食品安全情報blog過去記事

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ロシアのスパイの中毒事件に関する疑問

Unanswered questions after Russian spy poisoning
1 December 2006
http://www.nature.com/news/2006/061127/full/061127-17.html
メディアの注目を集めたにも関わらず、アレクサンドル・リトビネンコの死亡については謎が多い。Natureニュースが問題の物質についての知見をまとめる。
ポロニウム210を入手するにはスパイになる必要があるのか?
その必要はない。当初の報告とは違ってこの放射性物質は、製造場所である原子炉に接触することなく入手可能である。米国では、微量は各種供給業者から購入できるが、危険な用量を購入するには数千単位で注文する必要がある。より大量のものは、プラスチック工業で使用される静電気防止装置などの市販製品中に見つけられる。これらの装置は厳重に規制されており通常は購入ではなくリースで使用できる。製造業者のウェブサイトにある製品説明によれば、殺人可能な量のポロニウムが含まれる。
・リトビネンコを殺すにはどれだけの量が使われたのか
確かなことは誰にもわからないが、彼が死亡するまでにかかった時間―入院してから約3週間―からおおまかな推定ができる。
核事故や広島・長崎の原子爆弾生存者のデータから、15シーベルト以上の被曝は放射線による腸管組織の破壊により数日以内の死亡をもたらす。5シーベルト未満の被曝では3週間以上生存し、死亡しないこともある。5-15シーベルトの被曝は広島型原子爆弾の800メートル地点に居た人の被曝量に相当する。
もし飲み込んだ場合、ポロニウム210は100万分の10グラムの用量で上記被曝量となり得る。致死量推定は非常にばらつきが大きい。
・何故ホテルや飛行機でポロニウム210が検出されているのか?
警察がまだ捜査中であるが、リトビネンコが投与された後で微量のポロニウムを拡散させた可能性がある。この物質は汗や涙などから排出される。飛行機については推測の段階で検出された放射線レベルやそれがポロニウム210によるものかどうかも公表されていない。もしポロニウム210が原因であれば、さらに疑問が増える。この物質はアルファ崩壊するため、紙一枚でも遮断できる。もしポロニウム210がロシアから運ばれたものだとしたら、単純に硬く蓋をしたビンに入れるだけで汚染は防げるのである。