食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

注意喚起:人間はラットではない

Reminder: People Are Not Rats
Ruth Kava, Ph. D., R. D.
February 13, 2008
http://www.acsh.org/factsfears/newsID.1127/news_detail.asp
人間がラットではないのは明確だが、ラットでの実験結果を直接人間に当てはめることができるかのようなたくさんのニュースが報道されているところを見ると、混乱があるのだろう。主要新聞やテレビやインターネット記事でサッカリンが体重を増やすという見出しを伝えている。そのような結論を立証できるデータが本当にあるのか、それとも単にめぼしいニュースがないのか?
問題の研究はPurdue大学の研究者らによるもので、食品の甘い味−サッカリングルコースで甘くした−が、ラットがその後に摂取するカロリーに影響するかどうかを調べたものである。彼らは甘い食品にカロリーがないと、動物のエネルギー調節システムに影響して、その後たくさん食べるようになるのではないかという仮説を検討した。この仮説ではサッカリンを含む食品を食べると動物は体重や体脂肪が増える傾向になると考えられる。
この研究では、実験対象食品は低脂肪プレーンヨーグルトであった。ラットは3群に分けた:一つはグルコースで甘くしたヨーグルト;一つはサッカリンで甘くしたヨーグルト;三つ目は甘くないヨーグルトである。動物には週に6日間5週間にわたってヨーグルトを与え、この期間終了後に体組成を調べた。するとサッカリンで甘くしたヨーグルトを食べた群で、他の群より体重が重く体脂肪も多かった。だからこの研究の結果は彼らの仮説を支持するようにみえる。しかし人間ではどうだろうか?
この研究の結果を人間に当てはめるのにはいくつかの問題点がある。一つ目は甘味料としてグルコースを使ったこと、人が普通使うのはショ糖(砂糖)で、グルコースは砂糖より甘みが少ない。さらにもっと重要なことは、人が調節するのはカロリーではなくて食べる量であるということを示すデータがある。つまり人間はお腹がいっぱいになると食べるのをやめる。このことにより水分や食物繊維の多い食品を食べるのが体重コントロールに役立つのである。
最後に、人間の食べる量は社会環境要因に影響され、カゴの中のラットには適用できない。
こうしたことからこの研究の結果が実際の人間にあてはまるとは思えない。何故これほど多くの報道がなされているのかわからない。


日本でも報道されていた
実験内容は
・ラットはSD、実験開始時に既に400gの成獣オス。試験中に80gほど体重は増えている。群間の差は10gくらい。
・ヨーグルトは1日30g、70%以上食べた場合だけ解析対象にした(食べなかったのもいる)
グルコースは重量で20%、サッカリンは0.3%使った
・一週間のうち3日はプレーンヨーグルトで3日は甘味料入り。
・ラットの数は8、9、 10匹。
・ヨーグルトを食べる量は最初の一週間はどの群でも少なかった。

以下感想
SDラットはもともとデブ。400gというと既にF344系統のラットなら最大値超えてるけど、SDはへたすると1kg近くになるから・・。増えた分が脂肪にしかならないのは当然。ラットにヨーグルトは普通食べさせないし、実際最初は嫌がっているようだ(腐ってるものは普通野生動物は避けるのでは)。グルコース20%ってどんな味?サッカリンとどっちが美味しい?ラットがどんな気持ちでヨーグルトを食べたのかよくわからない・・。グルコース入りヨーグルトとプレーンヨーグルトで差がないというのはどう説明するんだろう?食べた餌の量とかのデータはない。普通こういう実験では余計な因子の関与を排除するため餌に甘味料を混ぜるのではないかと思うのだけれど。そもそもラットの味覚はどこまで人間に近いのだろう・・彼らは平気で自分の排泄物とか仲間の死体とか布テープとか食べるけど・・齧歯類だから常に何かかじってるし(囓らないと歯が伸びてものが食べられなくなっちゃう)。
ネズミでは上手くいったのにヒトではダメだったというやせ薬ばかりなので、食生活に関しては動物実験がヒトであてはまる可能性はかなり低いと思う。