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Heatoxプレスリリース HEATOXプロジェクト完了 

アクリルアミドパズルに新しいピースをもたらした
HEATOX project completed - brings new pieces to the Acrylamide Puzzle
26 November 2007
http://www.slv.se/upload/heatox/documents/Pressrelease_HEATOX_project_completed_
_brings_new_pieces_to_the_Acrylamide_Puzzle.pdf
・ 多くの毒性学的根拠が食品中のアクリルアミドは発がんリスク因子である可能性を示唆している。
・ アクリルアミド暴露量を減らす方法はあるが、完全に取り除くことはできない。
・ 調理食品によるリスク因子はアクリルアミドだけではない。
これらがヨーロッパ研究プロジェクトHEATOXの結論である。


加熱した食品中のアクリルアミド生成は、2002年に発見されて以来全く新しい研究分野となった。欧州委員会は迅速に対応し戦略的標的研究プロジェクトHEATOXが開始された。この3年間のプロジェクトには、14ヶ国から大学や研究所などの他消費者団体も含む24団体が参加した。
このプロジェクトが2003年11月に始まったときには、加工食品中のアクリルアミド生成についてはあまりわかっていなかった。その後世界中で企業や研究者による膨大な努力が行われた。HEATOXもその活動に熱心に参加した。

同定されたリスク
・ HEATOXのリスクキャラクタリゼーションでは、アクリルアミドがヒト発がんリスクがあるという根拠は強化された。
・ 実験により、動物に高用量投与した試験からヒトでの低用量暴露による健康リスクを推定するための科学的根拠が改善された。
・ 実験レベルではパンやポテトのアクリルアミド濃度は低下しており、従ってヒト暴露量も減っている可能性がある。
・ 疫学研究で使用される食品摂取頻度調査は、実際のアクリルアミド暴露量を測定するにはしばしば不正確である。食事からのアクリルアミド暴露量を推定する最良の方法は血中又は尿中のバイオマーカー測定である。
・ 食品を加熱したときに生じる遺伝毒性のある化合物はアクリルアミドだけではない。フラン、HMFやその他化合物について調査が行われた。将来の研究の一助とするため、加熱により生じる800以上の化合物、そのうち化学構造から発がん性がある可能性がある約50化合物について特に、データベースが収集された。


リスク管理
食品企業
アクリルアミド摂取の大部分は工場で生産された食品に由来する。原材料や加工工程が良く制御されているため、削減対策が有効である。HEATOXはヨーロッパの食品企業のアクリルアミド削減対策(CIAA Toolbox)に貢献した。
・ ジャガイモから生じる場合に影響する因子は明らかになった。原材料の選択と添加物、加工方法など。
・ 半工業用フライヤーにおける熱の加え方や油脂/ジャガイモ比の重要性が調査された。
・ パンでのアクリルアミド生成は酵母による発酵を長くすることで最小化できる。新しいパン焼き技術について評価された。
・ パンのアクリルアミド濃度に与える原材料や焼くときの条件の影響が示された。
削減方法研究は継続されるべきで、実際の製造現場での応用可能性については企業により試験される必要がある。HEATOXの科学者は現在知られている全ての削減方法がうまく採用されれば、アクリルアミド摂取量が多くて40%削減できると計算している。

家庭での調理
HEATOXは家庭で調理した食品に由来するアクリルアミド摂取量への寄与は、加工品やレストランでの食品由来のものに比べれば比較的少ないと推定している。しかしながら一部に摂取量の高い集団がある可能性がある。調理法や食習慣は国により大きく異なるので、家庭での調理によるアクリルアミド摂取量削減対策は国家レベルでの対応となる。一般的助言としては、炭水化物を多く含む食品を焼いたり揚げたりトーストしたりする場合には調理のしすぎを避けること。

摂取
一般的食生活への助言(すなわち脂肪やカロリーの摂りすぎを避けたバランスの取れた食生活)に従うことでアクリルアミド摂取量が削減できるであろう。
消費者は焼きすぎ/揚げすぎの食品を食べないようにすべきである。

