食品安全情報blog過去記事

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母親のシーフード摂取は子どもの発達に有益である

Maternal seafood consumption benefits children's development
15-Feb-2007
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2007-02/l-msc021407.php
Lancetの今週号に発表された論文によれば、妊娠中の母親がシーフードをたくさん食べた方が食べない場合より子どもの神経機能発達が良好である。シーフードは胎児の脳の発達に必須のオメガ3脂肪酸の主な摂取源であるが、米国では微量の汚染物質汚染を避けるため妊娠女性は週に340gまでにシーフード摂取を抑えるよう助言されている。
Avon Longitudinal Study of Parents and Children (ALSPAC)コホート研究の解析の結果、週に340g以下のシーフードしか食べない場合、340g以上食べる場合より言語IQが最低四分位になるリスクが増加する。さらに母親のシーフード摂取の少なさはその他の社会発達指標の低下リスクと相関する。
米国の妊娠女性への助言を支持する根拠は見つからなかった。
The Lancet 2007; 369:578-585
Joseph R Hibbeln et al.
Maternal seafood consumption in pregnancy and neurodevelopmental outcomes in childhood (ALSPAC study): an observational cohort study
コメント
The Lancet 2007; 369:537-538
Gary J Myers and Philip W Davidson
Maternal fish consumption benefits children's development
この論文は政府機関にとって重要であろう。全ての魚には微量のメチル水銀が含まれるが、同時に必須の栄養素も含まれる。これまで妊婦が魚を食べて子どもがメチル水銀中毒になった事例は日本にしかないが、アメリカ人の2/3は毎年1000-100000人の米国人の子どもが魚によるメチル水銀中毒になっていると間違って信じている。
世界中の規制機関がメチル水銀については魚を食べることを薦めるべきか制限すべきかの板挟みに悩んでいる。米国で発表された高濃度のメチル水銀を含む魚を避けるようにという助言は結果的に全ての魚の摂取を減らした可能性がある。Hibbelnらの研究はこのことが子どもたちの脳の発達を妨げている可能性を示唆している。