食品安全情報blog過去記事

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ズッキーニのディルドリンMRLを引き上げることによるリスクに関するPPRパネルの意見

Opinion of the Scientific Panel on Plant protection products and their Resi-dues on a request from the Commission on the risks associated with an in-crease of the MRL for dieldrin on courgettes
19/10/2007
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178654802714.htm
ディルドリンは1940年代に開発され1970年代まで広く殺虫剤として使用されていた。しかし好ましくない環境影響や毒性学的性質がわかったため使用禁止とされた。今日世界中でディルドリンの使用は禁止されている。ディルドリンは環境中での残留性が高くフードチェーンに蓄積しやすい。環境中での分解速度が非常に遅いため、今日でもヨーロッパや各地で土壌汚染物質として存在する。
オランダのモニタリングデータから、オランダ西部で温室栽培されたズッキーニが現行のMRL 0.02 mg/kgを必ずしも守れないことがわかった、そのためオランダはMRLを0.05mg/kgに上げることを提案し、欧州委員会はEFSAにその評価を諮問した。
ディルドリンを禁止した主な理由は残留性が高いことと動物組織に蓄積することである。従ってMRLの引き上げられたズッキーニを食べることによる暴露に加えて、既知の暴露源からの暴露も同時に検討してヨーロッパの消費者のリスクとなるかどうかを検討するのが適切である。
現在のEU残留農薬規制ガイドラインではディルドリンは単独又はアルドリンと一緒にしてディルドリンと表現される。これはこの二つの化合物がよく似た化学的・毒性学的性質をもつからである。
JMPRは1967年にディルドリンのADIを設定し1977年に再確認を行い、1994年にPTDI 0.0001 mg/kg bwに変更した。JMPRは急性参照用量ARfDは設定していない。PPRパネルは既存の文献をレビューし、ディルドリンのARfD設定には1965年のラットのLD50 25 mg/kgに安全係数10000を採用して(デフォルトの100に影響の重大性について10、50%のエフェクトサイズについて10を追加)0.003mg/kg bwを導出した。新しいMRL 0.05 mg/kgディルドリンのズッキーニを食べた場合の暴露量を各種消費者グループで計算したところ、0.003 mg/kg bwを超えることはないであろうことが示された。
慢性毒性についてはEFSA食事データベースを用いた理論的最大一日摂取量(TMDI)計算により評価した。MRL 0.05 mg/kgのズッキーニで計算すると全てのEU加盟国でPTDIの100%を超えた。PTDIの超過は警告シグナルではあるが、実際の摂取量が許容できないレベルであるという証拠にはならない。最近のヨーロッパのモニタリングデータによればほとんどの作物の残留農薬はMRLよりずっと少ない。従って作物の残留農薬量としてMRLを使うことは真の暴露量の過剰推定になる。一方検出限界以下のものについて0と推定することは過小評価になる。そこでズッキーニを含むウリ科についてはMRLの半分、その他の食品についてはMRLの25%として計算をやりなおした。その結果成人についてPTDIの100%以下になった。ズッキーニ由来のディルドリンについてはPTDIの約2%であった。
ズッキーニのMRLを0.02から0.05 mg/kgにすることによる影響はPTDIの約2%の暴露量増加をもたらすと推定された。ディルドリンの総摂取量は、ズッキーニのMRLより、動物由来食品の選択により大きく変動する。
なお現行のアルドリンとディルドリンのPTDIはJMPRが1977年に設定したもので、マウスの肝ガンをもとに250の安全係数を使っている。このような大きな数値を使うことには最早科学的正当性はない。我々の知識の発展により、このエンドポイントと安全係数の使用には疑問ある。もし現在PTDIが設定されるとしたら0.0001 mg/kg bwよりは大きな値になるであろう。しかしながら確実なデータの評価なしにPTDIを変更することはできない。