食品安全情報blog過去記事

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カナダ政府から米国FDAのクローン動物のリスクアセスメント案についてのコメント

Animal Cloning: A Draft Risk Assessment.
2007-05-17
http://www.hc-sc.gc.ca/fn-an/gmf-agm/anim_clon_lett_e.html
May 3, 2007
カナダ政府の代理としてCFIAとヘルスカナダがUS FDA CVMによる「クローン動物のリスクアセスメント案」にコメントする。我々は文書を精査し以下のコメントを提供する。この意見はカナダ政府のクローン動物についての立場を示すものではない。
一般的項目
ヘルスカナダはクローン動物に関して新しい科学情報を観察し続けている。この案が発表されてから、この文書を補完するさらに多くの論文が発表され国際レベルでの議論は続いている。
我々はFDAがリスク評価案において科学に基づいて食品安全、栄養成分、クローン動物やその子孫の健康に関する問題を取り扱っていることを理解する。しかしながら、農業部門にクローン動物を導入することには議論の余地があり倫理面での議論がおこっている。カナダ政府は、クローン動物に関する政策決定には環境、間接的なヒト健康影響、倫理、動物の福祉及び社会経済学的問題を考慮する必要があるという認識である。従ってこのコメントは食品や飼料の安全性及び動物の健康に関する科学的問題に限定したものである。
カナダではクローン動物とその子孫及びそれら由来製品は通常の動物由来製品と同様厳しい規制下にある。さらにクローン動物は「新規」とみなされるため、環境カナダの評価などの追加の規制が適用される。
2003年7月に中間政策としてヘルスカナダはSCNTクローニング技術を用いて作成した家畜及びその子孫は「新規食品」とみなすと述べた。従ってSCNTによりクローン動物を作った場合は、カナダでは市販前評価が行われない限り食品として販売されない。しかしながら現在これらの製品の市販前評価を行うのに必要なデータがないため、SCNTにより家畜を作りたい人たちにはガイドラインができるまで申請を保留するよう求められている。
(クローン動物由来製品の飼料としての利用・環境についても同様)
カナダ政府はクローン動物の評価については現状のケースバイケースによる取り組みを継続し、この評価案も他の新しい情報同様検討対象にする。
技術的検討
SCNTによる食品リスクについて、US FDA CVMはCritical Biological Systems Approach(CBSA)と組成分析の二つのアプローチを行っている。CBSAでは動物の
健康データを評価し、組成分析では通常動物由来食品との比較を行っている。US FDA CVMは動物の健康状態が食品や飼料の安全性の重要な指標となりうることを示唆している(すなわち、健康な動物は健康な食品や飼料になる)。例えば異常のある動物はヒト食用にはならない。カナダ政府はこの一般的推定の価値を認めるが、同時にUS FDA CVMが述べているように、クローン動物が見かけ上健康であるっことにより、意図しない変化や僅かな危険を除外することはできない。
US FDA CVMのリスク評価案はウシ・ブタ・ヤギの場合にのみ当てはまり、他の動物に外挿できない。リスク評価案では多数の食品/飼料安全性や動物の健康の問題について検討しているが他に以下のような分野の情報が役に立つであろう。
・ 「正常」の定義。各種畜産物の正式な基本的組成などの値は現在存在しない
・ SCNTの通常値
・ クローン家畜の寿命や長期生存、多世代データ
・ クローン動物の検出しにくい僅かな影響に関するデータ(培養条件の影響やエピジェネティクスなど)
・ アレルギーや微生物影響など
・ 飼料安全性に関して、レンダリングや廃棄法等の情報
結論
ヘルスカナダはこのリスクアセスメント案を他の新しい情報と同様、クローン動物の安全性や動物の健康に関する継続する検討の材料として使用する。