はてなブックマーク > 京大の山中伸弥教授かっこよす - おこじょの日記
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/o-kojo2/20071121%23p1
話題になっているのですが、どうも全体が見えていないようなので余計なお世話を。
もともとヒトの受精卵はヒトなのかモノなのか、というような議論をやっているのは内閣府にある総合科学技術会議(総理大臣が議長)の、
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/
生命倫理専門調査会というところ。
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/lmain.html
ここで受精卵を研究に使いたい、という研究者やそれには一定の歯止めが必要、という人たちが(別に生命科学をやってる人がみんな研究推進派というわけではない)延々と議論をしています。
当然簡単な問題ではなく、その間に提出された資料も膨大なものになります。
一般の国民や報道機関の関心が高かったとも思えないのですが・・。
まず、アップされている資料に目を通して欲しいです。
どうすればいいのかわからない、というのが本当のところでしょうから、議論を官僚が誘導した、ということはないと思います。というか一定方向に誘導していたらこんなに延々とはやらないのでは?
個人的には鷲田 清一先生(京大出身で現大阪大学学長)の意見などは勉強になりました。
そしてES細胞を作りたいと思う研究者が書類を出す先は文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 生命倫理・安全対策室。
http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/
ここで個別の実験計画の審査をするわけです。
審査するのは先生方であって官僚ではないです。手続き上中央官僚が事務局をやっていますが、本来大学なり研究所の倫理審査委員会がきちんと対応できればそれで済むはずのことです。
しかし現実には「ヒトになる可能性のある受精卵を壊す」という重大な決定に責任を持てないという意見が多かったので国レベルに上がっていたのだと思います。研究者にとっては、ここでお墨付をもらうことで倫理問題については批判されずに済む、ということです。
さて話は変わって厚生労働省の科学研究費ですが、これは本来基礎科学の振興のためにあるのではなくて、国民の健康や福祉の向上に寄与する研究、のためのものです。わかりやすく言うと、Natureに何本も論文を出すことよりも、一人の命を救うことの方がよほど価値がある、ということです。基礎科学かつ医療系だと判断が難しいことはあるのではないでしょうか。そもそも厚生労働科研費の予算額は、全部併せて武田一社の研究開発費以下だったりするのですが。
科学技術の振興は文部科学省のテリトリーで、臨床や国民生活に近くなれば厚生労働省、という感じで役割分担している、と思います。
ついでにsivadさんのところで紹介されていたAAASの話
http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/pdf/btjjn0711.pdf
私もAAASの会員ですが・・・というかScienceを購読すると自動的に会員になってしまうのです。
多分そういう人は世界中に結構いて、そのぶんの会費もアメリカの科学技術振興のために使われているわけです。それでもNatureより安いのでScienceを読んでいます。非常にオープンなところで、例えばEurekAlertからの記事紹介も快く許可してくれただけではなく、困ったことがあったらいつでも相談してくれ、と言ってもらいました。AAASは基本的に科学技術全体の振興を目指しています。そのためには子どもたちへの教育も、学生の進路相談も積極的にやっています。もっともそういうことは他の分野別の学会でもやってますが。
そして米国の科学技術政策に具体的提言をしているのは全米科学アカデミー(NAS)のほう。こちらは会員による推薦がなければ会員になれない、割と敷居の高い学会です。ProNASを発行しているところ。日本だと日本学術会議みたいな感じでしょうか、注目度や活発さや政策提言能力には相当差があるような気がしますが。
他にもニューヨーク科学アカデミーの会員だったことがあります。これも雑誌を講読したらそうなりました。そんなふうに学術分野横断的な科学の「学会」活動が盛んなのがアメリカ、という印象です。
だからどうということはないですが・・日本も専門分野の違う科学者が、活発に意見を交し合う雰囲気があるといいのに、と思います。