食品安全情報blog過去記事

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FDAはクローン動物の安全性に関する文書案を発行

FDAは生産者やブリーダーに対しては食品としての供給はしないよう要請し続ける
FDA Issues Draft Documents on the Safety of Animal Clones
Agency Continues to Ask Producers and Breeders Not to Introduce Food from Clones into Food Supply
December 28, 2006
http://www.fda.gov/bbs/topics/NEWS/2006/NEW01541.html
FDAはクローン動物の安全性に関する三つの文書――リスクアセスメント案;リスク管理計画案;企業向けガイド案――を発表した。
リスクアセスメント
リスクアセスメント案では成体のクローンウシ・ブタ・ヤギ及びその子孫由来の肉やミルクは普通の交配動物由来のものと同様に食べても安全であるとしている。この評価は独立した科学専門家のピアレビューを経たものであり、それによればFDAのデータ評価方法や結論は妥当である。
この評価案では畜産で広く使用されている生殖補助技術や、動物の健康や食品を食べることのリスクについての膨大な科学的情報を集めて科学的根拠のある結論を下している。この結論は科学アカデミーの2002年報告書の結論に合意するものである。ヒツジクローンについてはデータが少ないためにFDAのガイダンス案ではヒツジクローンのヒト食用利用は薦めないとしている。
クローン動物とはドナー動物の遺伝的コピーであり、一卵性双生児が別の時期に生まれたようなものである。クローン技術は遺伝子組換えとは違い、DNAの切断や追加などの遺伝子配列の変更は行わない。
リスク管理計画案
この計画案ではクローンによる動物へのリスクに対応するための規制の概要を提案している。FDAは動物倫理に関しては対応しない。
企業向けガイド案
この案はクローン及びその子孫由来食品や飼料を扱う企業向けのものである。この案ではどの種のクローンの子孫であってもヒト食用への使用に特別な規制は提案していない。


これらの案については90日間パブリックコメントを募集する。
文書及びその他詳細情報は以下から。
A Risk-Based Approach to Evaluate Animal Clones and Their Progeny - DRAFT
http://www.fda.gov/cvm/CloneRiskAssessment.htm


