食品安全情報blog過去記事

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がんとアクリルアミド

Cancer and acrylamide
Andrew Wadge
January 8th 2008
http://www.fsascience.net/2008/01/08/cancer_and_acrylamide
私は先に食品中アクリルアミドについての記事をブログに書いたことがある。 アクリルアミドは実験動物でがんを誘発し、ヒトでも発がん性がある可能性のある物質である。アクリルアミドはジャガイモのようなデンプンの多い食品を焼いたり揚げたりして高温で加熱した場合に生じる。2002年に食品中にアクリルアミドが発見されて以来、多くの研究者がこの物質がヒトにがんを誘発するかどうかについてよりはっきりさせようと努力してきた。最近発表されたデンマークの研究*は乳ガンを発症した374人の女性を健康的な女性対照群と比較したものである。食事以外の主要アクリルアミド暴露源である喫煙を補正した後、アクリルアミド暴露と乳がん発症に正の相関が認められた。
これは先に発表されたスウェーデン**とオランダ***の研究に続くもので、いずれも乳がんとの関連は認められていない。オランダの研究では卵巣がんとの関連が認められている。先の研究では厳密とは言えない食品摂取頻度調査からアクリルアミド暴露量を推定しているが、新しい調査では赤血球に結合したアクリルアミドを測定することにより総暴露量を評価している(これも本当に知りたい生涯暴露量を推定するものではないが)。
暴露量と食品以外の暴露源についての不確実性はあり、研究者らは一般人の食品中アクリルアミドの暴露リスクについて明確な結論を下すにはさらなる研究が必要であるともっともな結論を出している。人間は食品を調理し始めて以来アクリルアミドに暴露され続けてきたと主張することはできるが、私にはこれら最近の知見は、食品製造業者が空くリス網戸削減のための努力を続ける必要があることと、我々はたくさんの野菜や果物を含む健康的なバランスの取れた食生活をする必要があることを再確認させるものであると思える。
それからその点について、私のデトックスの記事に科学とは何かと書き込んだ人たちがいるので、Kay-Tee Khaw教授らによる大規模EPIC前向きコホート研究****のデータを見て欲しい。彼らは健康的な生活習慣(すなわち禁煙・適切な飲酒・運動と野菜や果物を1日5単位食べる)が11年間のフォローアップ期間での死亡率の減少と関連し、最大14年間寿命を延ばすことを示している。だからしっかりした科学的根拠はある。ライフスタイルを変えるだけで良くて、空想的「デトックス」ダイエットなんて必要ない。


デンマークの研究
Pelle Thonning Olesen et al.
Acrylamide exposure and incidence of breast cancer among postmenopausal women in the Danish Diet, Cancer and Health Study
International Journal of Cancer
http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/abstract/117881842/?CRETRY=1&SRETRY=0
**スウェーデンの研究
Acrylamide Intake and Breast Cancer Risk in Swedish Women
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/293/11/1326
***オランダの研究
A Prospective Study of Dietary Acrylamide Intake and the Risk of Endometrial, Ovarian, and Breast Cancer
http://cebp.aacrjournals.org/cgi/content/full/16/11/2304
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20071116#p8
****Kay-Tee Khaw教授らによる研究
Combined Impact of Health Behaviours and Mortality in Men and Women: The EPIC-Norfolk Prospective Population Study
http://medicine.plosjournals.org/perlserv/?request=get-document&doi=10.1371/journal.pmed.0050012&ct=1
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20080108#p5