食品安全情報blog過去記事

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塩素消毒した飲料水とがんについての2回目の声明

Second statement on chlorinated drinking water and cancer
12 May 2008
http://www.advisorybodies.doh.gov.uk/coc/clh2o08.htm
英国や北米やその他多くの地域で塩素による水処理は飲料水の微生物によるヒトへの有害影響除去のために重要な役割を果たしてきた。飲料水の殺菌はコレラなどの水に由来する疾患の拡散予防にとって基本的なことである。
1970年代半ばに化学分析技術の精度向上により、飲料水中に、天然に存在する有機化合物と塩素が反応してできた微量の化合物が検出された。これら塩素化副生成物(CBPs)は大抵1 microg/L以下の濃度で存在する。通常主なCBPsは塩素や臭素がついたトリハロメタン(THMs、すなわちクロロホルム、ブロモジクロロメタン、クロロジブロモメタン、ブロモホルム)で、最大100 microg/Lで存在する可能性がある。しかしながら他にも多くの性質のわかっていないCBPsが多数存在する。
一部のCBPsは実験動物で発がん性があり一部は遺伝毒性がある。飲料水の塩素処理とヒトのがんの関係については多数の疫学調査があり、CBPsの変異原性や発がん性についても多数の実験研究がある。1986年に保健省空気土壌水中汚染物質の医学的問題委員会(CASW)がデータのレビューを行い、飲料水中の塩素化副生成物によりヒト発がんリスクが増加するというしっかりした根拠はないと結論した。さらにCOCは1992年と1999年に疫学研究を、1996年に動物実験データをレビューした。1996年には「動物で発がん性を示す最小用量はヒトの各 THMの飲料水からの暴露量の1万倍以上であり、英国の飲料水中のTHMはヒト発がんリスクとはなりそうにない」と結論した。1999年には新しい疫学研究は塩素処理した飲料水とがんの関係を証明することに失敗しているとしている。COCは殺菌効率を損なわない条件での飲料水中のCBPsを最小限にする努力は適切であると考えている。
1999年のレビュー以降さらに13の疫学論文が発表された。2007年7月の会合でこれらの文献のレビューを依頼された。
新しい研究では一部男性の膀胱がんと大腸がんについてCBPsとの関連に限られた根拠を提供するものがある。女性については一致していない。これらの研究の解釈には問題が残る。
COCはCBP暴露とがんの因果関係の根拠は限られたものであり、たとえ関連があったとしても強いものではないと結論した。CBPs削減の努力は飲料水の効果的な殺菌の必要性とのバランスをとって行われるべきである。