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食事ガイドラインが魚摂取についての騒動を起こす

Science 26 October 2007:Vol. 318. no. 5850, pp. 550 551
Dietary Guidelines Spark Flap Over Fish Consumption
今月初め、NGOが米国のガイドラインとは異なる妊娠女性はもっとたくさん魚を食べるべきだと薦める助言を行ったことが批判を集めた。この健康な母親と健康な赤ちゃんのための全国同盟National Healthy Mothers, Healthy Babies (HMHB) Coalitionによる助言は、消費者団体や政府機関などから却下された。
しかしこの騒動に関与していない研究者からは、魚企業がスポンサーだからといって、政府のガイドラインにより魚の消費量が減ったという事実は隠せないし、政府基準は再検討が必要であることも確かである、と述べている。
HMHBは妊娠女性は胎児の脳の発達に必要なオメガ3脂肪酸を摂るために、少なくとも週に12オンスの魚を食べるべきだと助言した。これは2004年のEPAFDAによる、水銀摂取量を減らすために妊娠女性は週に12オンス以上の魚を食べないように、という助言と違う。
政府機関はHMHBの発表に素早く対応し、CDC等に勤務しているHMHBのメンバー3人がワシントンポストに寄せた手紙でHMHBの助言を否定した。FDAEPAガイドラインは変更しないと発表した。
批判者はHMHBが企業による水産研究所から6万ドルの資金提供を受けていることを批判している。
魚の水銀リスクとオメガ3脂肪酸のメリットがどこで交差するのかを識別するのは難しい。
環境保護主義者は水銀の脳への悪影響に怯え、栄養学者は重要な栄養素が不足していることを心配している。
一般論として、魚の有害影響もメリットも個人レベルでは小さい。しかし集団に対しては意味がある可能性がある。
HMHBのガイドラインは有害影響についてはあまり重きを置いていないように見える。この点に関して、HMHBは「政府のガイドラインが有害影響を強調したためもともと少ない魚の摂取量がさらに減った。そこでメリットを強調した。」としている。
しかし本当に必要なことは、どの種類の魚がどれだけの量で胎児に影響する可能性があるのかについての全体像を妊娠女性に伝えるための精細なレビューであろう、という意見もある。
(わかりやすく、と詳しく、は両立しうるのか?理解できたとして妊婦は毎日それを実行できるのか?)