食品安全情報blog過去記事

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はてなブックマークより
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.asahi.com/science/update/0929/TKY200709290068.html

論文はこれ
Yukitoshi Izumi et al,
Neuroexcitatory actions of Tamiflu and its carboxylate metabolite
Neuroscience Letters ,Volume 426, Issue 1, 9 October 2007, Pages 54-58
http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6T0G-4PJM9ST-2&_user=1044440&_coverDate=10%2F09%2F2007&_rdoc=12&_fmt=summary&_orig=browse&_srch=doc-info(%23toc%234862%232007%23995739998%23669397%23FLA%23display%23Volume)&_cdi=4862&_sort=d&_docanchor=&view=c&_ct=15&_acct=C000050840&_version=1&_urlVersion=0&_userid=1044440&md5=dc4dcc71f1003307925b457f36f6074f
若齢ラットにオセルタミビル(タミフル)50 mg/kg i.p.(腹腔内投与、静脈投与と同等と見なして良い)で2時間以内に行動変化は見られなかった。しかしオセルタミビルを投与した後エタノールを3.3 g/kg, i.p.投与すると光反射消失時間がオセルタミビル投与無しの場合より長くなった。
海馬スライス標本のCA1領域にオセルタミビル100 microMで、興奮性ポストシナプス電位の変化無しに集合スパイク電位のペアパルスが誘発された。同様にオセルタミビル活性代謝物であるオセルタミビルカルボキシレート3 microMでは神経の発火が観察されたがこれはGABA作動性系の抑制解除によるものではなかった。


海馬スライスは脳を生のまま取り出してスライスして電極を刺して電位を記録するもの。
GABA系は抑制性信号を伝える。
ヒトでの臨床投与量は2mg/kg。経口での投与量の25倍を腹腔内投与しているという実験はどうなのか。エタノールについても小児での致死量が経口で3g/kg程度とされる。ラットはヒトより強いようだが。
in vitroの実験で使った活性代謝体が 3 micro Mという濃度は、
分子量約400で計算すると成人に300 mgを投与したときの最大血中濃度程度か(1200 ng/mL、データは以下のサイト)。当然血液脳関門が全くない状態でないとそのまま脳にはいかない。

いずれにせよ「実証」とはほど遠く、朝日新聞の見出しにはタミフルを葬り去りたいという悪意があるとしか思えない。
ちなみにオンライン発表は9月1日で何故今頃取り上げたのか不明。


医薬品としてのタミフルの情報については、医薬品医療機器総合機構のサイトより
通常、成人及び体重37.5kg以上の小児にはオセルタミビルとして1回75mgを1日2回、5日間経口投与する。
活性代謝体の血中濃度
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6250021M1027_1_15/
より

ちなみに私は非興奮性細胞の電位測定しかやったことはなく、スライスパッチは傍で見ていただけ。それでも多分ブックマークしてるたくさんの人よりましかなと思って書いてみました。