その他のHEATOXの成果
HEATOXの化学者・毒性学者・食品科学者による総合的アプローチは摂取量計算、化学反応モデル、暴露評価、in vivo及びin vitro試験法、摂取量削減のための提案、バイオマーカーや食品中濃度の分析法、最終リスクキャラクタリゼーションなどの成果をあげた。20以上の博士課程の学生がヨーロッパにネットワークを作る機会を与えられ、40以上の論文が発表された。


最終報告書
Final Report pdf 4,7 MB
http://www.slv.se/upload/heatox/documents/Heatox_Final%20_report.pdf


最終パンフレット
Final leaflet (8 pages summary, pdf 327 kB)
http://www.slv.se/upload/heatox/documents/D62_final_project_leaflet_.pdf
規制対象となっている他の多くの食品中発がん物質に比べると、ヨーロッパの消費者にとってアクリルアミド暴露によるリスクは大きい。
推定される平均アクリルアミド摂取量は成人で0.3-0.5 microg/kg/day、子どもで0.3-1.4 microg/kg/dayとなっており、MOEは数百程度。削減シナリオにより1000に届くかどうか。
わからないこととして、アクリルアミド以外の食品中有害物質の生成と削減、神経毒性のヒトでの意味、アクリルアミドとグリシダミドの低用量での影響などを挙げ、リスクベネフィット解析が必要だとしている。


ガイドラインなど
Deliverables:
家庭での調理と食べるときのガイドライン
Guidelines in Home Cooking and Consumption (pdf 177 kB)
http://www.slv.se/upload/heatox/documents/D59_guidelines_to_authorities_and_consumer_organisations_on_home_cooking_and_consumption.pdf
アクリルアミドの摂取源として最も重要な食品類は以下の3種類。
(1) ジャガイモ;フライトポテト、ポテトチップ、その他揚げたジャガイモ料理
(2) 穀物;パンなどの焼いた製品、ローストした朝食シリアルや各種スナック
(3) コーヒー
全体としてはバランスの取れた食生活を送ることでアクリルアミドのために食生活を変更する必要はない、とされている。
削減したい場合には揚げ物を食べ過ぎない、フライドポテトの代わりに茹でたポテトを検討してみる、子どものビスケットやクッキーを食べる量を減らす、コーヒーを飲み過ぎないなどが考えられる。


食品企業向けアクリルアミド生成最小化のための戦略マニュアル
Manual on strategies to food industry to minimize acrylamide formation (pdf 50 kB)
http://www.slv.se/upload/heatox/documents/D60_manual_on_strategies_to_food_industries_restaurants_etc_to_minimise_acrylamide_formation.pdf
CIAAツールボックスの紹介


加熱により生じる有害物質についてのリスクコミュニケーションガイドライン
Guidelines to Risk Communication on heat-induced toxicants (pdf 145 kB)
http://www.slv.se/upload/heatox/documents/D61_guidelines_to_good_risk_communication_ractice_related_to_heat-induced_toxicants.pdf
優良リスクコミュニケーション規範Good Risk Communication Practice (GRCP)を提案している。


メイラード及び脂質反応のうち、評価した化合物
Assessed Compounds in Maillard and Lipid Reactions
http://www.slv.se/templates/SLV_Page.aspx?id=20211&epslanguage=EN-GB
HEATOXプロジェクトでは加熱した食品中に存在するアクリルアミド以外の有害物質を探した。約800の揮発性物質が同定され、二つのデータベースにリストアップした。
メイラードデータベースには約570物質、脂質加熱産物データベースには約200物質を収載している。それぞれCAS番号、別名、その物質が検出された食品、その物質を1ppm以上含む食品、その物質が検出される反応混合物、予想される発がん性、予想される変異原性、予想されるラット経口LD50(mg/kg)、予想されるLOAEL(mg/kg)、予想される皮膚感作性を含むエクセルファイルで提供されている。


揮発性メイラード反応生成物データベース
Database of Volatile Maillard Reaction Products http://www.slv.se/upload/heatox/documents/Maillard%2013%20Sep%2007.xls


揮発性脂質加熱反応生成物データベース
Database of Volatile Heated Lipids Reaction Products http://www.slv.se/upload/heatox/documents/lipids%20Sep%2013%2007.xls