食品安全情報blog過去記事

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EFSAは野菜の硝酸塩によるリスクと野菜や果物をたくさん食べるバランスの取れた食生活の利益とのバランスをとる

EFSA balances the consumer risks from nitrate in vegetables with the benefits of a balanced diet high in vegetables and fruit
05/06/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178712852771.htm
EFSAのCONTAMパネルは野菜の硝酸塩によるリスクとベネフィットを評価し、野菜や果物を食べることの良い影響の方が野菜からの硝酸塩暴露によるヒト健康リスクを上回ると結論した。野菜や果物は健康的でバランスの取れた食生活の重要な成分で、毎日十分量摂ることである種の疾患リスクを下げるのに役立つ。CONTAMパネルは、1日あたり約400gの多様な野菜や果物を食べる平均的な消費者では硝酸塩のADIを超えないと述べている。暴露量を推定するに当たってCONTAMパネルは400gの全ての野菜や果物は、果物より硝酸塩含量の多い野菜として推定した。葉菜を多く食べるEUの一部の人々(2.5%)ではADIを超える可能性がある。
EFSAは欧州委員会から野菜の硝酸塩による消費者のリスクとベネフィットとのバランスについて諮問された。CONTAMパネルはNDAパネルと協力した。疫学研究データからは食事や飲料水からの硝酸塩摂取と発がんリスクの増加は示唆されなかった。しかしヒトは硝酸塩を健康影響の可能性がある亜硝酸や一酸化窒素に変える。
硝酸塩の主な摂取源は野菜や保存肉、飲料水であるが、野菜や果物由来の部分が総硝酸塩摂取量の半分以上から2/3を占める。硝酸塩はほとんど全ての野菜にいろいろな量含まれるが、食事からの硝酸塩摂取量が高くなる主要因は野菜の総摂取量ではなく食べる野菜の種類(葉菜)とその濃度である。ホウレンソウやレタスやルッコラのような緑の葉菜は硝酸塩含量が高い。また野菜の硝酸塩含量は肥料や日光(ヨーロッパ北部諸国の野菜は硝酸塩含量が高い傾向がある)などの要因にもよる。この意見によれば、野菜や果物をたくさん食べるベジタリアンやベーガンは、通常硝酸塩含量の少ないナッツや穀物や豆類を多く食べるのでADIを超えないとされている。
レタスやホウレンソウのような野菜は既に硝酸塩含量についてEU規制下にある。葉菜の中ではルッコラが最も高濃度の硝酸塩を含む。たとえば一日に47gのルッコラを食べるとそれだけでADIを超える。長期間にわたって毎日それだけの量のルッコラを食べることはありそうになく、時々ADIを超えたとしても健康上問題はない。
CONTAMパネルはさらに洗ったり皮を剥いたり調理したりすることによって硝酸塩摂取量は減ると考えられ、消費者の安全性マージンはさらに増加するだろうと述べている。


野菜の硝酸塩 CONTAMパネルの意見
Nitrate in vegetables - Scientific Opinion of the Panel on Contaminants in the Food chain
05/06/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178712852460.htm
硝酸塩は窒素サイクルの一部として天然に存在し、食品添加物としても認可されている。硝酸塩は植物の栄養と機能に重要な役割を果たしている。硝酸塩は野菜の重要な成分で蓄積することがある。蓄積には多数の生物学的・非生物学的要因が影響する。硝酸塩は葉に蓄積しやすく種子や塊茎では濃度は低い。レタスやホウレンソウなどの葉菜で硝酸塩含量が高い。ヒトへの暴露は主に野菜を食べることで、その他に食品や水からも少量暴露される。硝酸塩は体内でも作られる。一方硝酸塩の代謝物である亜硝酸塩への暴露は主に体内で硝酸塩が変換されることによる。
硝酸塩そのものは比較的毒性が低いが、その代謝物や反応生成物である亜硝酸塩や一酸化窒素やN-ニトロソ化合物は、メトヘモグロビン血症や発がん性などの有害健康影響と関係することから懸念されている。一方最近の研究では硝酸塩は抗菌作用があることから宿主防御に関与する可能性や一酸化窒素などの代謝物が血管調節などの重要な生理作用があることなどが示されている。野菜は主要な硝酸塩摂取源ではあるが野菜をたくさん食べることは健康によいことが一般的に合意されており、推奨されている。
食事からの硝酸塩暴露による健康リスク管理戦略を提供するため、CONTAMパネルはリスク評価を更新した。この意見は野菜に検出される硝酸塩量とリスクとベネフィットのバランスを考慮したものである。
野菜の硝酸塩量提供要請に応じてEFSAは20の加盟国とノルウェーから41,969の分析データを受け取った。硝酸塩の中央値としては豆や芽キャベツなどの1mg/kgからルッコラの4800 mg/kgまで多様であった。硝酸塩が検出限界以下だったのは5%以下であった。ヨーロッパの野菜摂取量はGEMS/Food Consumption Cluster Dietsデータベースと各国の提出した摂取量データから推定した。その結果、基本条件としてWHOの推奨している1日400gの野菜や果物を摂るという条件を使用した。ただし400gは全て野菜であるとみなした。さらにいくつかの摂取パターンシナリオを検討した。そのシナリオからは硝酸塩摂取量が多くなる主要因は野菜の量ではなく食べる野菜の種類とその硝酸塩濃度であることが示された。
SCFが設定しJECFAが2002年に再確認した硝酸塩のADIは3.7 mg/kg体重/日であり、体重60kgの成人では1日あたり222 mgになる。このADIを改定する必要があるような新しいデータはなかった。
いろいろな野菜摂取シナリオでの硝酸塩摂取量とこの222mgを比較した。さらに飲料水や加工肉など二由来する硝酸塩摂取量を35-44 mg/人/日として検討した。保守的基本条件で、典型的な硝酸塩含量の野菜を毎日400g食べる場合、食事からの平均暴露量は157 mg/日となる。これはADIの範囲内である。ほとんどの人は硝酸塩濃度が10 mg/kgオーダーの果物も最大200g食べていることを考えると多くのヨーロッパ人の実際の硝酸塩摂取量は81-106 mg/日程度であろう。
さらに野菜を洗ったり皮を剥いたり調理したりすることで硝酸塩摂取量は減るであろう。
一部の国の一部の人々(2.5%)は葉菜だけ、または葉菜をたくさん食べるためADIを超過する。野菜が望ましくない生育条件で育てられている場合、ADIの約2倍になる。硝酸塩が中央値のルッコラを47g以上食べるとその他の摂取源を考慮しなくてもADIを超える。
疫学研究からは食事や飲料水からの硝酸鉛摂取ががんリスク増加と関連することは示唆されていない。硝酸塩を大量に摂ることによる発がんリスクの増加についての根拠は明確ではない。
CONTAMパネルは野菜からの硝酸塩暴露のリスクとベネフィットを比較した。全体として、野菜からの硝酸塩暴露は検知できるほどの健康リスクとはなりそうにないため、野菜を食べることの利点の方が勝っている。栽培条件やルッコラをたくさん食べるなどの特定条件の場合についてはケースバイケースで評価が必要であろう。