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香料やその他の香る食品成分中の樟脳(カンファー) AFCパネルの意見

Camphor in flavourings and other food ingredients with flavouring properties - Opinion of the Scientific Panel on Food Additives, Flavourings, Processing Aids and Materials in Contact with Food on a request from the Commission
30/07/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902029226.htm
EFSAは欧州委員会より、香料や香りのある食品に存在するヒト健康確保のために使用制限が必要であることを示す毒性データのある物質について助言を求められた。特に食品中d-カンファーのヒト健康影響について助言を要請された。
食事からのカンファー暴露は、バジル・コリアンダー・マジョラム・ローズマリー・セージなどのハーブやそれらのエッセンシャルオイル、又はd-カンファーを香料として使用した食品を食べることによる。カンファーは消化管で容易に吸収される。主な代謝経路は5-及び3-ヒドロキシカンファーへの酸化で、その後抱合されて排出される。カンファーはSalmonella typhimuriumでは変異原性はなく、代謝活性化有無のどちらでもin vitroでの染色体異常は誘発しない。ラットやウサギでの経口投与による生殖及び発生毒性の証拠はない。
カンファーの毒性データは限られており、TDIは設定できない。しかし入手できる毒性データからは、欧州評議会の提案した最大規制値を用いて計算した250 microg/kg体重/日に相当する15 mg/kg日の慢性暴露量では慢性毒性の心配はないであろう。
AFCパネルはd-カンファーの急性毒性について検討する必要があると考えた。報告されている成人や子どもでの急性毒性はカンファーを含む医薬品の誤飲事故によるものがほとんどである。一度に大量に食べた場合の致死量は50から500 mg/kg体重であろう。2mg/kg体重以下での急性毒性は報告されておらず、感受性の高いヒトでは5 mg/kg体重やそれ以上であまり重要でない臨床症状が現れる可能性があり、感受性の高いヒトで明確な臨床症状が現れるには30 mg/kg体重以上が必要であろう。
AFCパネルはいくつかの年齢集団において一日にある食品を大量に食べた場合の急性暴露量を推定した。成人で最も低く(食品により0.14 から 0.34 mg/kg 体重)、6才以下の子どもで最も高かった(食品により0.41 から 0.83 mg/kg 体重)。最も高濃度暴露になる食品は全ての年齢集団においてフレッシュチーズである。
子どもと成人の推定急性暴露量は最小経口致死量50 mg/kg体重のそれぞれ60-120分の1、150-360分の1である。またヒトで報告されている急性症状の観察されない用量2 mg/kg体重より2-5及び6-14分の1である。これらのマージンは少ないように見えるが、用量反応関係を示す多くのデータからはこの値は十分個人の感受性の違いをカバーしていることが示唆される。従ってAFCパネルは一度に2mg/kg体重以下の暴露源となる食品による急性毒性はないであろうと結論した。
AFCパネルが検討した暴露推定はわずか一ヶ国の摂取量に基づいている。EUではd-カンファーの最大許容量は設定されておらず、現在市場に出回っている食品や飲料の実際の濃度や高摂取群の摂取量については不確実性が残る。従ってAFCパネルは全ての年齢集団において1日の摂取量が2mg/kg体重を超えないようにカンファーの最大許容値を設定することを薦める。