食品安全情報blog過去記事

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自閉症のメディア報道は大きく違う

Media coverage of autism differs dramatically
30-Jan-2007
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2007-01/sumc-mco013007.php
Nature Reviews Neuroscienceの2月号に発表された論文。
自閉症に関する研究の研究費件数や発表された論文のうち41%が脳や行動についての研究であるが、米国・英国・カナダの新聞ではこれらについてはわずか11%である。一方メディア報道の48%は自閉症の環境要因(主に、既に論破されているワクチン接種が原因だとする説)についてであった。科学論文では自閉症の環境誘発についてはわずか13%である。
面白いのはメディアによるワクチン原因説の報道は科学界と同様に懐疑的であるということである。メディアの報道は科学的論調を反映してはいるが、自閉症の遺伝子や治療や疫学などの科学的研究の幅を反映していない。
著者らは新しい科学的知見に対して人々がどのように振る舞うかに興味があってこの研究を行った。場合によっては新しい知見が社会的価値を変えてしまう(フロッキング)ことがある。フロッキングの例として、1993年にクラシック音楽が赤ちゃんの認知機能を向上させる可能性があるという仮説が提示された。この知見は親やおもちゃ会社にフロック効果をもたらし、1998年にはジョージア州で全ての妊婦にクラシックのCDを配布する法律ができるほどであった。科学的にはこの仮説が否定されているにも関わらず、である。