食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

飲料水中のニッケル

Nickel in Drinking-water
http://www.who.int/water_sanitation_health/dwq/chemicals/second_addendum_nickel.pdf
WHOの飲料水ガイドラインへの補遺。
飲料水中ニッケルは主にパイプなどの水と接触する金属由来であるが、ニッケル鉱石を含む岩などから溶け出して地下水にも存在する。
結論として飲料水中のニッケルのガイドライン値として70 microg/Lを提案している。
ニッケルは主に非鉄合金であるステンレススチールを作るのに使用されている。また一部のサプリメントにも含まれる。
食品中では一般的に0.01-0.1 mg/kg含まれ、豆や種やナッツやふすまなどに比較的高濃度(1-6 mg/kg)が報告されている。カカオでは8-12 mg/kg検出されている。
ステンレススチールの調理器具で調理することにより食品中のニッケル濃度が増加する砥の報告もあるが、新品の調理器具の場合はあまり増加しないとの報告もある。
ニッケルの摂取量は英国1981-84で0.14-0.15 mg、米国で0.16 mg等の報告があるが、ベジタリアンではそれより多い。飲料水からの摂取の寄与は小さい。
ラット慢性毒性のNOAELは5mg/kg体重との報告もあるがこの実験は現在の毒性試験の基準に適合しない。イヌ慢性毒性試験ではNOAELは25mg/kg体重という報告がある。
ヒトでは2.5才の女の子が15gの硫酸ニッケル結晶を食べて死亡した事例がある。ニッケル含有飲料水による中毒症状の報告もある。一般人にとって最も良くあるのはニッケルによる接触皮膚炎である。特に若い女性に多い。天然に食品中に含まれるニッケルがニッケル過敏症患者の症状を悪化させるかどうかについては議論の余地がある。職業暴露による高濃度ニッケル粉塵の吸入により肺と鼻のガンが誘発されるが金属ニッケル暴露によるガンとの関連はない。
ガイドライン値の算出にはラットの二世代試験のNOAEL 1.1 mg/kgを採用して不確実係数100を用いてTDI 11 microg/kg体重を算出し、そのうち20%を飲料水に割り当てて70 microg/Lを導出した。