そのうちいくつか紹介
クローン動物:消費者向けFAQ
ANIMAL CLONING: FAQS ABOUT CLONING FOR CONSUMERS
http://www.fda.gov/cvm/CloningRA_FAQConsumers.htm
FDAは動物のクローニングを支持するのか?
FDAは食用動物のクローン作成について賛成も反対もしない。FDAの任務は人々の健康を守ることである。畜産業界が商用目的でクローン動物を開発し、FDAは安全性を確認するまで食品として販売しないよう任意に要請してきた。
・クローン動物のリスクアセスメント案とは何か?
FDAの動物用医薬品センター(CVM)の科学者による報告書案である。FDAの科学者が数百の論文やその他の情報殻のデータを解析した。この報告書案はクローンによる動物の健康リスクや食品としての安全性についてのFDAの結論となる。
リスク管理計画案とは何か?
リスクアセスメント案で同定されたリスクを考慮してどのように管理できるかを示したものである。
・企業向けガンダンス案とは何か?
クローン動物やその子孫をヒト食用や動物飼料用に使用する際のFDAの推奨事項を説明したものである。
・クローン動物とは何か?
クローン動物はドナー動物の正確な遺伝的コピーである。クローンは産まれる時期が異なる一卵性双生児のようなものである。クローニング技術は、家畜の繁殖業者たちが何世紀にも渡って使用してきた生殖補助技術の延長である。こうした生殖補助技術には人工授精や胚移植、胚分割、体外受精などがある。
クローニングは生殖補助技術の中でも最も新しく最も複雑なもので、20年程度各種の形で行われてきた。最も良く用いられるのが体細胞核移植(SCNT)と呼ばれるもので、この方法ではドナー動物の遺伝子を核を除去した卵細胞に入れ、実験室でいくつかの段階を経た後代理母に移植する。
クローン技術の詳細については以下のサイトで学ぶことができる。
www.fda.gov/cvm/cloning/cloning.htm
・クローン動物由来食品の長期摂取研究はあるのか?
クローニングにより動物に新しい物質が導入されることはないため、検査すべき「新しいもの」は存在しない。クローン動物由来の飼料やミルクを実験動物に与えたところで新しい知見は得られない。実験動物でもヒトでも、肉やミルクだけを食べさせるわけにはいかない。食品科学者や毒性学者、規制担当官はこうした問題に直面して長期投与試験では意味のある結果は出ないと結論した。
・クローン動物由来のミルクや肉をペットに与えても安全か?
安全である。
・クローニングは遺伝子組換えと同じか?
違う。遺伝子組換えでは遺伝子の追加や除去などが行われるがクローニングでは遺伝子配列の変更はない。
・何故畜産業界はクローニングに興味があるのか?他にもっと簡単な方法は?
畜産業者は食用動物の交配により良い方法を求め続ける。クローニングによって自然に得られた望ましい性質を持つ動物の数が増やせる。この方法で肉質が良かったり病気に強かったりする家畜をより早く広められる。
FDAはクローン動物の倫理については考慮しているのか?
FDAはクローン動物が一部の人にとって重要な倫理的問題を提起することは認識している。しかしながらFDAの任務は健康や安全性についてのもので倫理問題は扱わない。倫理問題については議論に参加する計画はある。
・クローン動物由来食品は表示されるのか?
表示はされない。表示を含めクローン動物への新しい規制は推奨していない。FDAの科学者はクローン由来のミルクと普通のミルクに違いはなく、従って区別のための表示に科学的根拠はない。
・他の国ではクローン動物は許可されているのか?他の国ではクロン動物由来の食品は販売されているのか?
他の多くの国の科学者はクローン技術を使用している。ヒツジのドリーはスコットランド産であった。オーストラリア・カナダ・フランス・イタリア・日本・ニュージーランド・韓国などで多数のクローン家畜が作られている。しかしながら我々の理解しているところでは食用として許可している国はない。
・私はFDAに言いたいことがある。どうすればよいか?
現在パブリックコメントを募集中である。



業界の反応
米国食肉協会 AMI American Meat Institute
FDAリスクアセスメント案によればクローン動物やその子孫の肉やミルクは安全
Meat and Milk Products from Cloned Animals and Their Offspring Are Safe, FDA Draft Risk Assessment Says
December 28, 2006
http://www.meatami.com/Template.cfm?Section=Home&template=PressReleaseDisplay.cfm&PressReleaseID=3156&News=Y
FDAの報告書案に同意する



国際乳製品協会
FDAはクローン動物のミルクや肉のリスクアセスメント案を発表;IDFAは新しい知見を含む多くのメディア報道を扱う
FDA Issues Draft Risk Assessment on Milk and Meat from Cloned Animals; IDFA Handles Heavy Media Volume; Coverage Includes New Insight
Posted January 2, 2007
http://www.idfa.org/news/stories/2007/01/clone_risk.cfm
FDAの発表を報道した各種メディアでの扱いを紹介している。
The New York Timesは他にクローン動物を許可している国がないため、米国産の肉や乳製品が輸入拒否されるのではないかと報道。The Financial TimesはCVMのStephen Sundlofのコメントとして「他国は自力で行動する前にFDAのリスク評価を待っていたと考えている」と紹介している。Wall Street Journalによればウォールマートはクローン家畜販売計画はないとし、Tyson Foodsは決定を下す前に調査するとしている。
また同時にFDAの評価によってクローン動物作成のコストが低下し生産者にとってより魅力的なものになる可能性があるという予想も掲載している。IDFAは各種メディアからの取材に答えている。


バイオテクノロジー産業協会
Biotechnology Industry Organization (BIO)
FDAはクローン動物とその子孫由来食品の安全性を発表
BIO statement: FDA Announces safety of food products from cloned animals and their offspring
12/28/2006
http://www.bio.org/news/newsitem.asp?id=2006_1228_01
BIOはFDAの結論を支持する。



Natureニュース