食品安全情報blog過去記事

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行き詰まった自閉症試験が代替療法のジレンマを明らかにする

Stalled Trial for Autism Highlights Dilemma of Alternative Treatments
Science 18 July 2008: Vol. 321. no. 5887, p. 326
Erik Stokstad
病気の子どもを治したいという親の思いとインチキ治療に対する研究者の懸念との緊張関係が公衆衛生当局を長いこと苦しめている。先週AP通信社が「政府の研究者が自閉症の子どもたちの証明されていない治療法を推している」と報道するとこの長くくすぶっていた問題が沸騰した。実際には問題の試験は昨年中断されていたもので、米国国立精神保健研究所(NIMH)のThomas Inselは、彼は再開を支持していないと言っている。この事例やそれを取り巻く報道は、子どもたちを対象に問題のある治療法を試験すべきかどうか決定することがいかに難しいかを示すものである。
ここで問題になっているのはキレート療法で、ワクチンに含まれる水銀が自閉症の原因だと信じている数千人の親たちが、子どもたちに重金属を除去するためのキレート剤を与えている。一部の人々はキレート療法で子どもたちの症状が改善したと主張している。キレート療法に使われる薬物にリスクがないわけではなく、ワクチンの水銀が自閉症の原因や悪化要因ではないことが多くの科学的研究により示されているにも関わらず。
NIMHはこの薬物が広く使われていることが臨床試験を行う必要性の要件をなすと主張した。しかし一部の研究者や倫理学者が全く効果が期待できずリスクしかない試験を行うことに反対した。この研究は倫理上問題がある、とPaul Offitは述べている。
NIHが疑わしい自閉症治療法に関する試験を行わざるを得なくなったのはこれが初めてのことではない。1990年代後半にはメディアが胃腸薬セクレチンが自閉症を治す可能性があると一斉に報道したため、多くの保護者がこの薬を購入したため、NIHは一連の小規模臨床試験を実施することを決定した。ある自閉症研究者が言うのは、まるで流れ星のように急に流行して急に衰退した治療法だった。最近では自閉症にセクレチンを使うという話は全く聞かない。
キレート療法はいまだに広く使われている。一部の調査によれば自閉症の子どもたちの2-8%が使っている。キレート療法に使われる薬剤は有害重金属だけではなく必須ミネラルも排出する。
NIMHはよく使われるDMSAについての試験を行おうと思った。試験計画としては4-10才の120人の自閉症の子どもにDMSA又はプラセボを投与し、12週後に評価を行うというものだった。これはキレート療法に関する最初の対照化試験になるはずだった。
しかしこの研究は倫理審査委員会IRBにより審査され安全のためにマルチビタミンサプリメントを投与することを加えて審査を通過し、2006年9月に開始された。その数ヶ月後にEHPに齧歯類にDMSAを与えた場合の毒性が報告され、重金属濃度が高くない子どもたちにDMSAを投与することへの懸念が持ち上がった。自閉症の子どもたちの血中水銀濃度は高くない。
NIMHは2007年2月にこの試験を中止し、IRBに再審査を求めた。新しいリスクが追加されたためIRBはNIMHの親機関であるHHSが社会的利益が十分大きいと判断しない限り、この試験は認められないと結論した。NIMHはHHSに懇願するより他の問題(退行性自閉症に対して抗生物質ミノサイクリンで炎症を抑えることのメリット)にリソースを割いた方が良いと決定した。
(写真は自閉症のキレート療法宣伝者である女優Jenny McCarthyとその支持者)
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20080716#p15の記事のより詳細な内容)