食品安全情報blog過去記事

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NTPのビスフェノールAについての概要案

April 14, 2008
http://cerhr.niehs.nih.gov/chemicals/bisphenol/BPADraftBriefVF_04_14_08.pdf
PDF 69ページ
結論部分のみ
NTPの結論
・NTPは現状のヒト暴露量において胎児や乳児や子どもたちに神経及び行動への影響に関する幾分かの(some)懸念があるというCERHR専門家委員会の結論に同意する。またNTPはこれらの集団において、前立腺や乳腺や女性の思春期早発への影響について、幾分かの(some)懸念がある。
胎児や乳児や子どもたちへの暴露が幾分かの(some)懸念がある、という結論を支持する科学的根拠は、発達時の「低」用量のビスフェノールAへの暴露が行動や脳や前立腺や乳腺やメスの春期発動年齢に影響を与え得るという多くの動物実験での報告による。これらの研究は発生への有害影響について限られた根拠しか提供せず、ヒト健康との関係を理解するにはさらなる研究が必要である。しかしながら動物で見られた影響がヒトのビスフェノールA暴露レベルと近いところでおこっているため、ビスフェノールAがヒト発達に影響する可能性を無視できない。

・妊娠女性のビスフェノールA暴露が胎児や新生児の死亡率や出生時欠損や低体重や成長遅延につながるということについての懸念は無視できる程度小さい (negligible)。
動物実験では、妊娠中の非常に高い濃度のビスフェノールA暴露は胎児の死亡や低体重や成長遅延を起こしうる。これらの研究は発達への悪影響について明確な根拠を提供するが、暴露量がヒトでみられる量よりはるかに多い。最近の二つのヒト研究では妊娠女性のビスフェノールAの暴露と低体重などのいくつかの指標との関連は見つかっていない。いくつかの動物実験ではビスフェノールAが口蓋裂や骨格形成異常や臓器異常を誘発しないことが示されている。

・NTPは、ビスフェノールAが非職業暴露された成人の生殖に影響する懸念については無視できる程度小さ(negligible)く、職業上高用量で暴露された労働者については最小限の(minimal)懸念があるというCERHR専門家委員会の結論に同意する。
ヒトでの研究結果はビスフェノールAの成人での暴露に有害影響があるかどうかを決めるには十分ではない。多くの研究から、労働環境で高濃度暴露された男性の生殖ホルモンへの影響の可能性が示唆される。実験動物成獣での研究では受精能や性周期への悪影響が示されているが暴露量はヒトの場合に比べて遙かに高い。成獣へのより低い濃度での暴露による精子数の減少などの多数のその他の生殖系への影響が報告されているが再現性がない。実験動物での研究ではビスフェノールAが受精能に影響しないことは一貫して報告されている。

これらの結論はこの概要が作成された時点で入手可能な情報に基づくものである。毒性や暴露に関する新しい情報が蓄積されれば、この結論で示された懸念レベルを上下させる根拠となる可能性がある。

図があるのでそれを参照
Fig 2A ヒトへの影響
根拠のレベルについては全部で7段階

有害影響があるという明確な根拠がある
有害影響があるという幾分かの根拠がある
有害影響があるという限られた根拠がある
結論を出すには不十分 ←ビスフェノールAのヒト生殖発生毒性についての根拠はここ
有害影響がないという限られた根拠がある
有害影響がないという幾分かの根拠がある
有害影響がないという明確な根拠がある


Fig 2B 実験動物への影響
有害影響があるという明確な根拠がある ←高用量発生毒性についてはここ
有害影響があるという幾分かの根拠がある ←生殖毒性についてはここ
有害影響があるという限られた根拠がある ←低用量発生毒性についてはここ
結論を出すには不十分
有害影響がないという限られた根拠がある
有害影響がないという幾分かの根拠がある
有害影響がないという明確な根拠がある


Fig 3
有害影響への懸念レベルについて
懸念レベルは5段階 プラス分類できないという項目が加わる

重大な懸念がある(serious concern)
懸念がある (concern)
幾分かの懸念がある(some concern) ←乳幼児や胎児への発達毒性はここ
最小限の懸念がある(minimal concern)
懸念は無視できるほど小さい(negligible concern) ←成人男女への生殖毒性や新生児の奇形についてはここ

ハザードや暴露データが不十分

この案については2008年5月23日までパブリックコメントを受け付ける
官報告知
http://cerhr.niehs.nih.gov/news/fedreg/73_FR_73_15Apr2008_508.pdf
ビスフェノールAとその他の議題へのコメントが同時に募集され、2008年6月11-12日のNTP科学諮問委員会で検討される。



ちなみにカナダ政府がもうすぐビスフェノールAの評価を「危険な物質」として発表するだろうという報道とそうなったらカナダのメーカーがビスフェノール Aを含むビンを市場から引き上げるだろうという報道が目立つ。
http://news.google.co.jp/news?ned=ca&ncl=1151143498&hl=en&topic=m


EFSAの評価については先に掲載した
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070130#p16
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070130#p17
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070131#p11
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070130#p19


英国ではほとんど報道されていない
抗酸化サプリメントは有害、というニュースと色素の余波で大手サプリメントメーカー(Sanatogen)がサプリメントに問題の色素を使っていたことなどが報道されている。
逆に英国で騒いでいる色素は米国ではほとんどニュースにならず。
こういうのを見ると「欧米では」という言い方は安易に使えない、と思う。