食品安全情報blog過去記事

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血管性認知症と知能

Behind the headlines
Vascular dementia and intelligence
June 26 2008
http://www.nhs.uk/news/2008/06June/Pages/Vasculardementiaandintelligence.aspx
本日Financial Timesが「認知症と子どもの時の知能との関連が見つかった」と報じた。子ども時のIQが低いと血管性認知症リスクが高いことがわかったという。Daily Telegraphでは知能が低いと年老いてから血管性認知症になるリスクが40%増加すると報道している。
この研究は症例対照研究で、結果の解釈には注意が必要である。
Neurologyに発表されたこの研究は、1921年に生まれて65才以上で認知症を発症した人々を同定し、そのうち1932年のスコットランド精神保健調査(MHTNo.12による知能検査を行っている)に参加していた人173人を「症例」とした。173人の認知症例のうち50%はアルツハイマーで19%が血管性、25%は同定できない認知症だった。血管性認知症は高血圧や動脈硬化などによる脳の血流不全によるもの。血管性認知症の人々はMHTスコアが有意に低く、MHTスコアで10ポイント高いと血管性認知症のオッズが40%減少する。アルツハイマーと原因不明の認知症ではそのような関連はなかった。
NHSはIQが直接認知症のリスク要因になるのではなく、子どもの頃の知能の低さが食生活の貧しさやアルコール濫用などのライフスタイル要因に関連するため、年老いてからの血管性病変に関連する可能性が高いと考える。


EurekAlertでは
Low childhood IQ linked to type of dementia
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-06/aaon-lci061708.php
知能が高いと認知症になりにくいというデータがあり、教育により脳の機能を高くしておけば、衰えても症状が出るところまで落ちるのに時間がかかるのでは、という説(認知備蓄cognitive reserve理論)があった。しかしこの研究ではその説は支持できないということ。