は、カキ養殖業者の怒りのデモを引き起こした。彼らは魚介類に本当に毒があることを証明するものはないと主張している。この事件は現在の安全性試験法の問題に照明をあてた。
カキは8月31日に標準的安全性試験に通らなかった、つまりカキエキスを注射したマウスが死んだため販売停止された。この地方で二人が死亡した。剖検の結果一人については死因はカキと関係がないことがわかったが、もうひとりについては未だ不明である。
食中毒により病院に行く人が増えているわけでもなく、水中から有害藻類が検出されているわけでもない。フランス食品安全局のLaurent Rossoはマウスの死因がわからないことを認めている。一体何が起きているのか?
マウスバイオアッセイは下痢性貝毒の標準試験法である。この試験法では、貝類の消化腺の脂質画分を溶媒で抽出し、溶媒を除去してからマウスに注射する。もし三匹のマウスのうち二匹が24時間以内に死亡すればヒトの食用とするのは禁止される。この禁止は引き続き2回の検査で陰性になると解除される(この場合9月14日にそうなった)。
しかしこの事件はバイオアッセイの問題点を明らかにした。マウスの死亡からはどの毒素があるのか、どんな濃度なのかはわからない。それは単なる全体試験の一種である。また稀ではあるが偽陽性もおこる。抽出に使用する溶媒はマウスに致死性であるため不適切な洗浄により貝に問題が無くてもマウスが死亡することがある。
こうした理由からドイツBfRはマウス試験を化学的検査法に変えるべきだと主張している。
化学的検査ではヒトへの健康影響を評価できる。しかしながらそのような検査法は必ずしも簡単ではなく安全性確保のための方法として評価されているわけでもない。実際に使えるほど十分確実で信頼できる検査方法はない。いくつかのバイオアッセイが開発中であるが現在研究段階である。
また未知の毒素を検出するためにマウスバイオアッセイは必要である。謎の毒素が出る例は非常に稀ではあるが、船のバラスト水などで運ばれたその地方にはあまりない有毒プランクトンが原因であることもある。研究者らは現在マウスを殺した毒性の徴候についてカキと水を探し回っている。



ACSH 米国