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家庭での固形燃料燃焼と高温でのフライ調理の発ガン性

Lancet Oncology 2006; 7:977-978
Carcinogenicity of household solid fuel combustion and of high-temperature frying http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS147020450670969X/fulltext
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IARCモノグラフワーキンググループからの報告。
2006年10月にIARCにおいて、19人の科学者による家庭での固形燃料(石炭やバイオマス)燃焼と高温でのフライ調理の発ガン性評価会合が行われた。この評価結果についてはIARCモノグラフ95巻で発表される。
世界の人口の約半分は、主に資産の低−中程度の国々で、調理や暖房に、しばしば換気の良くない状態で、固形燃料を用いている。WHOは、固形燃料の燃焼による室内の煙が、世界の疾患負荷のトップ10リスクの一つであるとしている。不完全燃焼による生成物には吸入され得る粒子や、ベンゾ(a)ピレンやホルムアルデヒドベンゼンなどの発ガン物質を含む各種揮発性及び非揮発性有機化合物がある。室内空気中粒子状物質(<10 microm)の平均濃度は1立方メートルあたり数ミリグラムにもなり、最高濃度はそれより一桁高い。一日のほとんどの時間を家庭で過ごす女性や小さな子どもたちが最も暴露量が多い。
石炭燃焼生成物への吸入による職業暴露は肺ガンを誘発することが知られているが、 主に中国からの多くの研究によれば家庭での石炭の使用でも同様の影響が示されている。この問題は最初に中国のXuan Wei地方で注目された。Xuan Wei地方では特に煙の多く出るタイプの石炭が使用されており、石炭使用量と肺ガンについての正の相関があるという症例対照研究が二件報告された。さらにコホート介入研究により、煙突のないものから煙突のあるものへのストーブの変更によりリスクが低下することが示された。中国瀋陽での大規模研究では石炭の煙への異なる暴露指標について、喫煙と教育レベルを補正した後で暴露量と反応との相関が認められた。さらに中国ハルビンでの非喫煙女性での研究では、石炭ストーブの使用歴と肺ガンに非常に強い相関が報告されている。台湾と米国での症例対照研究でも、交絡因子を補正した後、石炭の煙吸入により肺ガンリスクが2倍になると報告されている。
動物実験ではXuan Wei同様の条件での石炭燃焼生成物の吸入は、雌雄昆明マウスの各種悪性肺腫瘍頻度と雌雄Wistarラットの扁平上皮ガンの頻度を増加させた。別の研究ではハルビンで得られた石炭燃焼生成物に暴露した雌雄昆明マウスで肺腺腫頻度が増加した。
ヒト及び実験動物での充分な根拠があるため、ワーキンググループは家庭での石炭燃焼生成物は「ヒトに対して発ガン性がある(グループ1)」と結論した。ヒトや動物でのメカニズム研究データもこの結論と一致している。
バイオマス燃料は石炭よりさらに広く使用されているが、健康影響研究は少ない。台湾では調理に木材を燃やしている女性は、交絡因子を補正した後、肺ガンリスクが3倍に増加していた。さらに大規模マルチセンターヨーロッパ症例対照研究では、調理や暖房に木材を燃やしている人々で、そうでない人々より調整後20-30%の肺ガンリスクの増加が報告されている。日本とメキシコでの研究でも非喫煙女性において木材や藁の煙暴露と肺ガンリスクの増加が報告されている。これらの研究からは木材燃焼による煙への暴露と肺ガンリスクの増加との関連が示唆されるが、暴露期間や強さについての解釈は難しい。
動物実験では木材燃焼生成物暴露は雌雄昆明マウスで肺腺腫頻度を増加させるがWistarラットでは増加させなかった。木材の煙抽出物は皮膚に塗布したり皮下に投与するとマウスとラットでガンを作る。
木材燃焼生成物は、多環芳香族炭化水素や酸性又は極性物質など各種化合物が含まれるため変異原性がある。木材の煙を吸った肺ガン患者のp53発現量やリン酸化の変化などの分子生物学的研究データや、活性炭労働者及び木材や牛糞を燃やしていた女性における全身遺伝毒性データは、木材燃焼生成物の発ガン性を支持する。
バイオマス(主に木材)燃焼生成物のヒト及び実験動物での発ガン性に関する限定的根拠と、木材の煙抽出物の実験動物における発ガン性についての充分な根拠と、変異原性についての強力な根拠に基づき、ワーキンググループは室内でのバイオマス燃料(主に木材)の燃焼生成物を「おそらくヒトに対して発ガン性がある(グループ2A)」と結論した。
油を高温に加熱する炒め物や揚げ物料理は世界中で、特に中国で、行われている。香港の研究ではこうした調理法の数と肺ガンリスクに有意な相関があるとしている。上海での別の2件の研究では炒め物や高温での揚げ物で肺ガンリスクが増加していた。甘粛での研究でも炒め物の頻度と肺ガンリスクの増加を報告しているが揚げ物では増加しなかった。しかしながら固形燃料の燃焼などの交絡因子の影響は排除できない。調理法の違いや特定の調理油の使用などの影響は不明である。
高温(>260度)で加熱した菜種油から生じる物質の発ガン性を調べた二つの動物実験があり、肺ガン(主に肺腺腫)の頻度増加がマウスとラットで示されている。雌雄マウスと雌ラットで用量相関が見られているが雄ラットでは見られなかった。
高温(>240度)で加熱した各種調理油からの生成物の変異原性についてはほぼ全てのin vivo試験系で陽性であった。メカニズム解析データからは多価不飽和脂肪酸の過酸化生成物の関与が示されているが、多環芳香族炭化水素の関与も無視できない。
ヒトでの限られた根拠と実験動物における充分な根拠に基づいて、ワーキンググループは高温フライ調理生成物を「おそらくヒトに対して発ガン性がある(グループ2A)」と結論した。

(中華料理を作るときは換気扇最大パワーにしよう・・)